
物を落とせば壊れるのが常識だ。だがこのほど発明された新素材は、叩いて強い衝撃を与えたり、引きのばしたりするほど丈夫になる。
こうした「適応耐久性」は、高い負荷がかかる状況で使われる素材にはとても大切なことだ。今回の素材も、この点がとても優れており、さまざまな応用が考えられる。
だがそんな小難しいことに触れずとも、料理に使われるコーンスターチをモデルにしていたり、”絡まったスパゲッティが入ったボウルの中のミートボール”と評されるなど、新素材はとてもユニークだ。
なんだかお腹が空いてきたら、どんな素材なのかもう少しのぞいてみよう。
コーンスターチの不思議な性質がヒント このユニークな新素材は、握れる液体と言われるコーンスターチ(トウモロコシから作られるデンプン)がヒントになっている。
たとえば砂に水をくわえて混ぜてみても、混ぜる速さで粘り気に違いが出ることはない。
だが同じことをコーンスターチやると、ゆっくり混ぜれば液体のようだし、パンっと叩くと固体のようになる(この実験を見れば、その奇妙さがわかるはずだ)。
コーンスターチの小さな粒子は、ゆっくり混ぜれば、それぞれがはじき合って液体のようになる。一方、素早い力を受けると粒子同士が接触し、その摩擦で固体のようになる。
これがコーンスターチの不思議な性質の秘密だ。
[動画を見る]
叩くと硬くなるポリマー素材 カリフォルニア大学マーセド校の研究チームは、こうしたコーンスターチの性質を、ポリマー素材で再現しようと考えた。
そのために採用されたのが、「共役系ポリマー」だ。
一般に共役系ポリマーは、分子を組み合わせることで作られる。そこで研究チームは、長い分子(poly(2-acrylamido-2-methylpropanesulfonic acid))、短い分子(ポリアニリン)、効率的な導電体であるPEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) polystyrene sulfonate)を組み合わせた。
こうして出来上がったフィルムは、衝撃が素早いほど丈夫になる。
つまり適応耐久性がきわめて高いのだ。PEDOT:PSSを10%増やせば、適応耐久性と導電性の両方をさらにアップさせることもできる。
[画像を見る]
Image credig :Yue Wang絡まるスパゲッティが入ったボウルの中のミートボール 研究チームによるなら、プラスの電荷を帯びた2つのポリマーと、マイナスの電荷を帯びた2つのポリマーが合わさることで、新素材はまるで「絡まるスパゲッティが入ったボウルの中のミートボール」のような極小構造を持つのだという。
このミートボールは、衝撃を受けてもバラバラになることなくそれを吸収し、材料とその導電性を保ってくれる。これが新素材の適応耐久性の秘密だ。
その後の実験では、プラスの電荷を帯びたまた別のナノ粒子(1,3-propanediamine nanoparticle)を加えることで、”ミートボール"がわずかに弱まり、”スパゲッティ"は強化されることがわかった。
つまりはより大きな衝撃を吸収し、かつ壊れにくくなるということだ。
[動画を見る]
Flexible electronic polymers for smart devices様々なものに応用可能 こうしたことはどれも複雑でテクニカルなものだが、これを大量生産できれば、スマートウォッチバンド、ウェアラブルセンサー、ヘルスモニター(たとえば心臓や血管の健康管理、血糖値の測定)など、さまざまなものに応用できると期待される。
またもう1つの応用案として、個人向けの電子義肢も提案されており、こちらは現在実験が行われている最中だ。いずれは今回の新素材から義肢が3Dプリントされることもあるかもしれない。
ワン・ユエ氏は「さまざまな応用の可能性があり、この新しい型破りな性質が私たちをどこへ導いてくれるのか、とても楽しみです」と語る。
この研究は、2024年度春のアメリカ化学会で発表された。
References:Hitting this stretchy, electronic material makes it tougher - American Chemical Society / Scientists Invented a Bizarre New Material That Gets Tougher When You Hit It : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
