
動物の柄のように、一見してはわからないが、実は人間にも皮膚に模様があるという。肉眼で見えないのは、皮膚の形成方法がちょっと特殊なためだ。
模様のある動物たちは、1個体の中で毛の色を分ける遺伝子メカニズムをもっているが、人間は体の中で皮膚や毛の色を分けるようなシステムにはなっていない。
とはいえ、私たちが、自身の体にトラのように美しい縞模様や、ウシのようなかわいらしいブチを見つけることはできないからといって、それが存在しないというわけではなく、誰もが生まれつき持っている。
この人間の模様は「ブラシュコ線」と呼ばれており、こうした縞模様や斑点は、湿疹や白斑といったさまざまな皮膚の状態として現れることがあるという。
人間の体にある見えない模様「ブラシュコ線」 20世紀始め、ドイツの皮膚科医アルフレッド・ブラシュコ氏が、150人以上の患者の皮膚を研究した。
体じゅうに現れるほくろや母斑、その他の皮膚状態のパターンに注目し、それらがどうやら、一定のラインに沿って発生しているように見えることを発見した。
こうしたラインは、どうやら生まれたときから存在していたと思われ、血管や神経など、すでに知られている体のシステムとは関係がなく、胸に曲線、背中に山型、臀部に渦巻のような模様が作り出されている。
ブラシュコ氏の名にちなんで、こうした人間の模様は、ブラシュコ線と呼ばれている。
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ブラシュコ線を可視化した図 / image credit:Molho-Pessach & Schaffer, Clinics in Dermatology, 2011
それから100年後、医師のルドルフ・ハップル氏が、さらに頭皮のつむじや、うなじの巻き毛などのパターンをブラシュコ線の例として追加した。ブラシュコ線はなぜできるのか? ブラシュコ線がなぜできるのか。
これは、胚が発達する際に、細胞が分裂して皮膚になるまでの道のりをたどったものだと現在では考えられている。
具体的には、主要な表皮細胞であるケラチノサイトと、皮膚の色素を担う表皮奥の細胞、メラニンを生む「メラノサイト」の経路によって、形成される。
メラノサイトは、私たちがまだ、数百個の細胞の塊にすぎないときに、胚の神経冠で作られる。
私たちの皮膚細胞を生み出す胚細胞の中には、父親のX染色体を持つものもあれば、母親のX染色体をもつものもある。
これら初期細胞から分裂したすべての細胞は、同じエピジェネティック(後成の)X染色体の設定を維持する。
つまり、ブラシュコ線全体が、そのDNAバージョンをシェアすることになるが、その隣の線は同じかもしれないし、もう一方のX染色体をもっているかもしれない。
このため、パターン模様の一部が線になったり、大きな斑点として現れたりする。
こうした遺伝子が作るパターンのパッチワークは、モザイク現象と言われ、X染色体に関連する特質だけでなく、発達の初期の段階で起こる突然変異でも発生する可能性がある。
人間の色素は、X染色体上の遺伝子だけで決まるわけではないため、通常、人間ではその影響は見ることはできない。
しかし、ほかの動物では、毛色の遺伝子は、もっぱらX染色体と関係している。こうして三毛猫のようなパターン模様が生まれる。
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三毛猫 / image credit:iStock
色のついたブチは、ふたつの異なるタイプの細胞がある場所をそれぞれマークする。ひとつのグループは母親の、もうひとつは父親のX染色体をもつ。条件によってはブラシュコ線が見える人も 通常では肉眼で見ることはできないブラシュコ線だが、条件によっては、体にブラシュコ線が現れる場合もある。
特定の皮膚疾患(色素異常症や一部の遺伝性疾患など)がある場合だ。
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ブラシュコ線に沿って現れた色素沈着性の縞模様 / image credit:Bygum et al., BMC Medical Genetics, 2011
色生成細胞に関わる突然変異は、ブラシュコ線に沿ってより大きく、パッチワークのような、縞模様や渦巻き模様として現れる、「モザイク現象」を引き起こすことがある。
下の画像のタイプ1aと1bは、もっともよく見られるモザイク現象のパターンだが、ほかの例はほとんど見られない。
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人間に見られるモザイク現象の例 / image credit:Molho-Pessach & Schaffer, Clinics in Dermatology, 2011
まれではあるが、人間に見られるモザイク現象の極端な例はキメラ現象だ。
キメラ現象とは、ふたつの異なる受精卵が融合して、ひとつの個体を形成することだ。
遺伝的に異なるふたつの皮膚タイプが、ランダムに組み合わされて、市松模様のモザイク(タイプ2)として出てくることがよくある。ブラシュコ線が発疹の広がりと関連している可能性 こうしたブラシュコ線は、ウルシが原因の皮膚炎のような発疹の広がり方を説明しているのではないかと考えている研究者もいる。
湿疹や乾癬などの一般的な皮膚疾患も、同様のパターン模様になる可能性がある。
自分がどんなユニークなブラシュコ線をもっているのか、想像するのは楽しいことだが、特に皮膚疾患や症状がない場合、皮膚科に行ってブラシュコ線のパターンを調べることはおそらく不可能だろう。
もし皮膚に特異的なパターンや変色が見られたら、それはブラシュコ線に関連している可能性もあり、こうした皮膚のパターン模様を理解することは、医師が皮膚の状態を診断するのに役にたつという。
References:Humans Actually Have Secret Stripes And Other Strange Markings : ScienceAlert / written by konohazuku / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
