
指でコインを弾いて、表が出るか裏が出るかを当てるコイントス。どちらか決められず運命をコインにゆだねるこの方法は昔から使用されてきた。
表と裏が出る確率は50/50、それは公平の象徴であるはずだった。ところが実際にはそうでないということが最近の研究により明らかとなった。
実際にコイントスを35万回やった実験によれば、そこにはわずかな偏りがあるのだという。コイントスをするとき、上にしてた面が出る確率は約50.8%になるのだ。
最初にどちらの面を上に向けるかで偏りが生じる 2007年、アメリカの数学者パーシ・ダイアコニス(元マジシャンという異色の経歴の持ち主だ)は、眉をひそめた。
弾いたコインが表と裏になる確率は完全には等しくなく、弾くときに上に向いていた面が、上になりがちであることに気づいたからだ。
大昔からコイントスは公正の象徴とされてきた。イカサマをしない限り、表か裏が出る確率はまったく同じはずだった。
ところがその確率に関するこれまでの研究は、コインをトスしたときに表と裏が出る確率ばかりに注目し、最初にコインが向いていた面については見落としていた。
この点を指摘したダイアコニスによれば、トスされたコインは、「歳差運動(回転する物体の回転軸が、その方向を変えてゆく運動)」により、最初に上を向いていた面の方がより長く空中に滞在する。
そのせいで最初に上を向いていた面が上になって落下する確率が、ほんの0.8%だけ高くなるのだという。
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コインで表と裏が出る確率は必ずしも均等ではない ダイアコニスの仮説を検証するために、アムステルダム大学(オランダ)のフランティシェック・バルトシュ氏らは、コイントスを徹底的にやりまくることにした。
この実験では、48人の参加者が46カ国のコイン(コインによる差をなくすため)を合計35万757回トスして、最初の向きと同じ向きにコインが落ちたかどうか記録された。
すると、ディアコニスの仮説は本当に正しいことがわかったのだ。
コインをトスしたとき、上の面(最初の向き)が出る確率は50.8%。確かにコイントスの結果は、厳密にはランダムでなかった。
また他にもいくつか面白いことが明らかになっている。一つは、コイントスの結果が弾く人によって若干影響されるということ。
もう一つは、どのコインでも表か裏かの違いが、結果にまったく影響しないということだ。
つまり最初に上を向いている面が表だろうと裏だろうと、わずかに同じ面が出やすいことに変わりはないのだ。この偏りはどの国のコインにも当てはまるという。
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わずか0.8%の偏りが結果を大きく左右することも さて、0.8%の偏りなど、取るに足らない些細なものだと思うだろうか?
たった1度きりの勝負ならば、そうかもしれない。だが、何度も繰り返すなら話は違う。この偏りを利用することで、大きなアドバンテージを手に入れることができる。
バルトシュ氏はX(旧ツイッター)で、こんな思考実験をしている。
これから1000回コイントスをして、その都度1ドルを賭けるとする。もしあなたがこのわずかな偏りを利用するなら、最終的に獲得する報酬は19ドル(今なら約2800円だ)になる。
「大数の法則」ゆえに、コイントスの回数が増えれば増えるほど、0.8%に限りなく近い儲けが上がるようになるのだ。
ちなみにカジノは、この大数の法則を利用することで利益を上げている。つまり、カジノは自分たちに微妙に有利なルールを設定することで、ゲームをやればやるほど儲かるようにしてあるのだ(だから、イカサマでもしない限り、ギャンブルをやればやるほど負けるようになっている)。
では、そうしたカジノのアドバンテージと、コイントスのアドバンテージを比べてみたらどうだろう?
