
もしも人類が絶滅したら、1年後の世界はどんな姿をしているだろう? アメリカの小学生が、NHKの「子ども科学電話相談」よろしく、専門家に質問をしてみたそうだ。
アイオワ州立大学の都市計画の専門家カールトン・バスマジアン准教授が、その子のために真摯にこの質問に向き合い、想定される未来を回答してくれた。
バスマジアン准教授の解説を知れば、頑健に思える私たちの文明が、人類の絶え間ない営みによってどうにか支えられている、意外にも脆いものであることがわかるだろう。
地球は異様な静けさに包まれる 原因はわからないが、この地球上から人類が忽然と消えてしまったとしよう。
その時、あなたは偶然にも宇宙に滞在しており、人類滅亡からちょうど1年後、無事に地球に帰還することができた。そこには一体どんな世界が広がっているだろうか?
バスマジアン准教授によると、まず異変に気づくのは音だという。
どこもかしこも、しんと静まり返っている。
それまで聞こえていた、車や電車が走る音や、工事現場の騒音、あるいは空の飛行機から響くエンジンの音がまったくなくなっている。
そして空がずっと青く澄みわたっており、空気が美味しいことに気づく。人間が出すスモッグや排ガスなどによって汚されてきた地球が、風や雨ですっかりキレイに洗い流されているからだ。
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電気も水もガスも使えない あなたは懐かしの我が家に帰ってきた。幸いなことに、あなたが生まれ育った家は、災害で破壊されることも、何者かに荒らされることもなく、そこにあった。
だが、そこはそれまでのように快適で暖かい場所ではなくなっている。なんだかノドが渇いたので、水を飲もうと水道をひねる。
当たり前だ。水道は水道局で常に水をくみ上げていなければ出ない。だが、そのための機械を管理する人はいないのだから、止まってしまう。
最初の冬までは、水道管の中に水がまだ溜まっていたかもしれない。だが寒くなって、水が凍るようになると、水道管は破裂してしまう。
もちろん電気もない。発電所で働く人たちがいなくなるからだ。夜になれば家は真っ暗で、灯りはつかないし、家電だって使えない。
また床や家具がホコリでおおわれていて驚くことだろう。
私たちが吸い込んでいる空気には、目に見えない小さなホコリがいつも漂っている。人間がいるときは、移動したり、エアコンなどを使ったりすることで、ホコリを散らしている。
だが人がいなくなれば、そうしたホコリが静かに舞い降りて、ふり積もる。
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動物と植物たちだけの世界 人間がいなくなったチェルノブイリは野生動物の楽園になっているが、それと同じようなことが地球全体で起こるだろう。
以前はキレイだった庭も雑草だらけだ。それどころか、見たこともない植物が生えているかもしれない。鳥や風に運ばれて、どこからともなくタネがやってくるからだ。
それまで見なかった生き物だってたくさんいる。人間に嫌われ殺虫剤をかけられることがなくなった虫たちは、庭やそこかしこで自由に暮らしている。
ネズミ、リス、アライグマ、スカンク、キツネ、ビーバーなどの小さな生き物たちも、街中をぶらぶらするようになるかもしれない。
最初の1年目にはいないかもしれないが、やがてはシカやコヨーテ、クマといった大きな動物たちもやってくる(これらは北アメリカの話だ。日本ならまた違う動物たちが街を歩き始めるだろう)。
家畜は、クマやコヨーテ、オオカミやヒョウといった野生動物にとっては格好の獲物だ。
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世話をする人がいなくなった畑は自然に還り、ジャガイモやトマトといったお馴染みの作物は、姿を消し始める。
電灯がないので、昼と夜は自然のリズムを取り戻す。世界を照らすのは、太陽と月と星だけ。夜の生き物たちは、暗闇を取り戻せてさぞ愉快なことだろう。
一方、炎が夜を照らすこともある。人間がいなくても、落雷などによって自然に火事が起きるからだ。消防士はもういないので、火はあたりを燃やし尽くすまで消えない。
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人類が滅亡して1年後、地球は人工的な音のない世界で、野生動物や植物たちが太陽と月の光に照らされながら、自由に生きていくそんな世界が待ち受けているようだ。では人類滅亡後、1000年後にはどうなる? 道路、高速道路、橋、建物といったコンクリートの建造物は、1年程度ならそれまでとそう変わらないかもしれない。
だが10年もすれば、ひび割れができて、そこから小さな植物が芽生えるようになる。
これは地球が動き続けているからだ。それがコンクリートに圧力をくわえ、ひび割れを生じさせる。いずれ道路はバラバラに砕けて、そこから木が生えてくる。
橋の脚や梁など、金属で作られた部分はだんだんと錆びていく。だがコンクリートの橋や高速道路なら、何世紀も持ちこたえられるかもしれない。
やはり巨大な建造物であるダムや堤防も、だんだんと侵食されていく。
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1000年後も、この世界の面影はまだうっすら残っているだろう。ローマ帝国は1500年以上前に滅んだが、今でもその遺構は観光客を楽しませている。
それと同じように、マンションやショッピングモールといった大きな建物は、古代遺跡のような風貌になり、失われた文明の記憶をとどめてくれるはずだ。
人間がこの世からいなくなると、人間が地球をどのように扱ってきたのか浮き彫りになる。今、私たちが目にしている世界は、私たちがいなければ成り立たない世界だ。
そしてまた、人間に代わり地球上を支配するものが現れることがあるのなら、そこから新たな文明が築かれていくことになるのかもしれない。
だが幸か不幸か、人類が滅亡したところで地球がなくなることはなさそうだ。
bReferences:If humans went extinct, what would the Earth look like one year later? / written by hiroching / edited by / parumo
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アイオワ州立大学の都市計画の専門家カールトン・バスマジアン准教授が、その子のために真摯にこの質問に向き合い、想定される未来を回答してくれた。
バスマジアン准教授の解説を知れば、頑健に思える私たちの文明が、人類の絶え間ない営みによってどうにか支えられている、意外にも脆いものであることがわかるだろう。
地球は異様な静けさに包まれる 原因はわからないが、この地球上から人類が忽然と消えてしまったとしよう。
その時、あなたは偶然にも宇宙に滞在しており、人類滅亡からちょうど1年後、無事に地球に帰還することができた。そこには一体どんな世界が広がっているだろうか?
