小惑星衝突前に恐竜は衰退していなかった。新種の恐竜の発見で裏付けられる
 新たに発見された恐竜「地獄のファラオの夜明けのニワトリ」と呼ばれている、エオネオフロン・インフェルナリス(Eoneophron infernalis)の分析によると、彼らは小惑星の衝突前から衰退していたわけではなかったことが裏付けられたそうだ。

 6600万年ほど前、小惑星が地球に衝突し、地上を支配していた恐竜の時代が終わったが、これまでの説によると、恐竜はこのイベント以前にすでに全盛期を終えており、衰退していたという。


 恐竜は小惑星衝突前に、すでに絶滅へ向かっていたのか? これは研究者たちが40年以上も議論を交わし、いまだ決着がつかないテーマだ。

 だが『PLOS ONE』(2024年1月24日付)で報告された新発見は、恐竜はまだまだ衰退などしていなかっただろうことを示している。

小惑星衝突前に恐竜は衰退していたとする説 そもそもなぜ恐竜はとうに衰退しつつあり、小惑星はトドメの一撃に過ぎないなどと考えられるようになったのか?

 その理由は、8360万~7120万年前にかけて恐竜のバラエティが豊かになっているのに対し、白亜紀の最後の数百万年間ではそれが乏しくなっているように見えるからだ。

 このことは、小惑星の衝突で地上が大混乱に陥る前から恐竜は数を減らし、絶滅へと歩み始めていたのではと疑わせる。

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photo by iStock本当に衰退していたのか? だがこの説に反論する声もある。

 恐竜は衰退などしていなかったという立場からは、恐竜の多様性が低下しているように見えるのは、これまでに発見された化石に偏りがあることが原因だと説明される。

 恐竜学者にとって、大昔の生き物の様子を知るためのもっとも重要な手掛かりは恐竜の化石だ。

 だが、恐竜たちが暮らしていた環境によっては、化石になりにくいところもあっただろう。またせっかく化石になってくれたとしても、その地層がそう簡単に調査できないようなところなら、お宝は発掘されない。

 だからこれまでに発掘されてきた化石は、恐竜時代のすべてを反映したものではなく、当時の様子を部分的にしか伝えてないというのだ。

 本当のところはどうなのか? それは40年も議論され、いまだに結論が出ていない大きな謎だ。だが今回の研究は、真実を知るヒントになるかもしれない。


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photo by iStockこれまで知られていない新種の恐竜を発見 オクラホマ州立大学の研究チームは、サウスダコタ州ヘルクリーク累層の岩石から発掘された、白亜紀最後の200万年間を生きた恐竜の化石を調べていた。

 それは大腿骨・脛骨・2本の中足骨でなる4本の骨で、「カエナグナトゥス科」の仲間だろうと考えられた。歯のないクチバシ、長い脚と短い尾を持つ鳥のような姿が特徴の恐竜だ。

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発掘された大腿骨の化石を調べるカイル・アトキンス・ウェルトマン氏 / image credit:Kyle Atkins-Weltman

 これまでの研究では、その時代にヘルクリークで生きていたカエナグナトゥス科の仲間はオヴィラプトロサウルス類の「アンズー」しか確認されていない。

 その化石はかなり小さかったので、アンズーの子供だと思われた。化石には大人のアンズーとは解剖学的に少々違うところもあったが、それも子供ゆえの特徴なのだろうと考えられた。

 ところがだ。化石の年齢を調べてみたところ、それは子供ではないことがわかったのだ。

 骨には木の年輪のような成長の痕跡が残るので、これを調べれば年齢を知ることができる。そしてその化石の年輪は、紛れもなく大人であることを告げていた。

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青い矢印は、骨に残された成長の痕跡を示す。外側のものほど幅が狭く、すでに成長を終え、大人であることをうかがわせる/Holly Woodward

 つまり、その化石はアンズーではなく、これまで知られていないカエナグナトゥス科の新しい仲間だったということだ。


 羽毛におおわれ、体重200~340kgもあったこの新属・新種の恐竜は「エオネオフロン・インフェルナリス(Eoneophron infernalis)」と名付けられた。

 この名は「地獄のファラオの夜明けのニワトリ」という意味で、アンズーのニックネームである「ヘル・チキン(地獄のニワトリ)」にちなんだものだ。白亜紀後期の恐竜の多様性は低下していない この発見は、まだほかのカエナグナトゥスがいるのではないかという疑念を抱かせた。

 そこで研究チームは、これまでアンズーとされてきたほかの化石も調べ直してみることにした。すると案の定、3番目の新種が見つかったのだ。

 こうして白亜紀後期のヘルクリーク周辺では、少なくとも3種のカエナグナトゥスの仲間が生息していただろうことが判明した。

 1匹はグリズリーにも匹敵する体重の大型のアンズー、1匹は人間くらいの中型のエオネオフロン、そして1匹はジャーマンシェパードに近い小型カエナグナトゥス科(名前はまだない)だ。

 これは重要なことだ。というのも、こうした化石をカナダにあるダイナソーパーク累層(7650万~7440万年前の地層)のものと比べてみると、それより前の時代から恐竜の多様性が低下していたとは決して言えないからだ。

 カエナグナトゥス科の仲間について言えば、種類だけでなく、体の大きさのバラエティもさほど変わらない。

 大型のアンズーはカエナグナトゥスに相当するし、中型のエオネオフロンはキロステノテスに相当、3番目の小型の種ならシチペスに相当する。

 このことは、白亜紀後期において、このグループが安定していたことを示している。
恐竜の多様性は衰えていなかったことがうかがえるのだ。

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ヘルクリークに存在したカエナグナトゥスは、これまで1種とされてきたが、このほど3種いたことが明らかになった/Zubin Erik Dutta

 こうした新事実は、白亜紀後期に恐竜の多様性が低下しているように見えるのは、発掘される化石に偏りがあるからだという説を支持するものだ。

 それが正しいのなら、小惑星の衝突は滅びつつあった恐竜へのトドメの一撃ではなく、一発でKOするような強烈なパンチだったということになる。

追記:(2024/01/29)本文を一部訂正して再送します。
References:A new oviraptorosaur (Dinosauria: Theropoda) from the end-Maastrichtian Hell Creek Formation of North America | PLOS ONE / A newly identified ‘Hell chicken’ species suggests dinosaurs weren’t sliding toward extinction before the fateful asteroid hit / written by hiroching / edited by / parumo

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