
神秘に満ちた自然界では、交尾(交配)をしなくても子供を作れる生物たちが存在する。
そうした受精なしで単独で子を作ることを「単為生殖」という。
以下では、そんな単為生殖で子供を作れることが確認された8種の生物を紹介しよう。一部昆虫(ナナフシ)やヘビが登場することをあらかじめ言っておくよ。
1. コモドドラゴン(Varanus komodoensis)
コモドドラゴンの単為生殖は2006年に初めて記録された。当時、コモドドラゴンはヨーロッパに2頭しかいなかった。
イギリスのチェスター動物園で飼育されていたそのうちの1頭のメスが、オスもいないのに卵を25個も産んだのだ。
2020年2月末、アメリカ、テネシー州にあるチャタヌーガ動物園でもメスのコモドドラゴンが、単為生殖により卵を孵化させ3匹の子が誕生し、元気に育っているという。
2. ウチワシュモクザメ(Sphyrna tiburo)
米国ネブラスカ州、ヘンリー・ドアリー動物園&水族館でのとある朝、ウチワシュモクザメの水槽を見た飼育係は仰天した。
そこにはメスが3匹しかいなかったのに、サメの赤ちゃんが泳いでいたのだ。もちろん同種のオスはいなかったし、異種間で交尾した形跡もなかった。
こうした現象は、飼育される以前に海でもらった精子が体内に保存されているからだろうと推測されてきた。
だがウチワシュモクザメが海で捕獲されたのは3年も前のことで、当時は性的にも未成熟だった。
そのため水族館に来る前にオスと交尾したとは考えられないのだ。のちの遺伝的な調査で、生まれた子供が単為生殖によるものであることが確認されている。
なおウチワシュモクザメだけでなく、トラフザメ(Stegostoma tigrinum)、ツマグロ(Carcharhinus melanopterus)、スムーズハウンド(Mustelus mustelus)といったサメでも、単為生殖が確認されている。
3. カリフォルニアコンドル(Gymnogyps californianus)
絶滅の危機に瀕するカリフォルニアコンドルだが、そのメスは自立心が旺盛だ。だから、たとえオスがいたとしてもと、自分だけで子供を産んでしまう。
米カリフォルニア州にあるサンディエゴ動物園のスタッフは、コンドルの数をどうにか増やそうと、メスをオスと一緒に飼育してみることにした。
だが、オスはお呼びじゃなかったようだ。生まれた2羽のヒナのDNAを検査したところ、確認されたのは母親のものだけだった。
4. チビナナフシ(Timema)
他の動物とは異なりナナフシにとって単為生殖は日常の営みだ。なにせチビナナフシ属(Timema)の仲間は、単為生殖のみで繁殖し、100万年に渡って続いていると考えられていた。
だが交尾なしでの繁殖は理想的ではない。長期的に見ると単為生殖は変化する環境に適応する能力に悪影響を与える可能性があるのだ。
ではチビナナフシはどのようにしてこれほど長く生き残ることができたのか?
『Proceedings of the Royal Society B[https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2023.0404]』(2023年9月20日付)に掲載された研究では、4種チビナナフシの8集団が調べられた。
その結果、単為生殖しかしないと思われていたチビナナフシだが、実はひそかに交尾をしていた痕跡があったのだ。
4種類のうち2種類は時々交尾をすることで遺伝子プールに多様性を生み出し、リスクを制限していることがわかったという。
5. ブラーミニメクラヘビ(Ramphotyphlops braminus)
ミミズそっくりのブラーミニメクラヘビもまた、オスなしで子供を作ると考えられている。というか、これまでのところメスの個体しか見つかっていない。
6. クマムシ(Tardigrada)
圧倒的な生命力と防御力で極限環境に耐えることで知られるクマムシは、子作りも臨機応変だ。
基本はオスとメスがいるが、単為生殖をしたり雌雄同体(1つの個体がオスとメス両方の器官を持っていること)がいたりもする。ただし単為生殖するのは、湖や陸上の生息地にいる時の方が多いようだ。
7. アメリカワニ(Crocodylus acutus)
アメリカワニの単為生殖が確認されたのは、今年になってのこと。
コスタリカの動物園「パルケ・レプティランディア」で飼育されているメスが、16年もオスに会っていなかったというのに、14個の卵を産んだ。
ただ残念ながら、その卵から元気な赤ちゃんは生まれなかった。14個のうち、育ち始めたのは7個。きちんとした胎児が形成されたのは、たった1個だけだ。
そしてその赤ちゃんもまた結局は死んでしまった。DNA検査の結果、その赤ちゃんの遺伝子は、母親であるメスのワニの遺伝子と99.9%以上一致していたそうだ。
8. アマゾンモーリー(Poecilia formosa)
アマゾンモーリーは、メキシコや米テキサス州などに生息する淡水魚だ。その名のアマゾンとはアマゾンの熱帯雨林ではなく、ギリシャ神話に登場する女だけの部族「アマゾーン[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3]」にちなんだもの。
部族「アマゾーン」の女性たちは子供を産むために他部族の男と交わり、男の子が生まれれば殺し、女の子しか育てない。
この伝説を地でいくアマゾンモーリーのメスは、子供を産むために異種のオスから精子をもらう(そもそも同種にオスがいない)。
ところが、これはあくまできっかけにすぎず、そのオスの遺伝子が卵に組み込まれることはない。生まれてくる子供は、メスのみから遺伝子を受け継いでいる。
References:8 animals that have virgin births | Live Science[https://www.livescience.com/animals/animals-that-have-virgin-births] / written by hiroching / edited by / parumo
本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。