
コロンビアの町サン・ベルナルド / image credit:WIKI commons
アンデス山脈の高地にあるコロンビアの小さな町、サン・ベルナルドは、まるで時が止まっているかのように感じるかもしれない。
この不思議な町では、亡くなった人が墓地に埋葬されると、なぜか腐敗することなく自然にミイラ化し、衣服、髪の毛、目までがしっかり残されているのだ。
この驚くべき現象について、科学者たちはまだ理由を見いだせていないという。
遺体が自然にミイラ化してしまう不思議な町 コロンビア、サン・ベルナルドの町で、ガラスケースに入った母親の遺体の前でひざまずいている娘の姿があった。
遺体はミイラ化していて、ただ眠っているだけのように見えるが、この母親が亡くなったのは30年以上前のことだ。
この遺体はサトゥルニナ・トーレス・デ・ベハラーノさん。彼女の服は埋葬時のまま。バラ柄のドレスとその上に羽織った上着もまだそれとわかるほど状態を保っている。
不気味なほど保存状態のいいその手には、造花の赤いカーネションが握られている。
[動画を見る]
「母の浅黒い小さな丸顔と三つ編みの髪は、死んだときと同じでずっと変わっていません」娘(63)は語る。遺体が安置されているこの場所は、ホセ・アルキメデス・カストロ霊廟にあるミイラ博物館。
ここには、サトゥルニナ・トーレスさんと同じように、死後に自然に、あるいは謎めいた形でミイラ化したサン・ベルナルドの住民13人の遺体が展示されている。
「神が母の姿をずっとそのままにしたいと思ったのだとしたら、なんらかの理由があるはずです」娘は言う。
サトゥルニナ・トーレスさんは1993年に亡くなり、サン・ベルナルド公営墓地の納骨堂に埋葬されたが、2001年に掘り起こされてこのミイラ博物館に安置された。
新しい遺体のためにスペースをあける習慣があるため、こうした処置自体は珍しいことではない。ただ、掘り起こされたとき、彼女の遺体は髪の毛や爪、皮膚組織の大部分が損なわれずにそのまま残っていた。
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いったい何がおきているのか? 驚きの現象だが、実はこれが初めての例ではない。1963年にこのように腐敗せずにミイラ化した遺体が初めて発見されて以来、同様のミイラが数十体見つかっているのだ。
町の人々はいったいなにが起きているのかと驚き、たまたまだっただけと考えたという。しかし、その後も同様の遺体が増え、すぐ腐敗してしまうはずの眼球が残っている遺体さえあった。
1980年代後半には、毎年50体ものミイラが発見されたことがあったが、その後は年々数は減っているという。自然発生したミイラ化現象の謎はいまだ完全に解明されていない メキシコやイタリアでも、ミイラ化処理していない遺体がどういうわけか腐敗せずにミイラになるこうした現象は見られることがある。
専門家たちは何度も説明しようと試みたが、サン・ベルナルドで自然発生したミイラ化の原因はいまだ解明されていない。
地元の住民の中には、本人が生前善良だったため、死後の報酬なのだと信じている者もいるらしい。逆に罰だと考える者もいるという。
大半は、この自然ミイラ化現象は温暖なサン・ベルナルドの住民の健康的な食生活と、活発な農業生活によるものだと考えているが、その証拠はない。
ホルヘ・アルマンド・クルス氏もミイラになったひとりだが、彼は人生の大半を大都市である首都ボゴダで過ごし、亡くなってから生まれ故郷サン・ベルナルドに戻ってきて埋葬された。つまり食生活や職業環境などは関係ないようだ。
この町のミイラ化に明確なパターンはない。死亡時の年齢はそれぞれバラバラだし、ミイラになった人たちに特定の性別や体型があるわけでもない。
[動画を見る]
サン・ベルナルドの気候と関連性があるのか? サン・ベルナルドは、コロンビアの首都ボゴダから南へおよそ100kmのところにある町だが、どうやらカギはこの埋葬地にありそうだ。
この町で初めてミイラが発見されたのは、地下墓地のない埋葬地ができた後のことだった。
1960年代以前にもこの町にはふたつの埋葬地があったが、ミイラができたケースはひとつもなかった。
この土地の気候は湿度が高く、普通なら有機物の分解は妨げられるどころか進むはずだ。
コロンビア国立大学の人類学者、ダニエラ・ベタンクール氏によると、墓地が山の急斜面に位置していることが原因ではないかという。
「ここは気温が高く、常に風が吹いているため、地下墓地はオーブンのような環境になっていると思われます。つまり、遺体が脱水症状を起こしている状態になるのです」
しかし、この仮説はまだまだ検証する必要があるという。
「何がどう作用したらミイラ化が起こるのか、特定の条件がミイラ化を引き起こしているのかは、まだ研究が不足しています」
ミイラ化した遺体の親族は、ミイラを博物館で展示することを承諾しなくてはならないことになっているという。
「神は母を私たちに残そうとしてくださったのです。ただ眠っているだけのような母の姿を見たら、どうして火葬になどできるでしょうか」
References:Bodies Don't Decompose as Normal in This Colombian Town, And Nobody Knows Why : ScienceAlert / Dead bodies keep mummifying in this mountain town — and scientists are baffled / written by konohazuku / edited by / parumo
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アンデス山脈の高地にあるコロンビアの小さな町、サン・ベルナルドは、まるで時が止まっているかのように感じるかもしれない。
