
古来より鹿の角は漢方として珍重されてきたが、今後は再生医療にとって重要なカギをにぎるようになるかもしれないという。
中国の研究チームによると、鹿の角は再生医療に必要な「前駆細胞(ぜんくさいぼう)」の供給源になる可能性があるのだそうだ。
前駆細胞とは、幹細胞から発生し体を構成する最終分化細胞へと分化することのできる細胞のことだ。
『Science』(2023年2月23日付)に掲載された研究によると、鹿の角の幹細胞をマウスの頭に移植してみたところ、マウスに角のような軟骨が形成されたと報告している。
動物たちの持つ再生能力 人間にも再生能力はある。たとえば、肝臓の一部を切り取っても、残った部分が再生して元の大きさにまで回復する。そこまで強力ではないが、肺や腎臓、膵臓も再生する。
自然界を見渡してみれば、切れた尾がまた生えてくるトカゲ、ヒレが元通りになるゼブラフィッシュ、ハサミを復活させるロブスター、内臓どころか脳まで回復するウーパールーパーなどなど、再生の達人がたくさんいる。
だが再生能力の王様といえば、100回以上切断されても、それぞれの断片から増殖してしまうプラナリアだろう。
ここまで極端な再生能力とまでは言わずとも、少しでいいからその力を拝借できれば、きっとさまざまな人を助けられることだろう。
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プラナリア photo by iStock
毎年生え変わる鹿の角の再生能力に注目 そこで中国、西北工業大学の研究グループが注目したのが、ほ乳類でありながら、定期的に体を再生させる鹿だった。
鹿のオスの立派な角は、毎年生きた組織として生え変わる。その構造は再生する両生類の手足のものに似ており、おそらくは脊椎動物の組織を再生させるのに役立つだろうと考えられたのだ。
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photo by Pixabay
鹿とマウスの前駆細胞は似ていた じつはマウスも切れた指先を再生させることができる。
今回の研究では、そんなほ乳類の再生の名人である鹿とマウスを比較。その結果、鹿の角を再生させる「前駆細胞」が、マウスの指先のものと似ていたと報告している。
だが、それはウーパールーパーの手足やゼブラフィッシュのヒレのものとは違っていたという。
このことは、ほ乳類でありながら再生能力を持つ鹿とマウスには比較的よく保存された細胞・分子メカニズムがあるだろうことを示しているそうだ。鹿の角の幹細胞移植でマウスに角が生えたことを確認 今回の研究ではさらに、鹿の角が再生するとき、細胞がどのように変化しているのか詳しく調べるために、7万4730個の細胞のRNA配列が解析されている。
その結果、手足を再生させるカエルやウーパールーパー、指先を再生させるマウスとはっきりとした関連があることがわかった。
こうした分析結果を実際に確かめてみるため、研究チームは鹿の前駆細胞をマウスに移植してみた。すると、マウスの頭蓋骨にまさしく角のような軟骨が形成されたのだ。
それは移植された前駆細胞が成長してできたもので、ほかの場所から細胞が集まってきたわけではないという。
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以前の報告から、頭に「ミニ角」が生えたことが確認されたマウス / image credit:Image credit: Li, Journal of Regenerative Biology and Medicine (2020)鹿の角が人間の再生医療に使われる再生細胞の供給源になる可能性 つまり今回の研究では、再生に不可欠な前駆細胞を分離することに成功している。
将来的には、鹿の角が人間の再生医療に使われる再生細胞の供給源になる可能性もあるとのことだ。
References:Regenerating bone with deer antler stem cells / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
中国の研究チームによると、鹿の角は再生医療に必要な「前駆細胞(ぜんくさいぼう)」の供給源になる可能性があるのだそうだ。
前駆細胞とは、幹細胞から発生し体を構成する最終分化細胞へと分化することのできる細胞のことだ。
『Science』(2023年2月23日付)に掲載された研究によると、鹿の角の幹細胞をマウスの頭に移植してみたところ、マウスに角のような軟骨が形成されたと報告している。
動物たちの持つ再生能力 人間にも再生能力はある。たとえば、肝臓の一部を切り取っても、残った部分が再生して元の大きさにまで回復する。そこまで強力ではないが、肺や腎臓、膵臓も再生する。
自然界を見渡してみれば、切れた尾がまた生えてくるトカゲ、ヒレが元通りになるゼブラフィッシュ、ハサミを復活させるロブスター、内臓どころか脳まで回復するウーパールーパーなどなど、再生の達人がたくさんいる。
だが再生能力の王様といえば、100回以上切断されても、それぞれの断片から増殖してしまうプラナリアだろう。
ここまで極端な再生能力とまでは言わずとも、少しでいいからその力を拝借できれば、きっとさまざまな人を助けられることだろう。
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プラナリア photo by iStock
毎年生え変わる鹿の角の再生能力に注目 そこで中国、西北工業大学の研究グループが注目したのが、ほ乳類でありながら、定期的に体を再生させる鹿だった。
鹿のオスの立派な角は、毎年生きた組織として生え変わる。その構造は再生する両生類の手足のものに似ており、おそらくは脊椎動物の組織を再生させるのに役立つだろうと考えられたのだ。
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鹿とマウスの前駆細胞は似ていた じつはマウスも切れた指先を再生させることができる。
今回の研究では、そんなほ乳類の再生の名人である鹿とマウスを比較。その結果、鹿の角を再生させる「前駆細胞」が、マウスの指先のものと似ていたと報告している。
だが、それはウーパールーパーの手足やゼブラフィッシュのヒレのものとは違っていたという。
このことは、ほ乳類でありながら再生能力を持つ鹿とマウスには比較的よく保存された細胞・分子メカニズムがあるだろうことを示しているそうだ。鹿の角の幹細胞移植でマウスに角が生えたことを確認 今回の研究ではさらに、鹿の角が再生するとき、細胞がどのように変化しているのか詳しく調べるために、7万4730個の細胞のRNA配列が解析されている。
その結果、手足を再生させるカエルやウーパールーパー、指先を再生させるマウスとはっきりとした関連があることがわかった。
こうした分析結果を実際に確かめてみるため、研究チームは鹿の前駆細胞をマウスに移植してみた。すると、マウスの頭蓋骨にまさしく角のような軟骨が形成されたのだ。
それは移植された前駆細胞が成長してできたもので、ほかの場所から細胞が集まってきたわけではないという。
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以前の報告から、頭に「ミニ角」が生えたことが確認されたマウス / image credit:Image credit: Li, Journal of Regenerative Biology and Medicine (2020)鹿の角が人間の再生医療に使われる再生細胞の供給源になる可能性 つまり今回の研究では、再生に不可欠な前駆細胞を分離することに成功している。
将来的には、鹿の角が人間の再生医療に使われる再生細胞の供給源になる可能性もあるとのことだ。
References:Regenerating bone with deer antler stem cells / written by hiroching / edited by / parumo
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