腐敗した人間の死体に共通点、遺体を分解する時だけに現れる微生物グループの存在
 人間の遺体が腐敗する様子を観察した研究者によると、遺体にはおよそ普遍的と思えるようなある共通点があるのだという。それは死体だけに見られる微生物の存在だ。


 そうした細菌や真菌のような分解者たちは、死体以外の環境ではかなり稀な存在だ。ところが死体があるところには、なぜだか必ずいるのである。

 遺体を分解する時に現れる、死肉の腐敗にたずさわる微生物グループは、犯罪捜査の際、遺体の正確な死亡時刻を割り出すのに役に立つ可能性もあるという。

肉はなぜ腐るのか? どんなに大切な人の亡骸だろうと、スーパーで買った美味しそうなお肉であろうと、そのまま放置しておけばだんだんと腐っていく。

 それは目に見えない微生物が、遺体の有機物を消費するからだ。これが「腐敗」であり、水のような物理的な作用によって遺体が分解されるのとは異なる。

 ゆえにそこには腐敗の生態系が存在する。こうした生態系は、主に遺体をエサとして消費しているが、繁殖や住処として利用することもある。

 人間にとっては不快なことかもしれない。だが、これは死体をリサイクルするという生命の大切な営みであって、植物の成長や土壌の呼吸のような中核的な生態系機能を動かす原動力となっている。

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photo by Unsplash36体の人間の遺体の腐敗過程を観察 このように重要な営みであるにもかかわらず、腐敗の生態系はほとんど”ブラックボックス”のままだ。

 そしてそのことが、もっと大きな生態系の機能や回復力、さらには生物地球化学的な炭素・栄養収支といったことの正確な理解を難しくしている。


 そこでコロラド州立大学をはじめとする研究チームは、腐敗の生態系を詳しく知るために、法医学人類学施設で36体の人間の遺体が腐っていく様子を観察することにした。死体を分解する時のみ現れる微生物グループ その結果明らかになったのが、人間の遺体には普遍的ともいえるような微生物グループが存在することだ。

 その微生物たちは、どこで、いつ埋葬されようと、どの遺体にも必ずいるのである。

 面白いのは、このグループは遺体のないところではほとんど存在しない。人間であれ動物であれ、彼らがいるのは腐らせがいのある肉があるところだけだ。

 生きている人間にはいないのなら、こうした微生物は果たしてどこからやってくるのだろう? 研究チームは、おそらくは昆虫が運び屋になっているのだろうと推測している。

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photo by iStock犯罪捜査の有効な手がかりを得られる可能性 死体だけに潜む微生物たちは、死体同士の意外な共通点であるだけでなく、犯罪捜査などにも重要な手掛かりになる可能性があるという。

 たとえば、この研究では、機械学習モデルで腐敗にかかわる微生物の時系列を分析することで、遺体が死後どれくらいの時間が経過しているのか、死亡時刻を正確に推定することに成功したそうだ。

 この研究は『Nature Microbiology』(2024年2月12日付)に掲載された。

References:Groundbreaking study on decomposing microbes | EurekAlert! / Decomposing Human Corpses Have Been Found To Share One Curious Characteristic | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

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