科学者が「最も水分補給に適した飲み物」をランキング化、1位はスキムミルクだった
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今年も猛暑の夏が到来、誰も彼もが水分補給の大切さを訴えている。

 だが忙しい現代人なら、水分補給だってできるだけ効率よく行いたいもの。

そこでここでは科学者が選出した「最も水分補給に優れた飲み物ランキング」を紹介しよう。

 このランキングは、イギリスの研究者が水やコーラなどを飲んでから出る尿の量を元に、体に保持される水分量を計測したもので、うるおいをもたらすパワーを客観的に知ることができる。

 気になる1位は意外にも水ではない。経口補水液でもない。なんとスキムミルクだったのだ。

新たな指標、飲料水分補給指数(BHI)

この研究は、英国ラフバラー大学を中心とした研究チームが2016年度に発表したもので、水分補給に優れた飲み物を科学的に比較するために「飲料水分補給指数(Beverage Hydration Index:BHI)」という新たな指標が開発された。

 BHIは血糖指数(GI)のように、飲み物が体内にどれだけ長く水分をとどめるかを数値化したもので、水が基準の1となる。

 実験には健康な男性72人が参加し、被験者は水、または13種類の飲料(コーラ、コーヒー、全脂乳、脱脂乳など)のうち1つがランダムに割り当てられ、空腹かつ体内水分が正常な状態のときに1リットルを飲み干した。

 その後4時間の間、尿の量を計測。ここから体にどれだけ水分が残っているかを推定し、それに基づいてBHIが定められた。

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1位はスキムミルク、2位は経口補水液

 そして判明した水分保持力の高い飲み物は水ではなかった。

 この試験での牛乳は、全乳(脂肪分をそのまま残した牛乳)とスキムミルク(無脂肪乳)の2種が用意されたが、いずれもBHIスコアで水を上回った。

 栄えある1位に輝いたスキムミルクの場合、4時間後に体内に残った水分は水より339g多いという結果だった。

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 ではなぜ牛乳は水分保持効果が高いのか?

 この研究を主導したロナルド・モーン博士によると、その理由は牛乳には乳糖・たんぱく質・脂肪といった成分が含まれているからだそう。

これらが胃から腸への通過を遅らせるため、水分がより長く体内にとどまるのだという。

 また牛乳にはナトリウムも含まれており、これが尿が作られる量を抑えることも、水分保持に役立つとのことだ。

 なお、こうした理由は、BHIランキングで2位だった経口補水液(ORS)も同様だ。これには少量の糖分・ナトリウム・カリウムが含まれており、体が水分を保持しやすいよう工夫されている。

いかがBHI指標によるランキングだ

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他の飲料の水分保持力は?

 オレンジジュースはBHIランキングで4位。飲んでから2時間後のBHIは水を上回ったが、体に保持される水分量の点では統計的に有意差がなかった(結果は誤差以上の意味がないということ)。これは糖分が多すぎると逆効果になるためだ。

 ジュースや清涼飲料水などに含まれる糖分は、浸透圧の作用で体内の水分を小腸から吸い上げてしまう。腸内に水分があっても、そこは厳密には”体外”のようなものなので、かえって脱水が進む可能性があるのだ。

 ちなみにコーラのような清涼飲料水は、普通のものもダイエット版も、水と同程度だった。

 意外なのはコーヒーやお茶だ。

 カフェインを含むこうした飲み物は、脱水を引き起こすと誤解されるが、355ml(日本のコーヒーカップでは2、3杯程度)のコーヒーに含まれるカフェイン量(約80mg)では一般に利尿作用は見られないという。

 モーン博士は「普通のコーヒーなら水と同じくらい水分補給に役立ちます」と述べている。

 ただし、1日に300mg以上のカフェインを摂取すれば、特にカフェインに慣れていない人では軽い脱水効果が生じる可能性はある。

 だが、それでもその効果は短時間かつ軽いものだとのこと。コーヒーにミルクを入れれば、牛乳の効果で脱水を抑えることもできるそうだ。

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アルコールの場合は?

 利尿作用というと、コーヒーやお茶のほかにお酒が思い浮かぶ。

 だがアルコールの影響はより複雑であるようだ。今回の研究では、アルコール度数約4%のビールは、水と比較して、大きく尿量が増えるわけではないことが確認されている。

 モーン博士によると、「ウイスキーに比べ、ビールは摂取する水分量が多いために、体に水分を残しやすい」とのこと。つまり体への水分補給という意味では、アルコール度数以上に、トータルで摂取される水分の量が大切になるということだ。

 こうしたBHIは、暑い日に屋外で働く人や運動をする人、さらには患者を指導する医療関係者にとって便利な指標になると期待される。

 とはいえ、一般の人にとっては、普段の生活の中でそこまで飲み物のBHIにこだわる必要はないとのこと。モーン博士は「喉が渇けば、体が飲むよう教えてくれますよ」と

 ということで、熱中症予防対策としてさらっと頭に入れておこう。

この研究結果は『The American Journal of Clinical Nutrition[https://ajcn.nutrition.org/article/S0002-9165(22)06556-X/fulltext] 』に掲載された

References: Scientists Ranked the Most Hydrating Drinks and Water Didn’t Win[https://www.zmescience.com/medicine/nutrition-medicine/scientists-ranked-the-most-hydrating-drinks-and-water-didnt-win/] / Ajcn.nutrition.org[https://ajcn.nutrition.org/article/S0002-9165(22)06556-X/fulltext]

本記事は、海外メディアの記事を参考に、日本の読者に適した形で補足を加えて再編集しています。

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