あの「キューピー」の生みの親、女性漫画家ローズ・オニールの作品を展示した博物館がある
 キューピーと言えばマヨネーズ!と即答してしまいがちなのが日本人だが、あの頭のてっぺんがちょっととんがった、可愛らしい赤ちゃんの姿をしたキャラクター「キューピー」の由来を正確に知っている人は意外と少ない。

 キューピーの生みの親は、19~20世紀にかけて活躍した、アメリカのローズ・オニールという女性の漫画家だ。


 現在、彼女が幼少期を過ごしたネブラスカ州の住宅が復元され、博物館として一般公開されているという。興味のある人は要チェックな観光スポットなのだ。

13歳の少女が売れっ子の漫画家に キューピーの生みの親、ローズ・セシル・オニール(1874.6.25~1944.4.6)は、十代の頃から漫画家として活躍していた女性で、のちに女流漫画家の草分けとして知られるようになった。

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Gertrude Kasebier, Public domain,
via Wikimedia Commons

 ペンシルベニア州で生まれ、ネブラスカ州で育ったローズは、13歳の時に「オマハ・ヘラルド」紙のコンテストに応募。見事一等賞をとったのが、彼女の漫画家としてのキャリアの始まりだった。

 彼女の才能を見込んだ両親によって、ローズは15歳の時1人ニューヨークへと移って活動の拠点とし、出版社への持ち込みを続けた。やがていくつもの新聞社から依頼を受けるようになり、漫画家としての地位を確立していった。

 だが、まだ女性が外で働くことを良しとしなかった時代である。そこで彼女は、ローズという名を隠し、姓のオニールのみで創作活動を続けたそうだ。

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キャラクターとして「キューピー」が登場 漫画家・イラストレーターとしての人気が確立して来た頃、もともと羽の生えた赤ちゃんのモチーフをよく描いていたというローズは、子供向けのシリーズとして、このキャラクターを発表することにした。

 それが「レディーズ・ホーム・ジャーナル」という雑誌に1909年に掲載された、「キューピーたちのクリスマス浮かれ騒ぎ(The KEWPIES' Christmas Floric)」という作品である。

「キューピー」という名前は、ローマ神話に出てくるキューピッド(クピド)からとったもの。
そこには「人々に愛を運んでほしい」との思いがあったようだ。[画像を見る] キューピーが立体化されキューピー人形に そしてこのキューピーというキャラクターが、彼女の人生を大きく変えた。

 可愛らしいキューピーの姿はすぐに大人気となり、ドイツの人形メーカーの手で立体化され、「キューピー人形」として世界中で愛されることになったのだ。

 その後日本でもセルロイドの人形として製作が開始され、アメリカに逆輸出されるまでになった。

 こうしてキューピーは世界中で認知されるようになり、オニール氏は巨万の富を手に入れたようだ。

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女性参政権運動の活動家としても活躍 彼女はアーティストとして活躍する傍ら、女性参政権運動にも積極的にかかわっていた。キューピーを使って女性参政権を訴える漫画やポスターなども手掛けていたという。
私たちの食事、健康、遊び、家庭、学校、仕事、すべてが男性の投票によって規定されています。

よく考えてください。そして母親にも投票権を与えてください!


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O'Neill, Rose Cecil, 1874-1944, Public domain,
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 オニール氏は1945年に亡くなったが、自身が幼少期を過ごしたネブラスカ州の農場が「地球上で一番好きな場所」だと語っていたという。

 彼女が当時暮らしていた家(1947年に焼失)を忠実に再現して、1993年にオープンしたミュージアム「Bonniebrook, Home of Rose O'Neill」は、彼女の作品や写真の数々で埋め尽くされている。

 自然に囲まれた敷地内には遊歩道や花園、滝などがあり、散策にもうってつけ。
ネブラスカ州を訪れることがあったら、ぜひ足を延ばしてみてはどうだろうか。

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Bonniebrook, Home of Rose O'Neill

場所

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日本のあのマヨネーズとキューピーの関係 さて、日本で「キューピー」と言えば、まず連想するのはあの調味料かもしれない。そう、お馴染みのあのマヨネーズだ。

 実はこの名称は、発売当時ちょうど日本でもブレイクして大人気だったキューピー人形にあやかってつけられたもの。

 だがこの時、オリジナルの作者であるオニール氏の許可を取っていなかったそうだ。

 当時の日本では、まだまだ著作権や商標権の意識が薄かったこともあるのかもしれない。だが、あまりにも人気過ぎて、あのマヨネーズが発売になった時点では、既に「可愛い西洋人の赤ちゃん天使」の一般名詞としての認識になっていたらしい。

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image credit:photoAC

 現在はどうなっているかというと、実はオニール氏の著作権をローズ・オニール遺産財団から譲り受けた日本キューピークラブという団体が、平成10年(1998)に著作権をめぐって裁判を起こしている。

 10年にわたる争いの結果、最終的にこの訴えは棄却された。

 このあたりの詳細はこちらなどを見てもらえればいいと思うのだが、要するにオリジナルの複製や二次創作にはあたらないと判断されたということのようだ。

 ちなみにあのマヨネーズを作っている会社の名称は「キユーピー株式会社」で、「ユ」が大きい。そう、実は「キユーピー」マヨネーズが正しいのだ。


 そして現在、海外ではトレードマークのキューピーのロゴが変わりつつある。これはイスラム圏など多様な文化圏の顧客を意識したものだそうだ。

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 羽があると天使に見える、裸の赤ん坊はNGなどいろいろな事情があるそうだが、今後日本で発売されているマヨネーズのキューピーのデザインも変わってしまうことになるのかもしれない。

 オリジナルの「キューピー」は、確かに羽のあるはだかんぼなんだけどね。[画像を見る] References:Bonniebrook Home & Museum / BONNIEBROOK MUSEUM / written by ruichan/ edited by parumo

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