
野生のトマトはほとんどが緑色だという。ではなぜ私たちの食べているトマトは赤いのか?もちろん今のトマトは品種改良を重ね、様々なサイズや大きさ、甘さなどがあるが、トマトが赤くなったのはそれ以前の問題だ。
アメリカ、マサチューセッツ大学アマースト校の研究チームは、栽培種と野生種を含む140本以上のトマトを育て、この謎を解くヒントを得たという。
それは、食べたもらいたい動物の好みの形状や味に合わせて、果物を進化させた「フルーツ症候群」と呼ばれるもので、他の植物にみられるものだが、トマトとしては初めて確認されたという。
この発見は、自然界の果物の進化の秘密を伝えているとともに、より美味しく、より栄養あるトマトを作り出す手がかりにもなるとのことだ。
原産地に自生しているトマトは緑色で人間が食べるのに適さない 生で食べたり、加工して料理のソースにしたりと、食卓ではお馴染みのトマトだが、ただ赤いだけの野菜だとは思っていないだろうか?
私たちが食べているトマトは、もともと南アメリカのアンデス山脈原産のナス科植物だ。そこに自生している野生種は、普段私たちが目にするのトマトとはまるで違う。小さくて緑色をしていてとても食べられたものではないという。
サチューセッツ大学アマースト校の大学院生ジェイコブ・バーネット氏は次のように説明する。
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特定の動物に食べてもらうように進化したという仮説 野生のトマトが緑で不味いものばかりならば、スーパーに売っている赤くて美味しいトマトはどこからやってきたのだろうか?
じつは果実の進化には、動物の好みが関係しているという仮説がある。
さまざまな果実を観察してみると、いろいろな特徴がバラバラに進化するのではなく、ひとまとまりになって現れる傾向があることがわかる。
例えば、小さい果物なら、色は明るく、糖度が高く甘い傾向がある。また果実の外見とそこに含まれる栄養価には関係があることも多い。
これは特定の動物に食べてもらうための進化だと考えられている。
果実とは、動物に食べてもらい、それによってタネを遠くまで運んでもらうための工夫だ。
だから食べたもらいたい動物の好みに合わせて、果物を進化させた。その結果、その動物にアピールできる特徴がセットになって現れると考えられるのだ。
こうしたセットになった特徴のことを「フルーツ症候群」や「散布症候群」と呼ぶそうだ。
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トマトにもフルーツ症候群はあるのか? では野生のトマトには、フルーツ症候群はあるのだろうか? これがあるのなら、赤いトマトはやはり動物の好みに合わせた結果だろうと推測することができる。
それを知るためにバーネット氏らは、さまざまなトマトを栽培して、自分の目で確かめてみることにしたのだ。
彼らが栽培したのは、野生種と栽培種を含む15種、合計143本のトマトだ。
育ったトマトは「野性的で不格好」で、果実や葉をとるにはナタで切らねばならないほどだったという。
そうして苦労して集めたトマトの色や形、糖分や酸、DNA、揮発性有機化合物(香りの素だ)を分析した。
すると香り・風味・色にはやはりセットで現れる特徴があり、しかもトマトの見た目とその栄養価が一致することもわかったそうだ。
史上初めてトマトで発見された「フルーツ症候群」の証拠だという。
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熟したトマト果実の多様性/ image credit:DOI: 10.1002/ppp3.10399トマトも食べられたい動物の好みに合わせていた このことは、トマトの特徴がやはり動物たちの好みに合わせて進化してきただろうことを裏付けている。
小さくて緑色で、メロンのような香りのするトマトは、ネズミのような小さな哺乳類の好みに合わせたものだと考えられる。一方、甘くて色のついたトマトは、鳥の好みに合わせたものだ。
では、なぜ人間は鳥の好む赤いトマトを選んで育てたのか? それは今のところ謎に包まれている。
その謎を解明にするには、自然界ではどの動物がどの果物を食べているのか観察する必要があるとのこと。そうしたことを体系的に調べた研究はまだないのだそうだ。
[動画を見る]
この研究は『Plants, People, Planet』(2023年6月25日付)と『American Journal of Botany』(2023年8月8日付)に掲載された。
References:You say tomato, these scientists say evolutionary mystery / written by hiroching / edited by / parumo
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アメリカ、マサチューセッツ大学アマースト校の研究チームは、栽培種と野生種を含む140本以上のトマトを育て、この謎を解くヒントを得たという。
それは、食べたもらいたい動物の好みの形状や味に合わせて、果物を進化させた「フルーツ症候群」と呼ばれるもので、他の植物にみられるものだが、トマトとしては初めて確認されたという。
この発見は、自然界の果物の進化の秘密を伝えているとともに、より美味しく、より栄養あるトマトを作り出す手がかりにもなるとのことだ。
原産地に自生しているトマトは緑色で人間が食べるのに適さない 生で食べたり、加工して料理のソースにしたりと、食卓ではお馴染みのトマトだが、ただ赤いだけの野菜だとは思っていないだろうか?
