大学生のIQ(知能指数)は過去80年で17ポイント低下しているという。
カナダの研究者が行った調査によると、大学生の平均的なIQは1939年当時「119」だったが、2022年には「102」にまで下がった。
それは過去80年間で教育が充実したという証拠でもあるのだが、それと同時に大学の価値が空洞化しているということでもある。
1940年代、大学には大きな価値があった。だが、現在ではごく当たり前のもので、その学生が賢く、探究心に溢れた優れた人間であることを証明してはくれない。
研究チームは、大学も企業も、そして入学を目指す学生自身もそのことをよく認識するべきだと述べている。
現在の大学生の知能は平均と変わらない
かつて大卒であることは、賢さを裏付けるものだった。何しろ、北米では、大学生のIQは115から130とされることもあったのだ。これは人口平均よりもかなり高い秀才揃いということになる。
だが、そうした考えは、もはや時代遅れであるようだ。
カナダ、マウント・ロイヤル大学の心理学者ボブ・ウットル[https://www.researchgate.net/profile/Bob-Uttl]氏らは、大学生の知能が本当に並外れて高いのか知るために、1939~2022年に行われた大学生の知能テストの結果を調査。その結果をResearch Gateに投稿した[https://www.researchgate.net/publication/378377530_Meta-analysis_On_average_undergraduate_students]。
それによると、1939年のIQは平均119と、当時の大学生の頭脳がかなり傑出したものであることがわかったという。ところが、それは年を追うごとに着実に低下し、現在では102にまで下がってしまっていたのだ。
人口全体の平均IQは100だ。つまり現在の大学生の知能は、ごく普通の人とほぼ変わらないということになる。
なぜ大学生の知能は低下したのか?
いったいなぜ、大学生のIQは低下しているのか?実は大学生のIQが低下するというイメージとは裏腹に、その背景にはいい側面もある。要は過去80年で教育水準が向上したのだ。
かつて大学は一握りの秀才だけが入学するところだった。だが今、大学を卒業することは、1940年代に高校を卒業することより普通になった。
誰もが通えるようになれば、大学生の知能が平均的なものになるのは当然のことだ。
こうした傾向は大卒であることが、いい仕事につき、幸せな人生を送るための資格のように扱われていることとも関係する。
学生ローンが簡単に利用できるようになったこともあり、学生は借金をしてでも、自分を有利にする資格を手に入れようと大学を目指す。
アメリカの大学では卒業率も低下
大学の門戸が大勢の人に開かれたことは素晴らしいことながら、危惧すべきこともある。
Big Think[https://bigthink.com/thinking/iq-score-average-college-students/]が全米学生情報センターの統計として説明するところによると、アメリカではせっかく大学に入っても、6年以内に卒業できる学生は全体の58%だけなのだという。
そして悪いことに、学生のIQが低いほど、卒業できず退学してしまう確率が高くなる。
IQが平均よりほんの少し高いだけの白人アメリカ人だと、大学を卒業できる確率は実質的に五分五分になる。
そうしたIQが低い大学生は、奨学金を借りてまで大学に入ったのに卒業できず、結局借金だけが残ることになる。
あくまでアメリカの話だが、ごく普通の知能の持ち主にとって、大学に入学するというのは、ある意味半丁博打のようなものなのだ。
大学に行く価値
だとするなら、借金してまで大学に行くというのは、学生にとっても、大学や企業にとっても本当に意味があることなのだろうか?
最近アメリカでは大学のイメージが、商品を売りつける企業のような感じになっているという。その商品とは、大卒の資格(と、その後に手に入るいい人生)だ。
大学の商売っけは学費にも表れているかもしれない。
たとえば1980年当時、アメリカの大学の学費は年1万231ドル(約150万円)だった。それから30年後、それは2万8775ドル(420万円)に上昇した。
これはインフレ調整後の数字なので、物価の影響を考慮したとしても、学費はどんどん吊り上げられているということだ。
それだけのお金を支払ってでも大学に行く価値があるか、それが問題だ。
今の大学生のレベルに合わせた教育カリキュラムが必要
ウットル氏らはこうした状況を鑑み、大学は現在の学生がかつてのように秀才揃いでないことを認識し、それに合わせた教育カリキュラムを用意するべきだと主張する。
また企業に対しても、大卒だからといって必ずしも優秀とは限らないことを知るべきだと述べている。
皮肉なことに、企業が大卒ばかりを求めるほどに、それは当たり前になり、ごく普通の人材しか集まらなくなったのだ。
そして大学の価値が空洞化しつつある今、学生もそのことを自覚し、高い学費を払ってまで大学に行くべきなのかよく考えるべきだという。
だが言われなくとも、若い人たちは行動に移しているようだ。
アメリカの大学入学者数は、2015年の1660万人から2021年の1440万人に減少。
ウォール・ストリート・ジャーナルなどによる昨年の世論調査によると、アメリカ人の56%が大学に通うのは費用に見合わないと考えているそうだ。
日本の教育システムの場合だとIQではなく偏差値で評価されるのであまりピンとこないが、偏差値の場合は相対評価で、平均スコアを50とし、50より高ければ平均より上、50より低ければ平均より下と判断される。
References: Bigthink[https://bigthink.com/thinking/iq-score-average-college-students/] / Realclearscience[https://www.realclearscience.com/blog/2024/01/23/why_college_students_average_iq_has_fallen_17_points_since_1939_1006608.html]
本記事は、海外の記事を参考にし、日本の読者向けに独自の考察を加えて再構成しています。











