史上初、従来とは異なる特性をもつ超伝導体が自然界に存在することが証明される
 自然には作られないと思われがちだった、通常の超伝導体とは異なる特性を持つ伝導体が、自然界にも存在することが史上初めて証明されたそうだ。

 それは「ミアサイト」という鉱物で、すでに超伝導体として振る舞うことは知られていたが、今回米国エイムズ国立研究のチームが行ったいくつかの検査によって、天然のミアサイトにも非従来型超伝導性があることが証明された。


従来型超伝導体と非従来型超伝導体 「超伝導」とは、ある物質を冷やすと電気抵抗がなくなる現象のことだ。このとき、電気はこの「超伝導体」をエネルギーを失うことなく、永遠に流れることができる。

 この特徴は非常に有用なもので、たとえば病院のMRI・リニアモーターカー・粒子加速器・量子コンピュータなど、さまざまなものに応用されている。

 以前、ある物質を超伝導体とするには、それをマイナス200度近くにまで冷やさねばならなかった。

 ところが1980年代、銅酸化物超伝導体が発見されたことで、それまでよりももっと高い温度で超伝導を引き起こせるようになった。

 こうした物質を、従来の超伝導体とは異なる特性を持つという意味で「非従来型超伝導体」という。これまで自然界に非従来型超伝導体は存在しないとされていた だが、そうした物質はいずれも人工的に作られたもので、天然物が発見されたことはなかった。

 米国エイムズ国立研究所のルスラン・プロゾロフ氏は、「この事実のおかげで、非従来型超伝導は自然現象ではないというイメージが作られました」と説明する。

 同氏によると、ほとんどの超伝導物質は金属であるため、酸素のような元素とすぐに反応してしまう。だから自然界では超伝導体がなかなか見つからないのだという。

 だが今回、ミアサイトと同じ化学式を持つ合成サンプル「Rh17S15」に、非従来型超伝導体としての性質があることが明らかになった。

 それは自然界にも非従来型超伝導体があるという決定的な証拠だ。


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image credit:Communications Materials非従来型超伝導体の性質を確認 非従来型超伝導体であるかどうか調べるには、いくつかのやり方がある。

 その1つは、磁場が超伝導体の表面から侵入できる距離(磁場侵入長)を調べることだ。

 従来の超伝導体では、低温ならば基本的にこの長さは一定だ。ところが非従来型超伝導体では温度によって変化する。

 検査対象にあえて”キズ”をつけるという検査法もある。

 より具体的には、検査対象に高エネルギーの電子をぶつける。すると、そこにあったイオンが弾き飛ばされ、結晶構造に欠陥が生じる。

 従来の超伝導体は非磁性的な乱れにそれほど反応しないので、キズがついても臨界温度(超伝導現象が起きる温度)に大きな変化は見られない。

 一方、非従来型超伝導体はこうした乱れに反応し、このキズによって臨界温度や臨界磁場が変化する。

 そしてRh17S15はこうした検査で非従来型超伝導体としての振る舞いを見せたのだ。それは自然界にも非従来型超伝導体が存在するという決定的な証拠となる。

 こうした非従来型超伝導体の研究は、超伝導体が機能するメカニズムを理解する上で大切なことだ。


 「非従来型超伝導の背後にあるメカニズムを解明することが大切なのは、超伝導を経済的に正しく応用するための鍵となるからです」(プロゾロフ博士)

 この研究に『Communications Materials』(2024年2月17日付)に掲載された。

References:Physicists Identify First Unconventional Superconductor with Composition Also Found in Nature | Sci.News / Scientists reveal the first unconventional superconductor that can be found in mineral form in nature / written by hiroching / edited by / parumo

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