
肉体が滅んだ後も、心や精神をコンピューターにアップロードして永遠に生きる。これはSF映画やマンガなどでは何度も描かれてきたアイデアだ。
最近のドラマなら『ブラック・ミラー』や『アップロード』といったシリーズで描かれているが、日本でなら士郎政宗の『攻殻機動隊』などが特に有名かもしれない。
電脳化はSFの題材としてはよくあるテーマだが、はたして心をアップロードすることなど本当に可能なのだろうか?
もちろん今の時点でそれはまだ実現していない。だが最近の科学技術の発展によって、それが可能になる日は着実に近づいているようだ。
心を機械にアップロードする「電脳化」の方法は? 仮に心のアップロードが実現可能なのだとして、いったいどうすればそんなことができるのだろう? なにしろ心は形のない曖昧なものなのだ。
これを研究テーマにしているノッティンガム大学の博士課程の学生アンジェラ・ソーントン氏の解説によると、一番有望なのは「スキャン・アンド・コピー」であるという。
心は脳の働きによって作られる。ならば脳の構造を詳細にスキャンし、オリジナルそのままに振る舞うコピー脳を再現してしまえばいい。
だが口で言うのと、現実にやるのとでは大違い。そんなことは本当にできるのだろうか?
だが、これついてすでに10年以上前に、オックスフォード大学の研究チームが可能かもしれないと報告しているのだ。
「手ごわい工学的・研究的課題だが、やるべきことは明確で、現在の技術の延長によって達成できるように思われる。」(Whole Brain Emulation)
またロシアには、永遠の命を手にするために、神経科学者やロボット工学者と協力して心のアップロードに挑む大富豪がいる。
その人物、ディミトリ・イツコフ氏は2016年当時、BBCの『The Immortalist』というドキュメンタリー番組の中で、彼の望みは2045年までには達成されるだろうと語っていた。
それどころか、2023年中に亡くなった人の意識をアップロードできるようになるという予測すらある。
[画像を見る]
photo by iStock
電脳化に向けての技術は、着実に前に進んでいる ソーントン氏自身は、あと20年かそこらで実現する可能性は低いだろうと考えている。だが、それでも人類は脳の再現に向けて一歩一歩着実に歩み続けているという。
たとえば「ニューロテクノロジー」と呼ばれる、人間の脳活動を直接記録したり、修正したりする方法は急速に進歩している。
かの実業家イーロン・マスク氏が設立したニューラリンク社では、脳とコンピューターをつなぐ電脳化デバイスの開発を進めており、サルやブタを使ったデモンストレーションを披露している。
またカリフォルニア大学サンフランシスコ校のグループは、障害で会話ができなくなった患者のために、思考だけでコンピューターに文字入力する方法する技術を開発した。
このような技術は、人工知能によって後押しされ、脳波の解読も徐々にできるようになってきた。いずれは、脳内の思考を読むだけでなく、情報を書き込むことも可能になるかもしれない。
このように心を読みとる技術が現実的なものになったおかげで、新たな問題について懸念する声も上がり始めている。
脳インプラントが悪用され、いつの間にかその人の記憶や思考が盗まれる可能性だって否定できなくなってきているからだ。
それゆえに、今専門家たちの間では「ニューロライツ(神経の権利)」をいかにして守るか、熱い議論が交わされているのだそうだ。
[画像を見る]
心のアップロードに意味はあるのか? ソーントン氏は技術の進歩の速さを指摘し、それほど遠くない未来に心のアップロードが実現する可能性をほのめかしている。
だが、1つ気になることがある。
それが可能になった近未来、あなたはまさに心をアップロードしようとしていると想像してみてほしい。
頭には脳をスキャンするための電極が取り付けられ、すぐ隣にはこれを処理するコンピューターと、あなたの心が保存される機械の体が置かれている。
あなたは意を決してアプロードを開始した。軽い作動音がして、脳のスキャンが始まる。そして数分後、コンピューターのモニターには「アップロード完了」と表示される。
だが、何かが変わったようには思えない。
あなたは相変わらず今まで通りで、モニターの文字を見つめている。すると隣で寝ていた機械の体が起き上がり、「やった、アップロードに成功したぞ!」と喜びの声が聞こえてきた。
ただ脳を詳細にスキャンしてコピーできるだけでは、本物そっくりの複製を作れるだけ。おそらく本人の心は元の体に収まったままだろう。
それに何の意味があるのだろうか?
