
完全生成AIによる記念すべき第1作目のタイトルは「Next Stop Paris」で、パリを舞台にしたラブロマンスなんだそうだが、現時点でフルAIでどこまで違和感のない作品ができるのだろうか?
その予告編とやらを見せていただこうじゃないか。
「Next Stop Paris」予告編 まずは先入観も予備知識もなしに、この映像を見てほしい。1分間の短い予告編だが、これを見てどんな感想を抱くだろうか。
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Next Stop Paris Trailer Digital
ストーリーは、結婚式の当日に新郎に捨てられた女性が、傷心を抱えてパリへ向かう列車の中で、別の男性と出会って新たなロマンスが…みたいな話らしい。
こちらが主人公のクレアさん。
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ん? クレアさん、別人になってない? 男性の方もどこを見ているかわからないし、なんだかパースもおかしいし。
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時計の文字盤もでたらめである。うん、これは異世界のパリなんだな。
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今回の映画は、画像や文章から動画を作成するRunway MLと、MidjourneyやStable Diffusionといった画像生成AIを組み合わせて制作したものらしい。
この映画は、中国の電気機器メーカーTCL傘下のコンテンツ制作会社TCLtv+スタジオが製作している。人体構造に対する理解はだいぶ進んだものの…… 満を持して…みたいな感じだったので少しばかり期待してしまったのだが、逆に見た人には「AIってダメダメじゃん」という感想を植え付ける結果となってしまっているようだ。
画像生成AIでは、特定のキャラクターの顔を固定してみたりとか、ポーズを指定できるようになったりとか、この2年でかなりの進歩がみられるのだが、動画の方はまだこれからという印象だ。
とはいえ画像生成の方でも、指がおかしかったり手足の数が変だったり…といったAIならではの、人体構造を理解していないおかしな絵柄は、バージョンアップしても相変わらず健在である。
一見まともに見えても、指も腕もパースも何もかもがおかしいポンコツぶり。
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image created by MidJourney 違和感のない動画の完成はいつになる? まあ、まだまだやっと黎明期を過ぎたあたりの技術なので、今後数年でどれだけ化けるかは未知数である。3年後くらいには、ほとんど違和感のない生成AIによる映画が作られているかもしれないし。
生成AIによる動画と言えば、昨年話題になった伊藤園による「お~いお茶 カテキン緑茶」のCMが記憶に新しい。
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ケイティー (※AIタレント) 伊藤園 お~いお茶 カテキン緑茶「未来を変えるのは、今!」篇 TVCM
なかなかよくできてはいたけれど、やはり目の動きのあたりがAIだった。このCM、実は先日新作がリリースされていた。こちらは目や口元の動きが不自然で、前作よりも違和感バリバリになってしまっているようだ。
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日本初!AIタレントを起用したCM第2弾! 伊藤園「お~いお茶 カテキン緑茶」新作TV-CM「食事の脂肪をスルー」篇
今のところ、このauのCMのような映像が、動画における生成AIの正しい使い方のような気がしてならない。
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【au】三太郎CMが10年目にして生成AIでアニメ化!
今回の映像を見たクリエイター界隈からは、「まだまだ自分たちがお払い箱になることはないとわかってホッとした」という皮肉な声も上がっているそうだ。
まあ、まったく違和感のない完璧な画像や映像がAIで作れるようになってしまうと、それはそれで問題がありそうだ。今のように、一目で生成AI作とわかるレベルの作品がちょうどいいのかもしれない。
今回の「Next Stop Paris」では、脚本と声優に関してはAIではなく生身の人間が担当したとのこと。そこまで全部AIがやったら、本当の意味での完全なAIによる映画になったと思うのだけど。
アメリカやカナダ、イギリス、ポーランドなどワールドワイドな人材を集結して制作にあたっているそうなので、本編の完成を少しだけ(怖いもの見たさで?)期待してみたいと思う。
References:AI YOU JOKING? AI generated romcom movie to be released this summer already being slammed as ‘tacky and horrendous’ after first look / TCL's streaming service launches production studio for original content / written by ruichan/ edited by parumo
追記(2024/04/22)本文を一部修正して再送します。
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