模様のある動物たちは、1個体の中で毛の色を分ける遺伝子メカニズムをもっているが、人間は体の中で皮膚や毛の色を分けるようなシステムにはなっていない。
とはいえ、私たちが、自身の体にトラのように美しい縞模様や、ウシのようなかわいらしいブチを見つけることはできないからといって、それが存在しないというわけではなく、誰もが生まれつき持っている。
この人間の模様は「ブラシュコ線」と呼ばれており、こうした縞模様や斑点は、湿疹や白斑といったさまざまな皮膚の状態として現れることがあるという。
人間の体にある見えない模様「ブラシュコ線」 20世紀始め、ドイツの皮膚科医アルフレッド・ブラシュコ氏が、150人以上の患者の皮膚を研究した。
体じゅうに現れるほくろや母斑、その他の皮膚状態のパターンに注目し、それらがどうやら、一定のラインに沿って発生しているように見えることを発見した。
こうしたラインは、どうやら生まれたときから存在していたと思われ、血管や神経など、すでに知られている体のシステムとは関係がなく、胸に曲線、背中に山型、臀部に渦巻のような模様が作り出されている。
ブラシュコ氏の名にちなんで、こうした人間の模様は、ブラシュコ線と呼ばれている。
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ブラシュコ線を可視化した図 / image credit:Molho-Pessach & Schaffer, Clinics in Dermatology, 2011
それから100年後、医師のルドルフ・ハップル氏が、さらに頭皮のつむじや、うなじの巻き毛などのパターンをブラシュコ線の例として追加した。ブラシュコ線はなぜできるのか? ブラシュコ線がなぜできるのか。
これは、胚が発達する際に、細胞が分裂して皮膚になるまでの道のりをたどったものだと現在では考えられている。
具体的には、主要な表皮細胞であるケラチノサイトと、皮膚の色素を担う表皮奥の細胞、メラニンを生む「メラノサイト」の経路によって、形成される。
メラノサイトは、私たちがまだ、数百個の細胞の塊にすぎないときに、胚の神経冠で作られる。
私たちの皮膚細胞を生み出す胚細胞の中には、父親のX染色体を持つものもあれば、母親のX染色体をもつものもある。
これら初期細胞から分裂したすべての細胞は、同じエピジェネティック(後成の)X染色体の設定を維持する。
つまり、ブラシュコ線全体が、そのDNAバージョンをシェアすることになるが、その隣の線は同じかもしれないし、もう一方のX染色体をもっているかもしれない。
このため、パターン模様の一部が線になったり、大きな斑点として現れたりする。
こうした遺伝子が作るパターンのパッチワークは、モザイク現象と言われ、X染色体に関連する特質だけでなく、発達の初期の段階で起こる突然変異でも発生する可能性がある。
人間の色素は、X染色体上の遺伝子だけで決まるわけではないため、通常、人間ではその影響は見ることはできない。
しかし、ほかの動物では、毛色の遺伝子は、もっぱらX染色体と関係している。こうして三毛猫のようなパターン模様が生まれる。
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三毛猫 / image credit:iStock
色のついたブチは、ふたつの異なるタイプの細胞がある場所をそれぞれマークする。ひとつのグループは母親の、もうひとつは父親のX染色体をもつ。条件によってはブラシュコ線が見える人も 通常では肉眼で見ることはできないブラシュコ線だが、条件によっては、体にブラシュコ線が現れる場合もある。
特定の皮膚疾患(色素異常症や一部の遺伝性疾患など)がある場合だ。
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ブラシュコ線に沿って現れた色素沈着性の縞模様 / image credit:Bygum et al., BMC Medical Genetics, 2011
色生成細胞に関わる突然変異は、ブラシュコ線に沿ってより大きく、パッチワークのような、縞模様や渦巻き模様として現れる、「モザイク現象」を引き起こすことがある。
下の画像のタイプ1aと1bは、もっともよく見られるモザイク現象のパターンだが、ほかの例はほとんど見られない。
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人間に見られるモザイク現象の例 / image credit:Molho-Pessach & Schaffer, Clinics in Dermatology, 2011
まれではあるが、人間に見られるモザイク現象の極端な例はキメラ現象だ。
キメラ現象とは、ふたつの異なる受精卵が融合して、ひとつの個体を形成することだ。
遺伝的に異なるふたつの皮膚タイプが、ランダムに組み合わされて、市松模様のモザイク(タイプ2)として出てくることがよくある。ブラシュコ線が発疹の広がりと関連している可能性 こうしたブラシュコ線は、ウルシが原因の皮膚炎のような発疹の広がり方を説明しているのではないかと考えている研究者もいる。
湿疹や乾癬などの一般的な皮膚疾患も、同様のパターン模様になる可能性がある。
自分がどんなユニークなブラシュコ線をもっているのか、想像するのは楽しいことだが、特に皮膚疾患や症状がない場合、皮膚科に行ってブラシュコ線のパターンを調べることはおそらく不可能だろう。
もし皮膚に特異的なパターンや変色が見られたら、それはブラシュコ線に関連している可能性もあり、こうした皮膚のパターン模様を理解することは、医師が皮膚の状態を診断するのに役にたつという。
References:Humans Actually Have Secret Stripes And Other Strange Markings : ScienceAlert / written by konohazuku / edited by / parumo
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