この不思議な町では、亡くなった人が墓地に埋葬されると、なぜか腐敗することなく自然にミイラ化し、衣服、髪の毛、目までがしっかり残されているのだ。
この驚くべき現象について、科学者たちはまだ理由を見いだせていないという。
遺体が自然にミイラ化してしまう不思議な町 コロンビア、サン・ベルナルドの町で、ガラスケースに入った母親の遺体の前でひざまずいている娘の姿があった。
遺体はミイラ化していて、ただ眠っているだけのように見えるが、この母親が亡くなったのは30年以上前のことだ。
この遺体はサトゥルニナ・トーレス・デ・ベハラーノさん。彼女の服は埋葬時のまま。バラ柄のドレスとその上に羽織った上着もまだそれとわかるほど状態を保っている。
不気味なほど保存状態のいいその手には、造花の赤いカーネションが握られている。
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「母の浅黒い小さな丸顔と三つ編みの髪は、死んだときと同じでずっと変わっていません」娘(63)は語る。遺体が安置されているこの場所は、ホセ・アルキメデス・カストロ霊廟にあるミイラ博物館。
ここには、サトゥルニナ・トーレスさんと同じように、死後に自然に、あるいは謎めいた形でミイラ化したサン・ベルナルドの住民13人の遺体が展示されている。
「神が母の姿をずっとそのままにしたいと思ったのだとしたら、なんらかの理由があるはずです」娘は言う。
サトゥルニナ・トーレスさんは1993年に亡くなり、サン・ベルナルド公営墓地の納骨堂に埋葬されたが、2001年に掘り起こされてこのミイラ博物館に安置された。
新しい遺体のためにスペースをあける習慣があるため、こうした処置自体は珍しいことではない。ただ、掘り起こされたとき、彼女の遺体は髪の毛や爪、皮膚組織の大部分が損なわれずにそのまま残っていた。
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いったい何がおきているのか? 驚きの現象だが、実はこれが初めての例ではない。1963年にこのように腐敗せずにミイラ化した遺体が初めて発見されて以来、同様のミイラが数十体見つかっているのだ。
町の人々はいったいなにが起きているのかと驚き、たまたまだっただけと考えたという。しかし、その後も同様の遺体が増え、すぐ腐敗してしまうはずの眼球が残っている遺体さえあった。
1980年代後半には、毎年50体ものミイラが発見されたことがあったが、その後は年々数は減っているという。自然発生したミイラ化現象の謎はいまだ完全に解明されていない メキシコやイタリアでも、ミイラ化処理していない遺体がどういうわけか腐敗せずにミイラになるこうした現象は見られることがある。
専門家たちは何度も説明しようと試みたが、サン・ベルナルドで自然発生したミイラ化の原因はいまだ解明されていない。
地元の住民の中には、本人が生前善良だったため、死後の報酬なのだと信じている者もいるらしい。逆に罰だと考える者もいるという。
大半は、この自然ミイラ化現象は温暖なサン・ベルナルドの住民の健康的な食生活と、活発な農業生活によるものだと考えているが、その証拠はない。
ホルヘ・アルマンド・クルス氏もミイラになったひとりだが、彼は人生の大半を大都市である首都ボゴダで過ごし、亡くなってから生まれ故郷サン・ベルナルドに戻ってきて埋葬された。つまり食生活や職業環境などは関係ないようだ。
この町のミイラ化に明確なパターンはない。死亡時の年齢はそれぞれバラバラだし、ミイラになった人たちに特定の性別や体型があるわけでもない。
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サン・ベルナルドの気候と関連性があるのか? サン・ベルナルドは、コロンビアの首都ボゴダから南へおよそ100kmのところにある町だが、どうやらカギはこの埋葬地にありそうだ。
この町で初めてミイラが発見されたのは、地下墓地のない埋葬地ができた後のことだった。
1960年代以前にもこの町にはふたつの埋葬地があったが、ミイラができたケースはひとつもなかった。
この土地の気候は湿度が高く、普通なら有機物の分解は妨げられるどころか進むはずだ。
コロンビア国立大学の人類学者、ダニエラ・ベタンクール氏によると、墓地が山の急斜面に位置していることが原因ではないかという。
「ここは気温が高く、常に風が吹いているため、地下墓地はオーブンのような環境になっていると思われます。つまり、遺体が脱水症状を起こしている状態になるのです」
しかし、この仮説はまだまだ検証する必要があるという。
「何がどう作用したらミイラ化が起こるのか、特定の条件がミイラ化を引き起こしているのかは、まだ研究が不足しています」
ミイラ化した遺体の親族は、ミイラを博物館で展示することを承諾しなくてはならないことになっているという。
ほとんどの家族は火葬を望むが、サトゥルニナ・トーレスさんの娘はこう語る。
「神は母を私たちに残そうとしてくださったのです。ただ眠っているだけのような母の姿を見たら、どうして火葬になどできるでしょうか」
References:Bodies Don't Decompose as Normal in This Colombian Town, And Nobody Knows Why : ScienceAlert / Dead bodies keep mummifying in this mountain town — and scientists are baffled / written by konohazuku / edited by / parumo
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