「聞こえた、そっちだね!」ボイジャー2号、地球からの大きな声に反応し交信を再開することに成功
 無限に広がる暗黒の宇宙空間の中、たった一機でがんばってくれている宇宙探査機にはどうしても感情移入せずにはいられない。

 宇宙に旅立ってから約46年、現在も太陽系をはるかに超え、199億km離れた恒星間空間にいるボイジャー2号もそんな探査機の1つだ。


 先日、NASAのコマンド送信ミスで、アンテナの向きがずれ、消息を絶ったボイジャー2号だが、それでもかすかな信号を送ってくれたことで、生存を確認することができた

 そしてついに、NASAが最大限に出力を上げ「おーい!こっちだぞ~」と、 ボイジャー2号に呼びかけたところ、「きこえた!そっちだね」と、37時間後に返事が届いた。通信を再確立することに成功したのだ。

迷子になったボイジャー2号にNASAが最大出力で呼びかける NASAのコマンド送信ミスで、アンテナの向きが地球から2度ずれ、ボイジャー2号と通信が取れなくなくなってしまったと発表があったのは8月1日のこと。

 その後、迷子のボイジャー2号からのか細い声をキャッチしたNASAは、「おーい、こっちだー!」と呼びかけ、アンテナの向きを地球に戻す作戦を開始していた。

 だがそれは簡単なことではない。ボイジャー2号はすでに太陽系を旅立ち、地球から約199億キロも離れた恒星間空間をさまよっているのだ。

 この作戦がうまくいかなければ10月15日にスケジュールされた同機の定期的な方向リセットを待つしかない。

 遥か彼方にいる2号に地球からの声を届けるには、深宇宙通信情報網「ディープスペースネットワーク(DSN)」を最高出力にし、しかも可能な限り最高のコンディションを見計らって電波を送信しなければならなかった。

 DSNは地球の自転や公転によらず、一年中、外惑星軌道を含む探査機との通信が可能となる。米国カリフォルニア州、スペインのマドリード、オーストラリアのキャンベラに地上局を設置している。

 さらにそこからが長い。
ほぼ光速で飛ぶ電波であってもボイジャー2号に届くまでには18.5時間、そこから折り返しの返事が地球に届くまでに18.5時間もかかる。

 つまり全身全霊の呼びかけがボイジャー2号に聞こえたかどうか確認できるまで、37時間かかるのだ。

 迷子になった子供の返事を1日半以上も待たねばならなかった、NASAのスタッフの心労を思うと胸がいたむ。

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ボイジャー2号 / image credit:NASA地球からの声がボイジャー2号に届き、再び交信することに成功 だが嬉しいことに、地球からの呼びかけは、遠くのボイジャー2号にちゃんと届いたようだ。

 NASAジェット推進研究所によれば、8月4日午前12時29分(米国東部時間)に科学・遠隔測定データの返信が再開され、「動作は正常で、予想通りに維持されている」ことが確認されたそうだ。

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宇宙への人類の灯台としての役割を果たすために 1977年に打ち上げられたボイジャー2 号は現在、太陽系をはるかに超え、地球から 199億km以上離れた場所でひとり頑張っている / image credit:NASAボイジャー2号の孤独な一人旅はこれからも続く 広大な宇宙で一人きりだったボイジャー2号もさぞや心細かったと思うが、これまでも、そしてこれからも孤独であることに変わりはない。

 1977年8月に地球から打ち上げられたボイジャー2号は、木星・土星・天王星・海王星を観察し、いわゆる”グランドツアー”を史上初めて達成した。

 さらに2018年11月、太陽系を脱出。現在は星と星の間に広がる宇宙(恒星間空間)をたった一人で旅している。

 そのエネルギーは少なくとも2025年まではもつようだが、それ以降はボイジャー2号の体力と運次第ということになる。完全に眠りについた後は、永遠に天の川を彷徨い続けることになるだろう。

 その懐には地球の音を録音した金のレコードが携えられているが、いつの日か、どこかの誰かの耳に届くことはあるのだろうか?

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photo by iStock

追記:(2023/08/07)本文を一部訂正して再送します。

References:NASA back in touch with Voyager 2 after 'interstellar shout' / written by hiroching / edited by / parumo

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