
アメリカ、ユタ州で発見されたこれまでに知られていない新種の恐竜「イアニ・スミティ(Iani smithi)」が発見されたが、この個体は滅びゆく一族の”最後の生き残り”だったのかもしれない。
イアニ・スミティが生きていた白亜紀中期、地球は現在のようの温暖化が進み、環境が激変していた。
そうした環境の変化は、アヒルのような口をした新しい恐竜へと主役の交代をうながし、それまで勝ち組だった系統が舞台から追いやられようとしていた。
イアニ・スミティはそんなかつては主役だった系統の最後の仲間として生まれ、その落日を目にするという悲しい運命を生きた可能性があるそうだ。
主役の座が変わる、恐竜の過渡期に生まれたイアニ・スミティ 「イアニ・スミティ(Iani smithi)」は、今から9900万年前の白亜紀中期に、現在のアメリカ、ユタ州にあたる地域で生きていた鳥脚類だ。
シーダーマウンテン塁層でほぼ全身が発掘されたその幼体の骨格は、強力なアゴと、かたい植物を噛み砕くための歯を一番の特徴としている。
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「イアニ(Iani)」とは、ローマ神話に登場する2つの顔を持つ神「ヤヌス(Janus)」にちなんだ名だ。ヤヌスは移り変わりを象徴する神なのだが、イアニが登場したのはまさにそんな大きな変化の時代だったのだ。
じつはイアニ・スミティが生きていた白亜紀中期、大気中の二酸化炭素が増えて、現在のように温暖化が進んでいた。
そのせいで海面が上昇し、恐竜たちが暮らす土地はどんどん狭くなっていった。
また北極圏や南極圏のような極地は、熱帯雨林が生いしげるほど暖かくなった。さらに海沿いでは、花を咲かせる植物が景色を彩った。
こうした環境の激変は、恐竜の種類にも大きく影響した。
北アメリカでは、巨大な体をした草食の竜脚類がだんだんと数を減らし、それを食べて生きていた肉食のアロサウルスなども後を追った。
それと同時にアジアからそれまでとは違う新顔がやってきて、主役の座につこうとしていた。
初期のハドロサウルス(カモノハシ恐竜)や角竜、ティラノサウルスやオヴィラプトロサウルスなどの羽毛恐竜といったグループだ。
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photo by iStock
そして生憎なことに、イアニ・スミティが生まれたのは、主役を奪われようとしているグループだった。最後の生き残りだったイアニ・スミティ、栄枯盛衰を目の当たりに イアニ・スミテの骨格からは、鳥脚類の系統である初期の「ラブドドン(rhabdodontomorph)」の仲間であるらしいことがわかっている。
このグループはかつては勝ち組であり、たとえば白亜紀前期の北アメリカではまるで現在の牛のようにありふれていた「テノントサウルス」も、このグループの仲間との説がある。
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イアニ・スミティの下アゴと歯/Credit: National Geographic, Mark Thiessen and Becky Hale
もし仮に本当にイアニ・スミティがラブドドンの仲間なのだとすれば、主役から追いやられようとするグループの最後の血族として登場し、その落日を目にしていたのかもしれない。
このような白亜紀中期の恐竜のドラマに照らしながらイアニ・スミティの化石を研究すれば、大昔の地球の歴史をグッと深く知ることができるだろうとのことだ。
この研究は『PLOS ONE』(2023年6月7日付)に掲載された。
References:Newly Discovered Dinosaur Iani May Have Been Species’ “Last Gasp” in a Changing Planet / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
イアニ・スミティが生きていた白亜紀中期、地球は現在のようの温暖化が進み、環境が激変していた。
そうした環境の変化は、アヒルのような口をした新しい恐竜へと主役の交代をうながし、それまで勝ち組だった系統が舞台から追いやられようとしていた。
イアニ・スミティはそんなかつては主役だった系統の最後の仲間として生まれ、その落日を目にするという悲しい運命を生きた可能性があるそうだ。
主役の座が変わる、恐竜の過渡期に生まれたイアニ・スミティ 「イアニ・スミティ(Iani smithi)」は、今から9900万年前の白亜紀中期に、現在のアメリカ、ユタ州にあたる地域で生きていた鳥脚類だ。
シーダーマウンテン塁層でほぼ全身が発掘されたその幼体の骨格は、強力なアゴと、かたい植物を噛み砕くための歯を一番の特徴としている。
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「イアニ(Iani)」とは、ローマ神話に登場する2つの顔を持つ神「ヤヌス(Janus)」にちなんだ名だ。ヤヌスは移り変わりを象徴する神なのだが、イアニが登場したのはまさにそんな大きな変化の時代だったのだ。
じつはイアニ・スミティが生きていた白亜紀中期、大気中の二酸化炭素が増えて、現在のように温暖化が進んでいた。
そのせいで海面が上昇し、恐竜たちが暮らす土地はどんどん狭くなっていった。
また北極圏や南極圏のような極地は、熱帯雨林が生いしげるほど暖かくなった。さらに海沿いでは、花を咲かせる植物が景色を彩った。
こうした環境の激変は、恐竜の種類にも大きく影響した。
北アメリカでは、巨大な体をした草食の竜脚類がだんだんと数を減らし、それを食べて生きていた肉食のアロサウルスなども後を追った。
それと同時にアジアからそれまでとは違う新顔がやってきて、主役の座につこうとしていた。
初期のハドロサウルス(カモノハシ恐竜)や角竜、ティラノサウルスやオヴィラプトロサウルスなどの羽毛恐竜といったグループだ。
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そして生憎なことに、イアニ・スミティが生まれたのは、主役を奪われようとしているグループだった。最後の生き残りだったイアニ・スミティ、栄枯盛衰を目の当たりに イアニ・スミテの骨格からは、鳥脚類の系統である初期の「ラブドドン(rhabdodontomorph)」の仲間であるらしいことがわかっている。
このグループはかつては勝ち組であり、たとえば白亜紀前期の北アメリカではまるで現在の牛のようにありふれていた「テノントサウルス」も、このグループの仲間との説がある。
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イアニ・スミティの下アゴと歯/Credit: National Geographic, Mark Thiessen and Becky Hale
もし仮に本当にイアニ・スミティがラブドドンの仲間なのだとすれば、主役から追いやられようとするグループの最後の血族として登場し、その落日を目にしていたのかもしれない。
このような白亜紀中期の恐竜のドラマに照らしながらイアニ・スミティの化石を研究すれば、大昔の地球の歴史をグッと深く知ることができるだろうとのことだ。
この研究は『PLOS ONE』(2023年6月7日付)に掲載された。
References:Newly Discovered Dinosaur Iani May Have Been Species’ “Last Gasp” in a Changing Planet / written by hiroching / edited by / parumo
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