
英国オックスフォード大学を始めする探検チームによって、絶滅したと思われていた珍獣が60年ぶりに目撃されたそうだ。
その珍獣の名を「アッテンボロー・ミユビハリモグラ(Sir David’s long-beaked echidna)」という。
インドネシアに生息するこのハリモグラが最後に目撃されたのは、1960年代のこと。
それ以来絶滅したと考えられていたが、地面に開けられた穴やその姿など、各地で彼らの痕跡が見つかっており、じつはまだ生きているのではないかと疑われていた。
今回、山の中に仕掛けられたカメラによって、その珍しい姿がとらえられ、本当に彼らがまだ生きていることが確認された。
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Scientists rediscover Attenborough’s echidna after 60 year hiatus卵を産む珍しい哺乳類、ハリモグラ科 単孔目に分類される「ハリモグラ」は、「エキドナ」とも呼ばれる珍しい動物だ。エキドナとは、ギリシャ神話に登場する上半身が女性、下半身がヘビの怪物のこと。ハリモグラはその名にふさわしく、とてもユニークな姿をしている。
今回の探検チームの中心人物、ジェームズ・ケンプトン氏(オックスフォード大学)に言わせれば、「ハリネズミの棘、アリクイの鼻、モグラの足」を持つのだ。
単孔目というグループから何かピンとくるだろうか?
そう、エキドナは珍獣として知られるカモノハシと同じグループの動物だ。だから、哺乳類でありながら卵を産むという不思議な習性がある。
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ハリモグラ科 / image credit:iStock絶滅したと思われていたアッテンボロー・ミユビハリモグラ そして今回の主役であるハリモグラ科は、作家やプロデューサーとしても有名なイギリスの動物学者デイビット・アッテンボロー卿にちなみ、「アッテンボロー・ミユビハリモグラ(Sir David's long-beaked echidna:学名はZaglossus attenboroughi)」という。
インドネシア、ニューギニア島にあるサイクロプス山脈に生息するアッテンボロー・ミユビハリモグラは、オーストラリアやニューギニアの低地に生息する鼻の短いハリモグラとは違い、鼻が長いのが特徴だ。
アッテンボロー・ミユビハリモグラの存在を証明する唯一の科学的な証拠は、1961年にオランダの植物学者が記録したものだけ。
それ以来きちんとした記録はなく、すでに絶滅したものとされていた。およそ60年ぶりにその姿が目撃される だがジェームズ・ケンプトン氏らの探検チームは、インドネシア、ニューギニア島にあるサイクロプス山脈で4週間の調査を行い、ついにその貴重な姿をカメラにとらえることに成功したのだ。
およそ60年ぶりにその生存が確かめられたわけだが、滅多に人前に姿を現さないため、彼らの生態や行動についてはほとんどわかっていないそうだ。
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今回目撃されたアッテンボロー・ミユビハリモグラ / image credit: Expedition Cyclopsほかにも素晴らしい発見 この探検では、木で暮らす陸生のヨコエビや新種のカエル2種など、ハリモグラ以外にも素晴らしい発見があった。
昆虫学者レオニダス=ロマノス・ダブラノグルー氏は、このエビについて、「普通は海辺で生きているはずの動物が、こんなところで見つかるとは」と、その驚きをプレスリリースで語っている。
ちなみにヨコエビはエビと名がついているが、どちらかというとダンゴムシやフナムシなどに近い端脚類の仲間だ。幅広い環境に多くの種が分布しており、深海から淡水、そして少数ながら草むらや森の落ち葉の下に生息している。
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サイクロプス山脈の土壌や樹木で発見された新種の陸生のヨコエビ。このヨコエビは通常海岸で見られる系統に属しており、数百mの高さの山の斜面に生息しているのが発見されたとき、探検隊は驚きを隠せなかった / image credit:Expedition Cyclops
