2025年3月23日、土星の輪が完全に見えなくなる
 長年の天文ファンも、これから天体望遠鏡を買おうという人も、心の準備をしておこう。あと1年と数か月後、土星のシンボルである壮麗な環が消えてしまうのだ。


 運命の日は2025年3月23日だ。その日、土星の環は私たちから完全に見えなくなってしまう。

 といっても環が消滅するわけではない。本当に消えてなくなるのはもっと遠い未来の話だ。土星が地球に対してちょうど真横を向くことで、一時的に環がなくなって見えるのだ。

土星の輪は薄い あんな大きな土星の環が消えてしまうなんて、不思議に思うかもしれない。

 何しろ1番よく見える明るい部分(A環とB環)の幅だけでも、地球3個以上分もある。もっと見えにくいC~E環やその他いくつかの環も合わせるのなら、地球30個分にも相当するほど巨大だ。

 ところが、その厚さとなると意外なほど薄っぺらい。

 ほとんどの場所で厚さ100mもなく、そこから15億km離れた地球から見れば、厚みなんてほとんどないに等しい。

 だからもしも土星を真横から見れば、その環はちっとも見えないのだ。

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ハッブル宇宙望遠鏡が観察した、1996年から2000年までの土星の姿 / image credit:NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)

 そして土星が真横を見せてくれるのも、その赤道面が26.7度傾いているからだ。
そのおかげで土星が太陽を公転するうちに、地球から見たときの角度がだんだんと変わっていく。

 土星が「衝」(しょう/地球から見て、太陽と正反対の位置にあること)だった8月の傾斜角は約9度。

 だが2025年3月23日にはその角度がゼロになる。そしてその時、土星の環は見えなくなる。

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2023年、傾きにより土星の薄い環は消えたように見える / image credit:NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)2025年3月23日、土星の環は完全に見えなくなる このように土星がちょうど真横を見せてくれるのははじめてではなく、13.7年から15.7年の間隔で起きている。そして配置によっては、3回連続で横顔を見せてくれることもある。

 例えば、1990年代には1995年5月22日・同年8月10日・1996年2月11日に起きた。前回真横を見せてくれた2009年9月4日では1回だけだった。

 そして2025年3月23日の次にくるのは、2038年10月15日・2039年4月1日・同年7月9日と、またも3回連続だ。

 もちろん土星の環が見えなくなるのは一時的なことだ。土星の横顔が見えたかと思えば、今度は長年隠されていた環の裏側や、土星の南極が見えてくる。

 逆に傾きが最大になるのは2032年。
その時土星の環は地球に対して27度の角度になり、いっそう美しく見えることだろう。

 つまり今後しばらくは、環がない珍しい土星の姿や、最高に美しい環を観察する絶好のチャンスということだ。

References:Saturn's Rings Will Disappear From View In 2025 | IFLScience / Photograph Saturn's rings before they disappear from view - BBC Sky at Night Magazine / written by hiroching / edited by / parumo

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