新たな地球外生命体の探し方が報告される。金属が少ない恒星の近くの惑星を探せ!
 こんなに宇宙は広いのだから、我々地球人だけがもともと特別なオンリーワンではないはずだ。そんな考えのもと、様々な地球外生命体の探し方が模索されている。


 そして今回、新たに報告された研究によると、まずは金属が少ない恒星を公転する惑星を探すべきだという。

 重たい金属が少ない恒星は、生命に有害な紫外線を多く放っているにもかかわらず、その周囲の惑星に降りそそぐ有害な紫外線が少ないのだそうだ。

 一見矛盾したように思えるが、恒星が放つ紫外線の種類が関係しているという。 

太陽の紫外線が増えると、地球では減るという奇妙なパラドックス この研究の発端となったのは、2020年の研究だ。それによると、私たちの太陽は、天の川銀河にあるほかの似たような星に比べてあまり活発ではないのだという。

 では、もしも太陽が今よりももっと活発で、ずっと多くの紫外線を出したとしたらどうなるのだろうか? 紫外線は生物に有害なのだから、地球の生命に大打撃を与えるに違いない。

 ところが、実際には太陽の紫外線が増えると、地上の紫外線が減少するという「奇妙なパラドックス」が起きるだろうことがわかったのだ。

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ではなぜ、こんなパラドックスが起きるのか? 『Nature Communications』(2023年4月18日付)に掲載された研究では、その謎に迫っている。

 まず語らねばならないのは、星は元素を作るいわば工場のようなものだということ。恒星は、その活動を通じて、内部でさまざまな物質を作り出している。これを元素合成という。

 たとえば、ほとんどの星は、水素の原子を合体(核融合)させ、ヘリウムを合成することで燃えている。


 ヘリウムが溜まれば、今度はヘリウム同士の核融合が始まり、炭素や酸素といったより重い元素が合成される。天文学では、ヘリウムより原子番号が大きな元素を「金属」や「重元素」という。

 白色矮星のようなきわめて質量が大きな星では、核融合はさらに進み、炭素や酸素から鉄などのさらに重たい元素まで合成される。

 そうした金属は、星の寿命が尽きて爆発すると、宇宙にばら撒かれ、その残骸から新たに生まれる星々に取り込まれる。

 かくして恒星の金属量は各々差があるのだが、金属量が少ない恒星ほど放射する紫外線の量が多い。そうしたたくさん紫外線を出す恒星の周囲にある惑星ほど、直接浴びている紫外線は少ないのだ。

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特定の紫外線がオゾン層を鍛えている可能性 でがなぜ、たくさん紫外線を出す恒星の周囲にある惑星ほど、直接浴びている紫外線が少なくなるのか?

 マックス・プランク太陽系研究所の天体物理学者アンナ・シャピロ氏を中心とする研究チームは、恒星の金属量が惑星大気の成分に与える影響などをモデル化している。

 その結果わかったのは、この奇妙なパラドックスの原因は、紫外線の種類が関係しているらしいということだ。

 一口に紫外線と言っても、波長の長さによっていくつか種類がある。たとえば紫外線の中でも波長が短いものを「C波」といい、波長の長いものを「B波」という。

 そしてこれらは同じ紫外線でありながら、惑星の大気に当たったときの反応が違う。波長の短い紫外線C波は、大気に当たると吸収され、オゾンの生成をうながす。


 こうして作られるオゾン層は危険な紫外線から生命を守るバリアのような存在だ。ところがB波はこのオゾンを破壊して、地表にまで届く。

 金属が少ない恒星は、ただ全体的な量だけなら確かに紫外線が多いのだが、金属が豊富な恒星と比べるとC波の比率が高い。だから、それを公転する惑星の大気では丈夫なオゾン層が形成される。

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地球外生命体は、金属量の少ない恒星の近くの惑星にいるはずだ これが正しいとすれば、金属が少ない恒星の周囲にある惑星ほど、強力な紫外線のバリアがあり、複雑な生命体が繁栄しやすいということになる。

 だから地球外生命を探すのなら、金属が少ない恒星を公転する太陽系外惑星をターゲットにするべきと考えられるのだ。

 このことは宇宙の生命の未来について、また別のことを示唆している。それは将来的に宇宙は生命にとって住みにくい場所になるだろうということだ。

 と言うのも、宇宙が進化するにつれて、金属が少ない恒星はどんどん減っていくだろうからだ。

 ただしこうしたパターンは、赤色矮星のような星には当てはまらない可能性もある。研究チームによれば、将来的に宇宙全体の居住性がどう変化するのか、現時点で結論は出せないとのことだ。

References:Metal-rich stars are less suitable for the evolution of life on their planets | Nature Communications / Scientists Discover Alien Life May Exist on Planets We Least Expected in Surprise Find / written by hiroching / edited by / parumo

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