音楽と数学の才能に関連性はあるのか?科学的根拠を探る
 音楽と数学、一見するとまったく異なる分野に思えるが、数学が得意な人は音楽も得意な場合も多く、その逆もしかりと考えられている。

 実際に歴史上の人物と照らし合わせてみても、数学が得意な音楽家や、音楽家としても活躍した数学者は多い。
数学と音楽に何か関連性はあるのだろうか?

 トルコのアイチャ・アクン博士は、最近の研究で音楽と数学のつながりについて探ったところ、音楽を応用することで数学の成績を向上させることが可能なことがわかったという。

 だが音楽と数学にどんな結びつきがあるというのだろう? 以下では、音の世界と数の世界を結びつける不思議な共通点について見ていこう。

数学者で音楽家、音楽家で数学者は意外といる 数学の素養がある著名な音楽家はたくさんいるし、その反対に作曲や演奏が得意な科学者もたくさんいる。

 例えば、存命の人物なら、伝説的なロックバンド「クイーン」のギタリスト、ブライアン・メイは、天体物理学の博士号持ちだ。

 テレビやラジオの科学番組のプレゼンターとして有名な素粒子物理学者ブライアン・コックスは、90年代のロックバンド「D:Ream」(全英シングルチャートで1位を取ったこともある人気バンドだ)でキーボードを弾いていた。

 もっと昔なら、天王星を発見した功績で知られるウィリアム・ハーシェルは、音楽教師をしたり、楽団を率いていたこともあり、数々の楽曲を生み出した。

 さらに過去へさかのぼれば、古代ギリシアの数学者・哲学者ピタゴラスがいる。

 当時、天文学と音楽はどちらも数学の一分野だと考えられていた。彼はさまざまな数学の定理を発見したが、じつは和音を理解するうえで重要となる音の基礎的な構造(音階の音程に対応する数比)を発見した人物でもある。

 数学者でありながら音楽家として、あるいは音楽家でありながら数学者として生きた人物がこれほどまでいるのなら、もしかしたら数学と音楽には何か根本的なつながりがあるのかもしれない。

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音楽と数学の共通点 トルコ、アンタルヤ・ベレク大学のアイチャ・アクン博士は、「この音楽と数学には驚くほどたくさんの共通点があります」と語っている。
記号や対称性について考えてみてください。
どちらも抽象的思考と定量的推論を必要とします。分数や比率は音楽の基本でもあるので、数学を教えるのに音楽はピッタリなのです(アクン博士)
 それどころか、数字から音楽を作ることもできる。
数学は、数と比がすべてです。その数字を音符・リズム・テンポに置き換えれば、音楽になります
 驚いたことに、英インペリアル・カレッジ・ロンドンやエディンバラ大学といった世界的な名門大学では、数学と音楽を同時に学べるコースまであるのだという。

 このように音楽と数学は密接に関係しており、数学な得意な人が音楽も得意、音楽が得意な人は数学も得意、という科学的根拠はあったようだ。

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photo by iStock数学に音楽を取り入れることで学力がアップ ならば気になるのが、音楽と数学を学ぶことが学生にどれほど有益なのかという点だ。アクン博士は、この疑問に答えるため、1975~2022年の半世紀分もの資料にあたってみた。

 そして絞り込まれたのが55本の関連研究だ。それらを合わせると、幼稚園から大学までの学生約7万8000人分のデータになる。

 これらの研究では、学生たちに歌や音楽を聴かせたり、楽器を教えたり、音楽を応用して数学を教えたりして、その効果を実験の前後に行われた数学テストで計測している。

 その結果が伝えているのは、どの方法であっても、音楽は数学テストの成績をアップさせるということだ。

 例えば、定期的に音楽のレッスンを受けた学生の58%、楽器を習った学生の69%において、テストの成績がアップしていた。


 だが、とりわけ効果的だったのが、数学の授業に音楽を組み込む方法だ。この音楽的数学の授業を受けた学生のじつに73%以上で、成績アップが見られたのだ。

 こうしたやり方は、特に年齢が若い方が効果的だったため、早いうちから数学に音楽を取り入れることが大切であるようだ。

 さらに音楽は、ただ数学の理解を助けてくれるだけでなく、数字への不安を軽くする効果があることも確認されている。

 つまりは数字に対してある種の恐怖心を抱いている子供たちが、リラックスして楽しみながら数学を学ぶ手助けをしてくれるという。

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音楽を数学に応用する方法 ならば具体的に、数学の授業にどう音楽を応用すればいいだろうか? アクン博士は、「数学の授業に音楽を取り入れるなら、いろいろなやり方があります」と語る。

 例えば、リズムの違う歌に合わせて手をたたく。数学を応用して、楽器を作ってみる。

 数学の問題を音楽をベースにして解いたり、数学的パターンをベースにして作曲するなんてやり方もあるし、数学を音符などで表現するのもいい。

 こうした方法は、子供たちが数学の重要な概念を理解しやすくなるだけでなく、数学と音楽のつながりを気づかせ、ずっと楽しい学習の雰囲気作りをすることができる。

 「学生たちが数学に夢中になり、楽しい時間を過ごすためには大切な方法でしょう」

 数学はとても大切なスキルだ。将来、その子がどんな職業に就くとしても、そこでの仕事を助けてくれる。


 だから、最初のちょっとした躓きや不安なんてもので数学嫌いにしてしまってはもったいない。そうならないためのツールとして、音楽はピッタリなのだ。

 「数学と音楽は、まったく違う世界のように見えて、じつはとても相性がいいんです」とアクン博士は語っている。

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 じゃあ音楽も数学も嫌いな人はどうすればいいのって話にもなるわけだが、誰にでも好きなことはあるはずだ。好きこそものの上手なれ、ともいわれている。

 好きな分野を徹底的に探究することで、他の分野も伸びしろがあるということなんじゃないだろうか?

 この研究は『tandfonline』誌に掲載された。

References:Let me make mathematics and music together: A meta-analysis of the causal role of music interventions on mathematics achievement: Educational Studies: Vol 0, No 0 - Get Access / Is There Really A Link Between Math Skills And Musical Skills? | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

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