
考古学者、歴史家、タトゥーアーティストたちの国際チームが、あの有名な5300年前のミイラ、アイスマン(エッツィ)のタトゥーと、現代人の皮膚に施されたタトゥーを比較してみた。
さらに研究者は体を張って、自らの体に様々な手法でタトゥーを彫る実験も行った。
その結果、アイスマンの多くのタトゥーは、一部の研究者が示唆したように皮膚を切るのではなく、先端が尖った錐(きり)のような道具を使い、現在でも一般的に使用されているタトゥー技法の「手彫り」で彫られていたことがわかったそうだ。
5300年前を生きたアイスマンの体に刻まれた多数のタトゥー アイスマン(エッツィ)は、1991年にイタリアアルプスでハイカーによって発見された。見事に保存されたその遺体から、彼はおよそ5300年前に背中に受けた矢の傷が原因で亡くなったことが判明した。
さらに、エッツィの体には腰、腹、下肢、左手首など、61のタトゥーがあり、これらがどうやって彫られたのか、研究者たちは疑問に思っていた。
これまでの研究では、先端のとがった道具で手で突く、皮下タトゥー、手で叩く、切開するといった4つの可能性が指摘されていた。
タトゥーの多くは短くまっすぐなラインであることから、鋭利な石などで皮膚を切り開き、灰などの着色料を入れる切開方法で彫られた可能性が高い。
研究チームはこれを裏付けるより強力な証拠を探し求めた。
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タトゥーアーティストのモコヌイアランギ・スミス氏が、イノシシの牙の櫛を使ってダニー・ライデン氏の太腿にタトゥーを入れているところ。「ハンド・タッピング」というこのやり方は、柄が斜めについた鋭利な道具を第二の道具を使って皮膚に打ち込む。こうしたタトゥー技術は、アウストロネシア語族との関係が深く、環太平洋南部と東南アジア内陸部の狭い地域に限定されている / image credit: European Journal of Archaeology (2024)。DOI: 10.1017/eaa.2024.5研究者が自分の体にタトゥーを彫る実験を行う 研究チームは、タトゥーアーティストの協力を得て実験を行った。これら4つのテクニックを使って、エッツィのタトゥーに似た模様を実際に自分の皮膚に彫ってみたのだ。
傷が癒えてから、タトゥーのクローズアップを撮影して、エッツィのものと比較してみた。
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Mystery Of Otzi the Iceman's Tattoos Finally Solved By Scientists道具を使って手彫りでタトゥーを入れていたことが判明 手を使って先端が尖った道具で突く方法で入れたタトゥーが、もっともエッツィのものと似ていることがわかり、エッツィも5000年以上前にこのやり方で彫られた可能性がもっとも高いと判断された。
この方法は現代の「手彫り」と呼ばれる手法とほぼ同様で、道具の先端を錐のように尖らせて着色インクに浸す。その先端を皮膚に差し込み、インクを注入する。道具を取り除くと、インクは皮膚にそのまま残る。
こうしたやり方でラインを入れるにはたくさんの刺し傷が必要で、新しい突き傷は前の傷にすぐ隣りあうことになり、結果的に小さな円形の傷が連なって一本のラインになる。
実験的に入れた新しいタトゥーとエッツィのタトゥーの両方とも、同じような状態になっているのが観察された。
古代入れ墨の専門家で研究の筆頭著者であるデター・ウルフ氏は、手彫りの刺青の線の形は、使用した針先の形によって決まるという。
エッツィの刺青は、針で開ける穴よりも少し大きい、革に穴を開ける道具である錐(きり)のようなもので彫られたと推測している。
このことは、古代のタトゥー用の錐が通常の道具として誤って分類されている可能性があることを意味するという。
現代のタトゥーは手彫りと機械彫りの2種類があり、日本にも和彫りと呼ばれる、彫り師が手彫りで美しい絵を彫りこんでいく技術がある。
この研究は『European Journal of Archaeology』(2024年3月13日付)に発表された。
References:New evidence suggests Otzi the Iceman's tattoos were made using a single-pointed tool / Otzi the Iceman used surprisingly modern technique for his tattoos 5,300 years ago, study suggests / Examining the Physical Signatures of Pre-Electric Tattooing Tools and Techniques | EXARC / written by konohazuku / edited by / parumo
