
これによってプラネット・ナインが実在する可能性はガクンと低くなった。だが諦めるのはまだ早い。
残り22%の領域にそれが隠れている可能性は依然としてある。そして仮に見つからなかったとしても、過去にそれが存在した可能性までをも否定はできないのだ。
太陽系9番目の惑星「プラネット・ナイン」 「プラネット・ナイン」は、太陽系の果てに存在するとされる仮説上の惑星だ。
その存在が初めて示唆されたのは、2003年に太陽系外縁天体「セドナ」が発見されたときだ。
その軌道はきわめて珍しいもので、太陽に110億km以上接近することはなく、一番遠ざかるときには海王星の軌道を大きく越え、1400億kmも離れた(それぞれ地球と太陽の距離の75倍と900倍の距離)。
理論的に、このような天体が最初からそこで形成されたとは考えにくく、本来はもっと太陽に近いところで誕生したのに、遠くにある惑星級の質量に引っ張られた可能性が高かった。
その質量の正体とされるのが太陽系9番目の惑星「プラネット・ナイン」だ。
この仮説は、セドナに似た2つ目の天体「2012 VP113」の発見によって、さらに信憑性が増した。
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依然考えられていた、プラネット・ナインのオレンジ色の軌道 / image credit:MagentaGreen/Prokaryotes/ Wikimedia Commons ( CC BY 1.0 )
さらに、このような遠方にある太陽系外縁天体(現在では1000個以上発見されており、冥王星もその1つとされる)がいくつも発見されると、予想もしなかったパターンが浮かび上がってきた。
それらは楕円軌道を描いているのだが、本来それはどの方向に向いていてもいいはずだ。ところが現実のそれらは、なぜかおおむね同じ方向を向いているように見えるのだ。
それだけではない。ただ軌道の向きがそろっているだけでなく、地球の軌道に対する傾きまで似通っていた。
2016年の研究は、偶然このような一致が起きる可能性は1%もなく、地球の質量の10倍以上の天体の重力がそれらを引っ張った可能性があると結論づけている。
そのほかにも、太陽の自転軸がほんのわずかに傾いているなど、プラネット・ナインの存在を示す間接的な証拠は見つかっている。
いずれも決定的なものではないが、好奇心旺盛な天文学者を惹きつけるには十分なものだ。
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photo by iStock可能性のあるとされる範囲の78%にはなかった とは言え、間接的な証拠をどれほど集めても、間接的な証拠でしかない。プラネット・ナインの存在を証明するには、実際にそれを観測するしかない。
そこで『Astronomical Journal』(2024年3月7日付)に掲載された研究では、太陽系外縁天体の配置から逆算してプラネット・ナインの軌道を割り出し、その範囲を過去に行われた全天サーベイ観測のデータと照らし合わしている。
まずDark Energy Survey(DES)の観測では、プラネット・ナインが隠れている可能性のある空間の約10パーセントが捜索され、否定的な結果が出た。
次に、Zwicky Transient Facility(ZTF)の3年間にわたる観測データは、その可能性のある空間の56%をカバーし、やはり何も見つからなかった。
最後に研究チームは、2009~2015年にかけてマウイ島ハレアカラ山頂の望遠鏡が行ったPan-STARRS1に目を向けた。Given their dynamic instability, only two scenarios can maintain this population of TNOs in a steady state: they're either driven inward by interplay between the Galactic tide and Neptune's scattering, or they result from dynamics induced by Planet 9 (as shown on the figure). pic.twitter.com/HBEqm0UO9J
— Konstantin Batygin (@kbatygin) April 18, 2024
そのデータからこれまでに予測されたプラネット・ナインの動きに一致する天体を探すと、13億個の候補が特定された。
さまざまな技術を使い、これを2億4400万個まで絞り込み、これをさらに数ヶ月かけて分析したがやはり、それらしきものは見当たらなかった。
これら3つの全天サーベイ観測を合わせると、プラネット・ナインが潜んでいる可能性のある範囲の78%が調査されたことになる。これにより、この惑星が存在する可能性はガクンと低くなった。
だが可能性はまだ残されている だが、可能性がゼロになったわけではない。残り22%の領域のどこかに、プラネット・ナインが隠れている可能性はある。But what about observational bias? After adjusting for it, the data favor the Planet 9 model at a striking 5 sigma level. Surprisingly, this "unexotic" group of TNOs provides the strongest statistical evidence yet that Planet 9 is really out there... pic.twitter.com/LksVpOyfS1
— Konstantin Batygin (@kbatygin) April 18, 2024
そこはとりわけ星々が密集した、探し物が難しい場所ではある。だが2025年にフル稼働を予定するヴェラ・ルービン天文台ならば、効率的に捜査できるかもしれない。
なお天文学者のフィリップ・プリーツ氏は、個人的にプラネット・ナインが存在して欲しいとは思うものの、仮になかったとしても特に問題はないと述べている。
その捜索を通じて、太陽系の誕生や進化について理解が深まるだろうからだ。
そして仮に残り22%の領域すら空振りに終わったとしても、必ずしもプラネット・ナインがないことの証明にはならないのだという。
なぜなら例の太陽系外縁天体の奇妙な並びは、大昔に作られたものかもしれないからだ。
その当時、きっとプラネット・ナインは確かに実在した。だが付近を通過した天体の重力によって、太陽系から弾き出されてしまった、こう考えることだってできるのだ。
References:Brown_2024_AJ_167_146.pdf / Astronomers Find Evidence Of A Massive Object Beyond The Orbit Of Neptune | IFLScience / Where Is Planet Nine? Its Hiding Places Are Running Out | Scientific American / written by hiroching / edited by / parumo
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