4つの翼をもつ恐竜「ミクロラプトル」が教えてくれる、現代の鳥類の翼が2つしかない理由
 およそ1億2500万年前の白亜紀前期、中二心をくすぐるかっこいい恐竜がいた。ドロマエオサウルス科の仲間「ミクロラプトル」は、翼が4枚あったのだ。


 まるで異世界のドラゴンのごとく空を飛ぶ恐竜に、心が揺さぶられるのは無理もないだろう。だがこの恐竜は、4つの翼を持つことが、果たして進化上有利に働いたのかどうかを、我々に教えてくれている。

 現在4つの翼をもつ、空を飛ぶ鳥類がいないことを考えると、おのずと答えが見えてくるかもしれない。

かつて実在した4つの翼をもつ恐竜は何でも食べた ミクロラプトルは小型の羽毛恐竜で、前肢のみならず後肢にも発達した飛行用の羽毛をもち、成体の全長は約60cmから80cmほど。

 4つの翼を持ち空を飛んでいた。ミクロラプトルという名前は、ラテン語で「つかむ者」を意味する。

 また、ほ乳類を食べた証拠を残した恐竜としても有名だ

 その化石の胸の部分からは、ネズミのような哺乳類の足が見つかっており、最後の晩餐としてそれを食べたのだと推測されている。

 だが、それだけではない。ミクロラプトルはかなりの美食家(あるいは悪食)だったらしく、ほかの化石からは魚や爬虫類、さらには鳥の骨まで発見されている。

 英ロンドン大学クイーン・メアリー校のデビッド・ホーン博士の説明によるなら、ミクロラプトルは特化型ではなく万能型ハンターで、現代なら都会のキツネのような感じだったのだという。

 要は食べられるものなら、なんでも食べたということだ。

[画像を見る]

ミクロラプトルの化石 / image credit:iStock4つの翼を得た代わりに、失ったものがある可能性 ホーン博士がそう考えるのも理由がある。


 たとえば、ミクロラプトルが魚の狩りに特化していたとしよう。そうだとするなら、それをうかがわせる適応が見られるはずだが、彼らの化石にそうした特徴はない。

 ならば4つの翼で2つ翼の鳥を追いつめ、仕留めたのだろうか? だがそれは、ホーン博士に言わせれば、ヘリコプターでジェット機に挑むようなものなのだとか。明らかに2つ翼の方が速く飛べるそうで、まず成功するとは思えないのだそうだ。

 進化というと、常に最適化された能力を獲得して時代をリードするかのようなイメージがあるが、それは誤解だ。

 あちらを立てれば、こちらが立たぬといった具合に、何かを得た代わりに何かを失うことがしばしばなのだ。

 ミクロラプトルの場合、腕と脚に羽毛を生やすことで4枚の翼を手に入れた。だが、それが別のものを失わせる結果になったかもしれない。

 たとえば、空を飛べたとされるミクロラプトルだが、それでも歩く必要はあったし、獲物や木をつかむ必要だってあったはずだ。

 だが手足を翼にしたおかげで、そうしたことは下手くそだったかもしれない。トレードオフの進化では、それらすべてを最高のものにすることはできないのだ。

[画像を見る]

ミクロラプトルのイメージ図 / photo by iStock結局4枚の翼はデメリットの方が大きかった そうは言っても、4枚翼のメリットもあったはずだ。


 かつては、ミクロラプトルは複葉機(左右の両側にそれぞれ2枚以上の主翼を持つ飛行機)のように空を飛んだという説が有力だった。

 ところが、その股関節を見てみると、そのように足を開くのが難しいことがわかる。

 現在では、ミクロラプトルは前翼を浮かぶために使い、後翼を操舵に使ったのだろう考えられている。そうすることで、旋回速度は3倍になり、旋回半径も40%小さくできたという。

 それは森の中で狩りをするには都合が良かったろうが、不器用になる以外にも代償をともなうものだった。

 翼が増えるということは、それだけ抵抗も増えるということで、その分余計なエネルギーが必要になる。

 それが結果的にまずかっただろうことは空を見上げればわかる。今生きている空飛ぶ鳥はどれも2枚の翼ばかりで、4枚翼はどこにもいないのだ。

 4枚翼は確かにかっこいいが、当時の環境で生き残るためには2枚のほうが正解だったのだろう。

 だが、4枚の翼のほうが優位になる環境がこの後地球に訪れるのなら、もしかしたら4枚翼の鳥が復活する可能性もあるのかもしれない。

追記(2023/08/22)本文の誤記を訂正して再送します。
References:Microraptor Was A Four-Winged Dinosaur That Probably Should've Stopped At Two | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
編集部おすすめ