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さらに研究者は体を張って、自らの体に様々な手法でタトゥーを彫る実験も行った。
その結果、アイスマンの多くのタトゥーは、一部の研究者が示唆したように皮膚を切るのではなく、先端が尖った錐(きり)のような道具を使い、現在でも一般的に使用されているタトゥー技法の「手彫り」で彫られていたことがわかったそうだ。
5300年前を生きたアイスマンの体に刻まれた多数のタトゥー アイスマン(エッツィ)は、1991年にイタリアアルプスでハイカーによって発見された。見事に保存されたその遺体から、彼はおよそ5300年前に背中に受けた矢の傷が原因で亡くなったことが判明した。
さらに、エッツィの体には腰、腹、下肢、左手首など、61のタトゥーがあり、これらがどうやって彫られたのか、研究者たちは疑問に思っていた。
これまでの研究では、先端のとがった道具で手で突く、皮下タトゥー、手で叩く、切開するといった4つの可能性が指摘されていた。
タトゥーの多くは短くまっすぐなラインであることから、鋭利な石などで皮膚を切り開き、灰などの着色料を入れる切開方法で彫られた可能性が高い。
研究チームはこれを裏付けるより強力な証拠を探し求めた。
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タトゥーアーティストのモコヌイアランギ・スミス氏が、イノシシの牙の櫛を使ってダニー・ライデン氏の太腿にタトゥーを入れているところ。「ハンド・タッピング」というこのやり方は、柄が斜めについた鋭利な道具を第二の道具を使って皮膚に打ち込む。こうしたタトゥー技術は、アウストロネシア語族との関係が深く、環太平洋南部と東南アジア内陸部の狭い地域に限定されている / image credit: European Journal of Archaeology (2024)。DOI: 10.1017/eaa.2024.5研究者が自分の体にタトゥーを彫る実験を行う 研究チームは、タトゥーアーティストの協力を得て実験を行った。これら4つのテクニックを使って、エッツィのタトゥーに似た模様を実際に自分の皮膚に彫ってみたのだ。
傷が癒えてから、タトゥーのクローズアップを撮影して、エッツィのものと比較してみた。
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Mystery Of Otzi the Iceman's Tattoos Finally Solved By Scientists道具を使って手彫りでタトゥーを入れていたことが判明 手を使って先端が尖った道具で突く方法で入れたタトゥーが、もっともエッツィのものと似ていることがわかり、エッツィも5000年以上前にこのやり方で彫られた可能性がもっとも高いと判断された。
この方法は現代の「手彫り」と呼ばれる手法とほぼ同様で、道具の先端を錐のように尖らせて着色インクに浸す。その先端を皮膚に差し込み、インクを注入する。道具を取り除くと、インクは皮膚にそのまま残る。
こうしたやり方でラインを入れるにはたくさんの刺し傷が必要で、新しい突き傷は前の傷にすぐ隣りあうことになり、結果的に小さな円形の傷が連なって一本のラインになる。
実験的に入れた新しいタトゥーとエッツィのタトゥーの両方とも、同じような状態になっているのが観察された。
古代入れ墨の専門家で研究の筆頭著者であるデター・ウルフ氏は、手彫りの刺青の線の形は、使用した針先の形によって決まるという。
エッツィの刺青は、針で開ける穴よりも少し大きい、革に穴を開ける道具である錐(きり)のようなもので彫られたと推測している。
このことは、古代のタトゥー用の錐が通常の道具として誤って分類されている可能性があることを意味するという。
現代のタトゥーは手彫りと機械彫りの2種類があり、日本にも和彫りと呼ばれる、彫り師が手彫りで美しい絵を彫りこんでいく技術がある。
この研究は『European Journal of Archaeology』(2024年3月13日付)に発表された。
References:New evidence suggests Otzi the Iceman's tattoos were made using a single-pointed tool / Otzi the Iceman used surprisingly modern technique for his tattoos 5,300 years ago, study suggests / Examining the Physical Signatures of Pre-Electric Tattooing Tools and Techniques | EXARC / written by konohazuku / edited by / parumo
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