地球の準衛星「カモオアレワ」はもともと月の一部だった可能性が示唆される
 2016年に発見された小惑星「カモオアレワ」は、地球を公転しているように見えることとから「準衛星」の1つとされている。

 いったいカモオアレワの正体は何なのか?最新のシミュレーションによると、カモオアレワは隕石の衝突で吹き飛ばされた月の破片で、そのまま軌道に乗ったため、準衛星となった可能性があるという。


地球の準衛星「カモオアレワ」 地球の衛星は、「月」だけだ。だが、そのほかにいくつかの「準衛星(擬似衛星)」が存在する。その1つがカモオアレワ(2016 HO3)だ。

 その化学組成が月にそっくりであることから、この準衛星はもともと月の一部だったのではないかという仮説は以前から存在した。

 最新の研究ではこの仮説を裏付けることとなった。隕石の衝突で月からはじき飛ばされた破片が、軌道に乗り、地球の準衛星になる可能性が本当にあることがシミュレーションによって確かめられたからだ。

 これまで地球近傍小惑星の起源は、火星の軌道のさらに遠方にある小惑星と考えられてきたが、じつはもっと身近にもその発生源があるかもしれないということだ。

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月面に衝突する隕石のイメージ図 / image credit:NASA地球の準衛星はもともと月だった? 2016年4月27日にパンスターズ計画の望遠鏡「PS1」で発見された地球近傍小惑星「カモオアレワ」が注目されたのは、それが2つのユニークな特徴を備えていたためだ。

 1つ目の特徴は、カモオアレワが地球に近いことだ。そのせいで地球のまわりを周っているように見えるのだが、力学的には太陽を公転している(こうした天体を「準衛星」という)。

 2つ目の特徴は、地球近傍天体として非常に長生きであることだ。

 一般に、地球近傍天体はせいぜい数十年程度しか地球のそばにいない。
ところがカモオアレワは、数百万年もの間、地球に寄り添うだろうと予測されている。

 2021年、こうした特徴に興味を惹かれたアリゾナ大学の研究チームが、カモオアレワから反射される光の波長を調べたところ、衝撃的な事実が明らかになった。

 その化学組成が月のものにそっくりだったのだ。そのことは、カモオアレワがもともと月の一部で、何らかの原因で弾き飛ばされた破片である可能性を物語っていた。

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Earth's second moon (Most Stable Quasi-satellite) - 2016 HO3カモオアレワが月の破片である可能性は十分ある だがこれまでの考えでは、吹き飛ばされた月の破片が準衛星になるなどありえないとされていた。

 確かに月の表面はクレーターだらけで、これまで何度も小惑星が激しく衝突してきただろうことがわかる。

 だがそれによって吹き飛ばされた破片のほとんどは、また月面に戻ってくる。また、そうした破片の中には、そのまま地球にまで届くものもある。

 そうだとしても、吹き飛ばされた月の破片が、地球と一緒に太陽を公転する準衛星軌道に乗るには、さらに大きな運動エネルギーが必要になる。そんなこと本当にあり得るのだろうか?

 そこでアリゾナ大学の惑星科学者レヌ・マルホトラ氏は、その現実性をシミュレーションによって確かめてみることにしたのだ。

 このシミュレーションでは、太陽系にあるすべての惑星の重力が考慮されていた。そうした緻密な計算を何度も繰り返した結果、月の破片が地球と月の重力から逃れ、太陽をめぐる準衛星軌道に乗れることがわかったのだ。
まだ確定にはいたらない だからといって、カモオアレワが月の破片であると決まったわけではない。それでも今回の研究によって、その可能性がグッと高まったことになる。

 研究チームは今後、月の破片がカモオアレワのような軌道に乗るためのくわしい条件や、その正確な年齢を探る予定であるとのことだ。

 この研究は『Nature Communications Earth & Environment』(2023年10月23日付)に掲載された。

References:Researchers probe how a piece of the moon became a near-Earth asteroid | University of Arizona News / Moon rocks blasted off the lunar surface could become near-Earth asteroids / written by hiroching / edited by / parumo

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