
それは、超巨大な生殖器を持つネズミの解剖図的なもので、内容も意味不明だ。
この論文を掲載した出版社「Frontiers」社は懸念を表明しており、最終的にこの論文は、Frontiers社によって撤回され、謝罪文が掲載された。
学術誌に掲載されてしまった異様に巨大イチモツを持つラットの画像 問題の論文は、中国、西安紅会医院の研究チームが2月13日に『Frontiers in Cell and Developmental Biology』で発表したもの。
題名を「Cellular functions of spermatogonial stem cells in relation to JAK/STAT signaling pathway(精原幹細胞の細胞機能とJAK/STATシグナル伝達経路との関連)」という。
まず目につくのは、ラットの解剖図らしきものだ。
ぱっと見、異様なまでのイチモツの巨大さに目を奪われるが、詳しく見てみても「dissilced」「Stemm cells(stem cellsだと思われる)」「iollotte sserotgomar」「dck」など、意味不明な説明ラベルが貼られている。
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巨大なイチモツがそびえるラット。説明ラベルは意味不明だ / image credit:Guo et al / Frontiers in Cell and Developmental Biology ( CC BY 4.0 )論文に使用されているでおかしなAI生成画像は他にも デタラメな図はほかにもある。図2は、複雑なシグナル伝達経路の作用を表したものであるようだが、ゴチャゴチャしているうえに、ラットの解剖図と同じく、意味不明な単語と難解なイラストだらけだ。
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シグナル伝達経路の作用を表したらしき図説。だが、こちらも解読は困難 / image credit:Guo et al / Frontiers in Cell and Developmental Biology ( CC BY 4.0 )
図3は、図2のシグナル伝達経路が精原幹細胞を制御する様子を視覚化したものと思われるが、これまでと同様、意味不明だ。
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シグナル伝達経路が精原幹細胞を制御する様子を視覚化したものらしい / image credit:Guo et al / Frontiers in Cell and Developmental Biology ( CC BY 4.0 )なぜこれが査読される学術誌の審査をパスしたのか? さまざまな研究者が、このようなあからさまにひどいAI生成画像が、きちんと査読される学術誌の審査をパスできたことに、驚きと落胆を表明している。
また、画像どころか、論文自体もAIが作成した疑いがある。
といのも、AI検出アプリでチェックした結果、AIによって作成された可能性が高いと診断されたという報告があるからだ。ただしこのアプリはそれほど精度が高いわけではないらしく、確かなことまでは不明だ。
今回の論文は、極端な事例かもしれないが、そもそもこのような論文が提出されること自体、学術界において深刻化する問題を浮き彫りにしているかもしれない。
結果的にこの論文は、掲載した『Frontiers』が記事を撤回し、正式に謝罪を表明した。研究者の評価システムとAIの抜け穴 研究者の成功は、どれだけ研究を発表できたかに大きく左右される。できるだけ多くの論文を、できるだけ頻繁に、一流の権威ある学術誌に掲載する。
こうしたことが、研究者としての評価につながってくる。
だが研究者の評価が論文の量によって決まる以上、多少クオリティが低い論文だったとしても、AIで手っ取り早く作り、どんどん発表してしまおうと思ってしまうのも無理からぬことかもしれない。
AIが作成した論文(ちなみにAIによるAIについての論文もある)は過去にも発表されたことがあるが、こうしたAIの乱用は研究の信頼性を損なわせてしまうのではと、関係者は懸念している。
実際、出版業界はこの問題に対処するため、AIが生成した文章を対象とする新しいガイドラインを定めた。だが今回の件が示すように一筋縄ではいかないようだ。
References:Scientists aghast at bizarre AI rat with huge genitals in peer-reviewed article | Ars Technica / Study Featuring AI-Generated Giant Rat Penis Retracted, Journal Apologizes / written by hiroching / edited by / parumo
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