バスマジアン准教授によると、まず異変に気づくのは音だという。
どこもかしこも、しんと静まり返っている。
それまで聞こえていた、車や電車が走る音や、工事現場の騒音、あるいは空の飛行機から響くエンジンの音がまったくなくなっている。
そして空がずっと青く澄みわたっており、空気が美味しいことに気づく。人間が出すスモッグや排ガスなどによって汚されてきた地球が、風や雨ですっかりキレイに洗い流されているからだ。
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電気も水もガスも使えない あなたは懐かしの我が家に帰ってきた。幸いなことに、あなたが生まれ育った家は、災害で破壊されることも、何者かに荒らされることもなく、そこにあった。
だが、そこはそれまでのように快適で暖かい場所ではなくなっている。なんだかノドが渇いたので、水を飲もうと水道をひねる。
だが水は出ない。
当たり前だ。水道は水道局で常に水をくみ上げていなければ出ない。だが、そのための機械を管理する人はいないのだから、止まってしまう。
最初の冬までは、水道管の中に水がまだ溜まっていたかもしれない。だが寒くなって、水が凍るようになると、水道管は破裂してしまう。
もちろん電気もない。発電所で働く人たちがいなくなるからだ。夜になれば家は真っ暗で、灯りはつかないし、家電だって使えない。
また床や家具がホコリでおおわれていて驚くことだろう。
私たちが吸い込んでいる空気には、目に見えない小さなホコリがいつも漂っている。人間がいるときは、移動したり、エアコンなどを使ったりすることで、ホコリを散らしている。
たまには掃除だってするだろう。
だが人がいなくなれば、そうしたホコリが静かに舞い降りて、ふり積もる。
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動物と植物たちだけの世界 人間がいなくなったチェルノブイリは野生動物の楽園になっているが、それと同じようなことが地球全体で起こるだろう。
以前はキレイだった庭も雑草だらけだ。それどころか、見たこともない植物が生えているかもしれない。鳥や風に運ばれて、どこからともなくタネがやってくるからだ。
それまで見なかった生き物だってたくさんいる。人間に嫌われ殺虫剤をかけられることがなくなった虫たちは、庭やそこかしこで自由に暮らしている。
ネズミ、リス、アライグマ、スカンク、キツネ、ビーバーなどの小さな生き物たちも、街中をぶらぶらするようになるかもしれない。
最初の1年目にはいないかもしれないが、やがてはシカやコヨーテ、クマといった大きな動物たちもやってくる(これらは北アメリカの話だ。日本ならまた違う動物たちが街を歩き始めるだろう)。
家畜は、クマやコヨーテ、オオカミやヒョウといった野生動物にとっては格好の獲物だ。
それはペットも同じこと。ネコたちは野生化し、大型の動物に食べられるようになる。イヌもほとんど生き残れない。
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世話をする人がいなくなった畑は自然に還り、ジャガイモやトマトといったお馴染みの作物は、姿を消し始める。
電灯がないので、昼と夜は自然のリズムを取り戻す。世界を照らすのは、太陽と月と星だけ。夜の生き物たちは、暗闇を取り戻せてさぞ愉快なことだろう。
一方、炎が夜を照らすこともある。人間がいなくても、落雷などによって自然に火事が起きるからだ。消防士はもういないので、火はあたりを燃やし尽くすまで消えない。
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人類が滅亡して1年後、地球は人工的な音のない世界で、野生動物や植物たちが太陽と月の光に照らされながら、自由に生きていくそんな世界が待ち受けているようだ。では人類滅亡後、1000年後にはどうなる? 道路、高速道路、橋、建物といったコンクリートの建造物は、1年程度ならそれまでとそう変わらないかもしれない。
だが10年もすれば、ひび割れができて、そこから小さな植物が芽生えるようになる。
これは地球が動き続けているからだ。それがコンクリートに圧力をくわえ、ひび割れを生じさせる。いずれ道路はバラバラに砕けて、そこから木が生えてくる。
橋の脚や梁など、金属で作られた部分はだんだんと錆びていく。だがコンクリートの橋や高速道路なら、何世紀も持ちこたえられるかもしれない。
やはり巨大な建造物であるダムや堤防も、だんだんと侵食されていく。
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1000年後も、この世界の面影はまだうっすら残っているだろう。ローマ帝国は1500年以上前に滅んだが、今でもその遺構は観光客を楽しませている。
それと同じように、マンションやショッピングモールといった大きな建物は、古代遺跡のような風貌になり、失われた文明の記憶をとどめてくれるはずだ。
人間がこの世からいなくなると、人間が地球をどのように扱ってきたのか浮き彫りになる。今、私たちが目にしている世界は、私たちがいなければ成り立たない世界だ。
そしてまた、人間に代わり地球上を支配するものが現れることがあるのなら、そこから新たな文明が築かれていくことになるのかもしれない。
だが幸か不幸か、人類が滅亡したところで地球がなくなることはなさそうだ。
bReferences:If humans went extinct, what would the Earth look like one year later? / written by hiroching / edited by / parumo
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