たとえば、先ほどのコイントスの事例と同じ回数と賭け金で、6デッキ・ブラックジャックをやってみる。バルトシュ氏によれば、この場合カジノは5ドル儲けることになる。そのため、コイントスのアドバンテージはこれよりも大きい。
一方、シングルゼロ・ルーレットをプレイした場合、カジノの儲けは27ドル。これに比べれば、コイントスのアドバンテージは小さくなる。
さて、もし今度コイントスで何かを決めるようなことがあるならば、コインを投げる前に手元をちょっと覗いてみよう。
この研究の査読前論文は『arXiv』(2023年10月6日投稿)で閲覧できる。
References:Flipping the script: Why coin tosses are never truly 50/50 / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
表と裏が出る確率は50/50、それは公平の象徴であるはずだった。ところが実際にはそうでないということが最近の研究により明らかとなった。
実際にコイントスを35万回やった実験によれば、そこにはわずかな偏りがあるのだという。コイントスをするとき、上にしてた面が出る確率は約50.8%になるのだ。
最初にどちらの面を上に向けるかで偏りが生じる 2007年、アメリカの数学者パーシ・ダイアコニス(元マジシャンという異色の経歴の持ち主だ)は、眉をひそめた。
弾いたコインが表と裏になる確率は完全には等しくなく、弾くときに上に向いていた面が、上になりがちであることに気づいたからだ。
大昔からコイントスは公正の象徴とされてきた。イカサマをしない限り、表か裏が出る確率はまったく同じはずだった。
ところがその確率に関するこれまでの研究は、コインをトスしたときに表と裏が出る確率ばかりに注目し、最初にコインが向いていた面については見落としていた。
この点を指摘したダイアコニスによれば、トスされたコインは、「歳差運動(回転する物体の回転軸が、その方向を変えてゆく運動)」により、最初に上を向いていた面の方がより長く空中に滞在する。
そのせいで最初に上を向いていた面が上になって落下する確率が、ほんの0.8%だけ高くなるのだという。
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コインで表と裏が出る確率は必ずしも均等ではない ダイアコニスの仮説を検証するために、アムステルダム大学(オランダ)のフランティシェック・バルトシュ氏らは、コイントスを徹底的にやりまくることにした。
この実験では、48人の参加者が46カ国のコイン(コインによる差をなくすため)を合計35万757回トスして、最初の向きと同じ向きにコインが落ちたかどうか記録された。
すると、ディアコニスの仮説は本当に正しいことがわかったのだ。
コインをトスしたとき、上の面(最初の向き)が出る確率は50.8%。確かにコイントスの結果は、厳密にはランダムでなかった。
また他にもいくつか面白いことが明らかになっている。一つは、コイントスの結果が弾く人によって若干影響されるということ。
もう一つは、どのコインでも表か裏かの違いが、結果にまったく影響しないということだ。
つまり最初に上を向いている面が表だろうと裏だろうと、わずかに同じ面が出やすいことに変わりはないのだ。この偏りはどの国のコインにも当てはまるという。
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わずか0.8%の偏りが結果を大きく左右することも さて、0.8%の偏りなど、取るに足らない些細なものだと思うだろうか?
たった1度きりの勝負ならば、そうかもしれない。だが、何度も繰り返すなら話は違う。この偏りを利用することで、大きなアドバンテージを手に入れることができる。
バルトシュ氏はX(旧ツイッター)で、こんな思考実験をしている。
これから1000回コイントスをして、その都度1ドルを賭けるとする。もしあなたがこのわずかな偏りを利用するなら、最終的に獲得する報酬は19ドル(今なら約2800円だ)になる。
「大数の法則」ゆえに、コイントスの回数が増えれば増えるほど、0.8%に限りなく近い儲けが上がるようになるのだ。
ちなみにカジノは、この大数の法則を利用することで利益を上げている。つまり、カジノは自分たちに微妙に有利なルールを設定することで、ゲームをやればやるほど儲かるようにしてあるのだ(だから、イカサマでもしない限り、ギャンブルをやればやるほど負けるようになっている)。
では、そうしたカジノのアドバンテージと、コイントスのアドバンテージを比べてみたらどうだろう?
たとえば、先ほどのコイントスの事例と同じ回数と賭け金で、6デッキ・ブラックジャックをやってみる。バルトシュ氏によれば、この場合カジノは5ドル儲けることになる。そのため、コイントスのアドバンテージはこれよりも大きい。
一方、シングルゼロ・ルーレットをプレイした場合、カジノの儲けは27ドル。これに比べれば、コイントスのアドバンテージは小さくなる。
さて、もし今度コイントスで何かを決めるようなことがあるならば、コインを投げる前に手元をちょっと覗いてみよう。
ちょっとだけ運命の女神に好かれるようになるはずだ。
この研究の査読前論文は『arXiv』(2023年10月6日投稿)で閲覧できる。
References:Flipping the script: Why coin tosses are never truly 50/50 / written by hiroching / edited by / parumo
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