「サイクロプス山脈は雨がよく降るので、こうした動物たちが土の上で生きていけるだけの湿気があるのでしょう」
探検チームがニューギニア島北部にあるサイクロプス山脈の奥深くへと足を踏み入れたのは、今年6月から7月にかけてのことだ。
その甲斐あって素晴らしい出会いがあったわけだが、それはまさに命懸けの冒険だった。
ケンプトン氏によると、まずヨンス・サパリ村など地元の人たちと信頼関係を築くのに、何年も費やしたという。
そして、ようやくガイドとともに険しい山の山頂を目指すことになったが、その途中では毒ヘビやクモに遭遇し、猛暑にも苦しめられた。
ある未知の洞窟では、突然地震に襲われ、避難を余儀なくされた。また探検チームの1人は腕を2か所骨折し、マラリアに感染した者や、ヒルに1日半も目を吸われた者もいた。
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サイクロプス山脈の北斜面に設営した一時的な遠征キャンプ場 / image credit:Expedition Cyclops
危険だらけのアドベンチャーだったが、ケンプトン氏は熱帯雨林にロマンを感じずにはいられなかったと語る。
「トールキン(指輪物語の作者)の本に出てくるような、魅惑的で、しかも危険な、魔法のような風景ですね。危ないこともありましたが、探検チームの絆はすばらしく、おかげで誰もが士気を保つことができました」
ハリモグラは夜行性で、巣穴に潜んでいるため、発見が極めて難しい。
探検チームは、80台の隠しカメラを設置しハリモグラの出現を待ったが、ようやくその姿を撮影できたのは、4週間の探検のギリギリ最終日になってのことだったそうだ。
References:Found at last: critically endangered echidna finally rediscovered after 60 years | Department of Biology / Found at last: Bizarre, egg-laying mammal fin | EurekAlert! / Found at last: Bizarre, egg-laying mammal finally rediscovered after 60 years / written by hiroching / edited by / parumo
追記(2023/11/14)エビの記述を補足して再送します。
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
その珍獣の名を「アッテンボロー・ミユビハリモグラ(Sir David’s long-beaked echidna)」という。
「ハリネズミの棘、アリクイの鼻、モグラの足」を特徴とし、卵を産む世にも珍しい哺乳類だ。
インドネシアに生息するこのハリモグラが最後に目撃されたのは、1960年代のこと。
それ以来絶滅したと考えられていたが、地面に開けられた穴やその姿など、各地で彼らの痕跡が見つかっており、じつはまだ生きているのではないかと疑われていた。
今回、山の中に仕掛けられたカメラによって、その珍しい姿がとらえられ、本当に彼らがまだ生きていることが確認された。
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Scientists rediscover Attenborough’s echidna after 60 year hiatus卵を産む珍しい哺乳類、ハリモグラ科 単孔目に分類される「ハリモグラ」は、「エキドナ」とも呼ばれる珍しい動物だ。エキドナとは、ギリシャ神話に登場する上半身が女性、下半身がヘビの怪物のこと。ハリモグラはその名にふさわしく、とてもユニークな姿をしている。
今回の探検チームの中心人物、ジェームズ・ケンプトン氏(オックスフォード大学)に言わせれば、「ハリネズミの棘、アリクイの鼻、モグラの足」を持つのだ。
単孔目というグループから何かピンとくるだろうか?