心のアップロードは「人間であることの意味を変える可能性を秘めている」と述べるソーントン氏だが、この疑問については何も触れていない。
References:How uploading our minds to a computer might become possibleokaimoo / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
最近のドラマなら『ブラック・ミラー』や『アップロード』といったシリーズで描かれているが、日本でなら士郎政宗の『攻殻機動隊』などが特に有名かもしれない。
電脳化はSFの題材としてはよくあるテーマだが、はたして心をアップロードすることなど本当に可能なのだろうか?
もちろん今の時点でそれはまだ実現していない。だが最近の科学技術の発展によって、それが可能になる日は着実に近づいているようだ。
心を機械にアップロードする「電脳化」の方法は? 仮に心のアップロードが実現可能なのだとして、いったいどうすればそんなことができるのだろう? なにしろ心は形のない曖昧なものなのだ。
これを研究テーマにしているノッティンガム大学の博士課程の学生アンジェラ・ソーントン氏の解説によると、一番有望なのは「スキャン・アンド・コピー」であるという。
心は脳の働きによって作られる。ならば脳の構造を詳細にスキャンし、オリジナルそのままに振る舞うコピー脳を再現してしまえばいい。
だが口で言うのと、現実にやるのとでは大違い。そんなことは本当にできるのだろうか?
だが、これついてすでに10年以上前に、オックスフォード大学の研究チームが可能かもしれないと報告しているのだ。
「手ごわい工学的・研究的課題だが、やるべきことは明確で、現在の技術の延長によって達成できるように思われる。」(Whole Brain Emulation)
またロシアには、永遠の命を手にするために、神経科学者やロボット工学者と協力して心のアップロードに挑む大富豪がいる。
その人物、ディミトリ・イツコフ氏は2016年当時、BBCの『The Immortalist』というドキュメンタリー番組の中で、彼の望みは2045年までには達成されるだろうと語っていた。
それどころか、2023年中に亡くなった人の意識をアップロードできるようになるという予測すらある。
[画像を見る]
photo by iStock
電脳化に向けての技術は、着実に前に進んでいる ソーントン氏自身は、あと20年かそこらで実現する可能性は低いだろうと考えている。だが、それでも人類は脳の再現に向けて一歩一歩着実に歩み続けているという。
たとえば「ニューロテクノロジー」と呼ばれる、人間の脳活動を直接記録したり、修正したりする方法は急速に進歩している。
かの実業家イーロン・マスク氏が設立したニューラリンク社では、脳とコンピューターをつなぐ電脳化デバイスの開発を進めており、サルやブタを使ったデモンストレーションを披露している。
またカリフォルニア大学サンフランシスコ校のグループは、障害で会話ができなくなった患者のために、思考だけでコンピューターに文字入力する方法する技術を開発した。
このような技術は、人工知能によって後押しされ、脳波の解読も徐々にできるようになってきた。いずれは、脳内の思考を読むだけでなく、情報を書き込むことも可能になるかもしれない。
このように心を読みとる技術が現実的なものになったおかげで、新たな問題について懸念する声も上がり始めている。
脳インプラントが悪用され、いつの間にかその人の記憶や思考が盗まれる可能性だって否定できなくなってきているからだ。
それゆえに、今専門家たちの間では「ニューロライツ(神経の権利)」をいかにして守るか、熱い議論が交わされているのだそうだ。
[画像を見る]
心のアップロードに意味はあるのか? ソーントン氏は技術の進歩の速さを指摘し、それほど遠くない未来に心のアップロードが実現する可能性をほのめかしている。
だが、1つ気になることがある。
仮に心のアップロード技術が確立されたとして、それにどれほど意味があるのか? ということだ。
それが可能になった近未来、あなたはまさに心をアップロードしようとしていると想像してみてほしい。
頭には脳をスキャンするための電極が取り付けられ、すぐ隣にはこれを処理するコンピューターと、あなたの心が保存される機械の体が置かれている。
あなたは意を決してアプロードを開始した。軽い作動音がして、脳のスキャンが始まる。そして数分後、コンピューターのモニターには「アップロード完了」と表示される。
だが、何かが変わったようには思えない。
あなたは相変わらず今まで通りで、モニターの文字を見つめている。すると隣で寝ていた機械の体が起き上がり、「やった、アップロードに成功したぞ!」と喜びの声が聞こえてきた。
ただ脳を詳細にスキャンしてコピーできるだけでは、本物そっくりの複製を作れるだけ。おそらく本人の心は元の体に収まったままだろう。
それに何の意味があるのだろうか?
心のアップロードは「人間であることの意味を変える可能性を秘めている」と述べるソーントン氏だが、この疑問については何も触れていない。
References:How uploading our minds to a computer might become possibleokaimoo / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
編集部おすすめ