この氷山は、もともと1986年に南極の棚氷から分裂したものだ。だが、すぐにウェッデル海の海底に引っかかり、実質的に氷の島となった。
その面積はおよそ4000km2で、東京都(2194km2)のほぼ2倍という巨大さ。厚みは400mあり、先日オープンしたばかりの日本一の超高層ビル「麻布台ヒルズ(330m)」を上回る。
そんなA23aが、2020年から少しずつ移動していることが確認された。今や海底を外れたA23aは、さらに南極海を越えて外へ流れてゆくと予測されている。
一度は固定されたものの再び動き出した世界最大の氷山 A23aは、もともと南極で2番目に広い棚氷「フィルヒナー・ロンネ棚氷」から大量に誕生した氷山の一部だった。
1986年当時、A23aにはロシア(旧ソ連)の研究基地があった。ソ連の科学者たちは、基地に置かれていた機材が失われることを恐れ回収チームを派遣。だが結局、A23aはうまい具合に海底に引っかかり、それ以上流れていくことはなかった。
では、なぜ35年に渡りそこにあったA23aは、今になって海底から外れ、再び動き出してしまったのだろうか?
英国南極地域観測所のアンドリュー・フレミング博士が語ったところによると、氷山の周りの海水温度に変化があった可能性はあるという。
だが、むしろ自然の流れの中でだんだんと溶けて、海底の引っかかりが弱くなり、ちょうど動き出すタイミングだったとも考えられるそうだ。
現在は南極半島を通過、南大西洋方面へ流れていく予測 そんなA23aはここ数カ月、風と海流に背中を押されて勢いをつけ、現在南極半島の北端を通過している。Double-whammy iceberg news this morning:
— British Antarctic Survey (@BAS_News) November 24, 2023
1️⃣ The largest iceberg, A23a, is on the move!
Here's its journey out of the Weddell Sea after being grounded on the sea floor after calving in August 1986.
Copernicus Sentinel-1 imagery, Google Earth Engine pic.twitter.com/KseKTD1Wrg
そしてウェッデル海域にあるほかの氷山と同様、南極環流に乗り、「氷山の路」として知られる南大西洋方面へと流れていくと予測されている。
ちなみにこの海流は、イギリスの有名な探検家アーネスト・シャクルトンが1916年、エンデュアランス号で遭難した後、南極から脱出するために利用したルートでもある。
シャクルトンは救命ボートで南大西洋にある英国領サウスジョージア島を目指したが、この島では海に浮かぶ氷山がよく目撃される。
つまり海流に乗った氷山は、しばしばこの島付近の浅い大陸棚にたどり着くということだ。そして最終的には、どんなに大きな氷山も、溶けて消えてしまう。
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生態系を支える氷山 サウスジョージア島は、アザラシ・ペンギン・海鳥などの繁殖地としても知られている。
もしも23aがそこへ流れていけば、あまりにも巨大であるため、動物たちの餌場を混乱させ、うまく子育てができなくなる恐れがある。
だが氷山自体は、決して悪いものではない。それは海の生態系に重要な役割を果たしているからだ。
氷山が溶けると、まだ氷河だったときに南極大陸の地面を削って取り込まれたミネラルが流れ出る。このミネラルが、海の生物の食物連鎖を支える大切な栄養なのだ。
誕生日がA23aと同じであるというウッズホール海洋研究所のキャサリン・ウォーカー博士は、「これらの氷山はさまざまな方法で生命を育んでいます。生命活動の出発点なのです」と語っている。
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References:World’s largest iceberg, twice the size of London and two-thirds as the Burj Khalifa skyscraper, breaks free | news.com.au / A23a: World's biggest iceberg on the move after 30 years - BBC News / written by hiroching / edited by / parumo
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