そう、エキドナは珍獣として知られるカモノハシと同じグループの動物だ。だから、哺乳類でありながら卵を産むという不思議な習性がある。
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ハリモグラ科 / image credit:iStock絶滅したと思われていたアッテンボロー・ミユビハリモグラ そして今回の主役であるハリモグラ科は、作家やプロデューサーとしても有名なイギリスの動物学者デイビット・アッテンボロー卿にちなみ、「アッテンボロー・ミユビハリモグラ(Sir David's long-beaked echidna:学名はZaglossus attenboroughi)」という。
インドネシア、ニューギニア島にあるサイクロプス山脈に生息するアッテンボロー・ミユビハリモグラは、オーストラリアやニューギニアの低地に生息する鼻の短いハリモグラとは違い、鼻が長いのが特徴だ。
アッテンボロー・ミユビハリモグラの存在を証明する唯一の科学的な証拠は、1961年にオランダの植物学者が記録したものだけ。
それ以来きちんとした記録はなく、すでに絶滅したものとされていた。およそ60年ぶりにその姿が目撃される だがジェームズ・ケンプトン氏らの探検チームは、インドネシア、ニューギニア島にあるサイクロプス山脈で4週間の調査を行い、ついにその貴重な姿をカメラにとらえることに成功したのだ。
およそ60年ぶりにその生存が確かめられたわけだが、滅多に人前に姿を現さないため、彼らの生態や行動についてはほとんどわかっていないそうだ。
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今回目撃されたアッテンボロー・ミユビハリモグラ / image credit: Expedition Cyclopsほかにも素晴らしい発見 この探検では、木で暮らす陸生のヨコエビや新種のカエル2種など、ハリモグラ以外にも素晴らしい発見があった。
昆虫学者レオニダス=ロマノス・ダブラノグルー氏は、このエビについて、「普通は海辺で生きているはずの動物が、こんなところで見つかるとは」と、その驚きをプレスリリースで語っている。
ちなみにヨコエビはエビと名がついているが、どちらかというとダンゴムシやフナムシなどに近い端脚類の仲間だ。幅広い環境に多くの種が分布しており、深海から淡水、そして少数ながら草むらや森の落ち葉の下に生息している。
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サイクロプス山脈の土壌や樹木で発見された新種の陸生のヨコエビ。このヨコエビは通常海岸で見られる系統に属しており、数百mの高さの山の斜面に生息しているのが発見されたとき、探検隊は驚きを隠せなかった / image credit:Expedition Cyclops
「サイクロプス山脈は雨がよく降るので、こうした動物たちが土の上で生きていけるだけの湿気があるのでしょう」
探検チームがニューギニア島北部にあるサイクロプス山脈の奥深くへと足を踏み入れたのは、今年6月から7月にかけてのことだ。
その甲斐あって素晴らしい出会いがあったわけだが、それはまさに命懸けの冒険だった。
ケンプトン氏によると、まずヨンス・サパリ村など地元の人たちと信頼関係を築くのに、何年も費やしたという。
そして、ようやくガイドとともに険しい山の山頂を目指すことになったが、その途中では毒ヘビやクモに遭遇し、猛暑にも苦しめられた。
ある未知の洞窟では、突然地震に襲われ、避難を余儀なくされた。また探検チームの1人は腕を2か所骨折し、マラリアに感染した者や、ヒルに1日半も目を吸われた者もいた。
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サイクロプス山脈の北斜面に設営した一時的な遠征キャンプ場 / image credit:Expedition Cyclops
危険だらけのアドベンチャーだったが、ケンプトン氏は熱帯雨林にロマンを感じずにはいられなかったと語る。
「トールキン(指輪物語の作者)の本に出てくるような、魅惑的で、しかも危険な、魔法のような風景ですね。危ないこともありましたが、探検チームの絆はすばらしく、おかげで誰もが士気を保つことができました」
ハリモグラは夜行性で、巣穴に潜んでいるため、発見が極めて難しい。
探検チームは、80台の隠しカメラを設置しハリモグラの出現を待ったが、ようやくその姿を撮影できたのは、4週間の探検のギリギリ最終日になってのことだったそうだ。
References:Found at last: critically endangered echidna finally rediscovered after 60 years | Department of Biology / Found at last: Bizarre, egg-laying mammal fin | EurekAlert! / Found at last: Bizarre, egg-laying mammal finally rediscovered after 60 years / written by hiroching / edited by / parumo
追記(2023/11/14)エビの記述を補足して再送します。
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