花束を口にくわえて持ち運ぶ、かわいらしいアメリカナキウサギ
 暖かい季節になると、草花を摘み、花束のようにして口にくわえて、せっせと持ち運んでいるのは、アメリカナキウサギだ。

 愛らしいその姿は、自然界の花屋さんのようだ。


 アメリカナキウサギは冬眠をしないため、冬の間の食料が必要となる。これらの花束は、お日様で乾燥させドライフラワーにし、冬場の寝床や食料として使用するのだという。 

自然界の花屋さん、アメリカナキウサギ ウサギ目ナキウサギ科ナキウサギ属は、現在30種が認められている。耳がまるっこくて短いため、ハムスターのようにも見えるがウサギの近縁種だ。

 高い声でキューキューと鳴くことから日本語では「ナキウサギ」と名付けられたが、アメリカでは「ピカ(Pika)」と呼ばれている。

 北アメリカに生息するアメリカピカは、高地の岩場に住んでおり、暖かい間は食料となる野生の草花を探し回っている。

 以下の写真は、米ユタ州、シダーブレイクス国定公園で花束を口にくわえて運んでいるアメリカナキウサギだ。まさに自然界の花屋さんの配達と言った感じでとてもかわいらしい。[画像を見る] アメリカナキウサギはなぜ花束を運んでいるのか? アメリカナキウサギは草食動物で、草、花、葉、枝などの多くの種類の植物を食べる。夏の間はすぐに食べることができるが、冬は食料の確保が困難となる。

 彼らの生息地の冬は過酷な環境だ。そこで植物が確保できる間は、花や草を集めて保存し、食料や寝床として使用するのだ。


 摘み取られた草花は岩の上に並べて太陽の光で乾燥させ「干し草」を作る。こうして食料にカビなどが繁殖するのを防いでいるのだが、それだけではない。

 中にはそのまま食べると有毒な植物も含まれており、それらを干し草の中に混ぜることで、さらに食料をカビや微生物から守るのだという。

 冬になると、その毒素が分解されるため、ナキウサギは有毒植物を安全に食べることができるのだそうだ。

 完全に乾燥させた干し草は、巣穴に運び冬まで保管するという。

 こちらはアメリカ、ワイオミング州、グランドティトン国立公園で撮影された、アメリカナキウサギだ。

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 コロラド州の荒野でハイキングをしていた写真家のチャールズ・ハウパートさんも、アメリカナキウサギが花束を運んでいるところに遭遇し、素晴らしい写真を撮影した。[画像を見る]  また、アメリカナキウサギは他の個体がせっせと作った干し草を盗み出そうとすることも珍しくないそうで、チキチキ争奪戦が繰り広げられているという。

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Pikas in the Rockies steal from their neighbours to survive

 アメリカナキウサギは寒い高山の気候に適応した体のつくりになっているため、気候変動に伴う気温の上昇に敏感だ。実際、25℃を超える温度に長時間さらされると、命に危険が及ぶという。

 米国立公園局の調査では、今世紀末までにナキウサギの一部の個体群が絶滅する可能性があるかもしれないという。

 だがナキウサギはまだ絶滅危惧種に指定されておらず、今後直面する脅威を軽減する計画が進められている。


 日本でも北海道にのみキタナキウサギの亜種、エゾナキウサギ が生息しており、準絶滅危惧(NT)に指定されている。

written by parumo

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