ヒゲペンギンの独特な睡眠法。4秒間のうたた寝を1万回繰り返して1日11時間睡眠を確保
 南極大陸の周辺に生息するヒゲペンギンは、その名の通り、目の後ろから喉にかけてヒゲのような黒い模様があるのが特徴だ。

 過酷な環境の中を生きるヒゲペンギンは人間のようにゆっくり眠ってなんかいられない。
そこで独特な睡眠法を行っている。

 1日に平均わずか4秒という超短時間のマイクロスリープを1万回積み重ねて、必要とされる睡眠時間11時間以上を補っている可能性があるという。

 『 Science』誌(2023年11月30日付)に発表された論文によると、この飛べない鳥は、絶えずまわりを警戒をしていなくてはならないことから、こうした特性を進化させたらしい。

南極の過酷な環境下では長く眠っていられない アデリーペンギン属のヒゲペンギンは、ペンギンの仲間の中でももっとも生息数が多いとされている。

 現在、おもに南極大陸と南大西洋の島々に、およそ800万羽のつがいがいると想定されている。

 つがいが営巣すると、パートナーがエサを探しに数日間出かけている間、もう片方はオオトウゾクカモメ、ワシなどの略奪者から卵を守るために、常に見張りを続けていなくてはならない。

 それだけではない。仲間のペンギンに巣の材料を横取りされないよう監視もしなくてはならない。出かけていたパートナーが戻ってくると、この役割を交代する。

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1日約4秒の睡眠を1万回繰り返すヒゲペンギン リヨン神経科学研究センターのポール=アントワーヌ・リブーレル氏率いる研究チームは、2019年12月にキングジョージ島のコロニーで14羽のヒゲペンギンに電極を埋め込んで、脳と首の筋肉の電気活動を記録した。それから、加速度計とGPSを使って、体の動きと位置を測定した。

 ビデオ録画と数日間にわたる直接観察データを組み合わせて、多くの独特な性質を特定することができた。


 立っているとき、寝そべって卵を抱いているときにペンギンたちは眠っていたが、その平均睡眠時間はわずか3.91秒。このマイクロスリープを1日に1万回以上繰り返していたのだ。

 コロニーの端にいるペンギンは、中心部にいるペンギンよりも一回の睡眠時間は長く深かった。

 この差は、コロニーの中心のほうが密集度が高く、巣の材料を盗られたりすることが多くなり、それに伴う大きな音や体のぶつかりあいが発生しやすいことから説明できそうだ。

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細切れ睡眠を何度も繰り返し、周りを警戒しながら睡眠時間を確保するヒゲペンギン一部の種では細切れ睡眠でも睡眠時間が確保できる こうした細切れ睡眠によって、ペンギンが実際にどれくらい子育ての疲労を回復しているかを実際に測定したわけではない。

 だが、ペンギンたちの繁殖が成功していることから、神経細胞が沈黙している瞬間は、休息と回復のための手段になっていると考えることができる。

 今回の発見からは、これまで考えられていたこととは違って、少なくとも一部の種では、細切れ睡眠でも、それを多く行うことで必要な睡眠時間が確保できるようになったのだろう。

 だが人間の場合は、このような細切れ睡眠は睡眠時無呼吸症候群と診断され、認知機能に影響を及ぼし、アルツハイマー病のような神経変性疾患を引き起こす可能性を指摘されてしまう。

 カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者、クリスチャン・ハーディング氏とオックスフォード大学のウラディスラフ・ヴャゾフスキー氏はこう書いている。
たとえ人間目線では異常なことでも、少なくとも特定の条件下では、ペンギンやほかの動物にはまったく正常である場合があるのだ
References:Nesting chinstrap penguins accrue large quantities of sleep through seconds-long microsleeps | Science / Penguins snatch 11 hours of sleep through seconds-long micronaps / written by konohazuku / edited by / parumo

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