こうした「適応耐久性」は、高い負荷がかかる状況で使われる素材にはとても大切なことだ。今回の素材も、この点がとても優れており、さまざまな応用が考えられる。
だがそんな小難しいことに触れずとも、料理に使われるコーンスターチをモデルにしていたり、”絡まったスパゲッティが入ったボウルの中のミートボール”と評されるなど、新素材はとてもユニークだ。
なんだかお腹が空いてきたら、どんな素材なのかもう少しのぞいてみよう。
コーンスターチの不思議な性質がヒント このユニークな新素材は、握れる液体と言われるコーンスターチ(トウモロコシから作られるデンプン)がヒントになっている。
たとえば砂に水をくわえて混ぜてみても、混ぜる速さで粘り気に違いが出ることはない。
だが同じことをコーンスターチやると、ゆっくり混ぜれば液体のようだし、パンっと叩くと固体のようになる(この実験を見れば、その奇妙さがわかるはずだ)。
コーンスターチの小さな粒子は、ゆっくり混ぜれば、それぞれがはじき合って液体のようになる。一方、素早い力を受けると粒子同士が接触し、その摩擦で固体のようになる。
これがコーンスターチの不思議な性質の秘密だ。
[動画を見る]
叩くと硬くなるポリマー素材 カリフォルニア大学マーセド校の研究チームは、こうしたコーンスターチの性質を、ポリマー素材で再現しようと考えた。
そのために採用されたのが、「共役系ポリマー」だ。
このポリマーには、比較的柔らかくしなやかでありながら、電気を通しやすいという特徴がある。
一般に共役系ポリマーは、分子を組み合わせることで作られる。そこで研究チームは、長い分子(poly(2-acrylamido-2-methylpropanesulfonic acid))、短い分子(ポリアニリン)、効率的な導電体であるPEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) polystyrene sulfonate)を組み合わせた。
こうして出来上がったフィルムは、衝撃が素早いほど丈夫になる。
つまり適応耐久性がきわめて高いのだ。PEDOT:PSSを10%増やせば、適応耐久性と導電性の両方をさらにアップさせることもできる。
[画像を見る]
Image credig :Yue Wang絡まるスパゲッティが入ったボウルの中のミートボール 研究チームによるなら、プラスの電荷を帯びた2つのポリマーと、マイナスの電荷を帯びた2つのポリマーが合わさることで、新素材はまるで「絡まるスパゲッティが入ったボウルの中のミートボール」のような極小構造を持つのだという。
このミートボールは、衝撃を受けてもバラバラになることなくそれを吸収し、材料とその導電性を保ってくれる。これが新素材の適応耐久性の秘密だ。
その後の実験では、プラスの電荷を帯びたまた別のナノ粒子(1,3-propanediamine nanoparticle)を加えることで、”ミートボール"がわずかに弱まり、”スパゲッティ"は強化されることがわかった。
つまりはより大きな衝撃を吸収し、かつ壊れにくくなるということだ。
[動画を見る]
Flexible electronic polymers for smart devices様々なものに応用可能 こうしたことはどれも複雑でテクニカルなものだが、これを大量生産できれば、スマートウォッチバンド、ウェアラブルセンサー、ヘルスモニター(たとえば心臓や血管の健康管理、血糖値の測定)など、さまざまなものに応用できると期待される。
またもう1つの応用案として、個人向けの電子義肢も提案されており、こちらは現在実験が行われている最中だ。いずれは今回の新素材から義肢が3Dプリントされることもあるかもしれない。
ワン・ユエ氏は「さまざまな応用の可能性があり、この新しい型破りな性質が私たちをどこへ導いてくれるのか、とても楽しみです」と語る。
この研究は、2024年度春のアメリカ化学会で発表された。
References:Hitting this stretchy, electronic material makes it tougher - American Chemical Society / Scientists Invented a Bizarre New Material That Gets Tougher When You Hit It : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
編集部おすすめ