私たちが食べているトマトは、もともと南アメリカのアンデス山脈原産のナス科植物だ。そこに自生している野生種は、普段私たちが目にするのトマトとはまるで違う。小さくて緑色をしていてとても食べられたものではないという。
サチューセッツ大学アマースト校の大学院生ジェイコブ・バーネット氏は次のように説明する。
大きさはブルーベリーほど。そして、ほとんどは熟しても緑色です。香りはリンゴやメロン、ものによってはキュウリのようなものもあります。大抵の場合、味はひどいものです驚いたことに、中には毛むくじゃらのトマトまであるという。
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特定の動物に食べてもらうように進化したという仮説 野生のトマトが緑で不味いものばかりならば、スーパーに売っている赤くて美味しいトマトはどこからやってきたのだろうか?
じつは果実の進化には、動物の好みが関係しているという仮説がある。
さまざまな果実を観察してみると、いろいろな特徴がバラバラに進化するのではなく、ひとまとまりになって現れる傾向があることがわかる。
例えば、小さい果物なら、色は明るく、糖度が高く甘い傾向がある。また果実の外見とそこに含まれる栄養価には関係があることも多い。
これは特定の動物に食べてもらうための進化だと考えられている。
果実とは、動物に食べてもらい、それによってタネを遠くまで運んでもらうための工夫だ。
だから食べたもらいたい動物の好みに合わせて、果物を進化させた。その結果、その動物にアピールできる特徴がセットになって現れると考えられるのだ。
こうしたセットになった特徴のことを「フルーツ症候群」や「散布症候群」と呼ぶそうだ。
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トマトにもフルーツ症候群はあるのか? では野生のトマトには、フルーツ症候群はあるのだろうか? これがあるのなら、赤いトマトはやはり動物の好みに合わせた結果だろうと推測することができる。
それを知るためにバーネット氏らは、さまざまなトマトを栽培して、自分の目で確かめてみることにしたのだ。
彼らが栽培したのは、野生種と栽培種を含む15種、合計143本のトマトだ。
育ったトマトは「野性的で不格好」で、果実や葉をとるにはナタで切らねばならないほどだったという。
そうして苦労して集めたトマトの色や形、糖分や酸、DNA、揮発性有機化合物(香りの素だ)を分析した。
すると香り・風味・色にはやはりセットで現れる特徴があり、しかもトマトの見た目とその栄養価が一致することもわかったそうだ。
史上初めてトマトで発見された「フルーツ症候群」の証拠だという。
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熟したトマト果実の多様性/ image credit:DOI: 10.1002/ppp3.10399トマトも食べられたい動物の好みに合わせていた このことは、トマトの特徴がやはり動物たちの好みに合わせて進化してきただろうことを裏付けている。
小さくて緑色で、メロンのような香りのするトマトは、ネズミのような小さな哺乳類の好みに合わせたものだと考えられる。一方、甘くて色のついたトマトは、鳥の好みに合わせたものだ。
では、なぜ人間は鳥の好む赤いトマトを選んで育てたのか? それは今のところ謎に包まれている。
その謎を解明にするには、自然界ではどの動物がどの果物を食べているのか観察する必要があるとのこと。そうしたことを体系的に調べた研究はまだないのだそうだ。
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この研究は『Plants, People, Planet』(2023年6月25日付)と『American Journal of Botany』(2023年8月8日付)に掲載された。
References:You say tomato, these scientists say evolutionary mystery / written by hiroching / edited by / parumo
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