ヨーロッパで5千年前に人類間で大規模な戦争が起きていた痕跡を発見
 スペインの遺跡から発掘された5000年前(新石器時代)の遺骨300体以上を再分析したところ、その多くが、ヨーロッパでのもっとも古い時期に起こった戦争の犠牲者だった可能性を示しているという。

 それは、これまで知られている最古の大規模戦争よりも1000年以上も古いことになる。


 『Scientific Reports』誌(2023年11月2日付)に掲載された研究によると、負傷者の数とそのうち男性の割合が不釣り合いに高いことから、少なくとも数ヶ月は続いたと思われる戦争期間中に、彼らが攻撃を受けたことがうかがえる。

これまで考えられているより千年早く大規模な戦争が起きていた ヨーロッパの新石器時代(およそ9000年から4000年前)の人類間の戦争については、ほとんどよくわかっていない。

 これまでの研究では、当時の紛争は数日以内の短期間に、20~30人ほどの小集団同士が襲撃を繰り返すもので、初期の社会では、長期にわたる大規模な戦争を支えるほどの兵站能力がなかったせいだとされていた。

 ヨーロッパでの最古の戦闘は、これまでおよそ4000年から2800年前の青銅器時代に起こったと考えられていた。

 テレサ・フェルナンデス=クレスポ氏ら考古学研究チームは、338体の遺骨を再調査し、傷が治癒した骨とそうでないものを調べた。

 これら遺骨はすべて、スペイン北部リオハ・アラベサ地方にある浅い洞窟の単一の集団埋葬地から発掘されたもので、放射性炭素年代測定で、5400年から5000年前のものであることが判明した。

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イベリア半島中北にあるSJAPLの場所(左)と発掘される前の埋葬地の東端の様子(右) / image credit:Scientific Reports (2023)。DOI: 10.1038/s41598-023-43026-9戦争によって傷ついた痕跡、戦闘は数か月続いた可能性 同じ場所で、52個の火打石の矢尻も見つかっていて、そのうち36個は標的に命中したことを示す軽微な疵があったという。

 遺骨の23.1%は、骨に怪我の跡があり、10.1%はその傷が治癒していない。当時の推定損傷率、それぞれ7~17%、2~5%をかなり上回っている。

 傷が治癒していない骨の74.1%、治癒した骨の70%は、若者あるいは成人男性のもので、女性の負傷率よりも相当高い。こうした差は、ヨーロッパの新石器時代の集団埋葬地では見られない。


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保存状態のもっともいい遺骨を復元した図 / image credit:Scientific Reports (2023)。DOI: 10.1038/s41598-023-43026-9

 全体的な負傷率、男性の負傷率が高いこと、そして以前に観察された矢尻についた疵は、この埋葬地に葬られた人たちの多くが、攻撃的な暴力にさらされたことを示しており、彼らは戦争の犠牲者だった可能性を示唆している。

 治癒している骨も比較的多いことから、戦闘が数ヵ月続いた可能性も考えられるという。

 戦争の原因は、明らかではないが、新石器時代後期、この地域にあった異なる文化同士の緊張など、いくつかの原因が推測できるという。

References:Large-scale violence in Late Neolithic Western Europe based on expanded skeletal evidence from San Juan ante Portam Latinam | Scientific Reports / Larger-scale warfare may have occurred in Europe 1,000 years earlier than previously thought / written by konohazuku / edited by / parumo

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