
猫には様々な毛色がある。日本と海外では呼び名は異なるものの、茶トラや三毛猫、ハチワレやさび猫など、正式に認定された毛色には名前がある。
そしてこの度、猫の毛色に新柄が登場したようだ。それは、ベースはハチワレ(海外ではタキシード)なんだけど、毛先にいくにつれて白くなるというユニークな特徴を持っている。
新たな毛色の名前は、世界一まずい飴と呼ばれる北欧のリコリス菓子の一種「サルミアッキ(salmiak)」にちなんで、「サルミアッキ」と名付けられた。(現地ではとてもポピュラーで人気がある)
フィンランドで出現が確認された新柄のサルミアッキは自然に起きた遺伝子の突然変異により誕生したものだという。
フィンランドで珍しい毛色を持つ猫を確認 この変わった毛色の猫がフィンランドで最初に発見されたのは2007年のことだ。
これらの猫は古典的なハチワレ(タキシード)模様だが、白い部分以外の毛色は、皮膚に近い根元だけが色づいている。毛は先端に向かって徐々に白くなり、尻尾の先も白い。また、白い模様の一部が他の色の斑点で覆われていることもある。
また白い部分以外が黒だけでなく、トラ柄(タビー)や三毛猫柄など様々な柄の個体が存在する。
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フィンランドで発見された珍しい毛色を持つ猫「サルミアッキ」と名付けられた / image credit: Wiley Online Library
最初にフィンランドで発見されたことから、「フィニッシュ変異」と呼ばれてきたが、この度正式に「サルミアッキ」と名付けられた。
サルミアッキとは、独特な味で有名な北欧の伝統的なお菓子で、リコリス(甘草)から抽出した成分を、塩味がある塩化アンモニウム(北欧語でサルミアック、サルミアク)で味付けしたもの。
そのサルミアッキにもいくつか種類があり、白い塩化アンモニウムをまぶしたものもあるが、その見ためがこの猫の柄に似ていることから、この名が名付けられた。
日本で最初に発見されたらさしずめ「ゴマ塩」と名付けられていたかもしれない。コメント欄をみたら「きんつば」とあったが、そっちの方が秀逸なネーミングだね。
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スウェーデン産の塩味の強いサルミアッキのキャンディ / image credit:WIKI commonsなぜこのような毛色になったのか? 2019年、ネコ遺伝学者ハイディ・アンダーソン氏らはこの目新しい毛色に注目。以来、その背後にある遺伝的な原因を探してきた。
猫の毛色や模様を決めている遺伝子を特定するには、まずわかるところから始めるのがセオリーだ。だから研究チームは手始めに、猫の毛を白くする”希釈遺伝子”を調べてみた。
厳密に言えば、猫の色は黒とオレンジの2色しかないそうだ。それ以外の色は、この2色の組み合わせか、希釈遺伝子によってそれらが薄くなったものだという。
サルミアッキは毛先が白いパターンだから、希釈遺伝子が関係していると予想するのはごく自然なことだった。
とこらが希釈遺伝子やこれに関連する変異をすべて調べても、当初はその原因が分からなかったのだという。
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新柄「サルミアッキ」の毛色を持つ猫 、ベースの色はグレータビー/ image credit: Wiley Online Library遺伝子の突然変異により塩基配列が欠けていたことが原因だった そこで研究は次のステップに進むことになる。サルミアッキ色の猫2匹の全ゲノム配列を解析し、その膨大な遺伝子データを調べ上げたのである。
そして明らかになった答えは意外なものだった。希釈遺伝子のすぐそばにあるはずの大きな配列のまとまりが欠けていたのだ。遺伝子の変異である。
アンダーソン氏らは、この裏付けを得るためにさらに181匹の猫を調査。こうしてサルミアッキ色が、塩基配列がないことによって作られていることが確認された。
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新柄「サルミアッキ」の毛色を持つ猫、 黒白の長毛種/ image credit: Wiley Online Library
面白いことに、この突然変異は「潜性遺伝(劣性遺伝)」であるという。つまり、母猫と父猫の両方からこの突然変異を受け継いだ場合のみ、サルミアッキ色になる。
こうした研究は、猫好きな研究者の好奇心を満たすためのものではない。猫の毛色の遺伝学的理解を深め、こうしたユニークな特徴を守るうえで大切なことなのだそうだ。
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新柄「サルミアッキ」の毛色を持つ猫、ベースは三毛猫 / image credit: Wiley Online Library
フィンランドで誕生したサルミアッキ柄の猫は、どんどん世界に広まり、日本にも到来するのだろうか?
もしかしたら既に存在しているのかもしれない。ハチワレなのに白以外の毛の先っちょだけが白っぽくなっている猫がいたら要チェックだ。
この研究は『Animal Genetics』(2024年5月9日付)に掲載された。
References:A New Cat Color Is Defying Genetic Expectations / Mutation Has Led to a New Type of Cat, Scientists Say / written by hiroching / edited by / parumo
追記(2024/05/27)本文を一部修正して再送します。
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
そしてこの度、猫の毛色に新柄が登場したようだ。それは、ベースはハチワレ(海外ではタキシード)なんだけど、毛先にいくにつれて白くなるというユニークな特徴を持っている。
新たな毛色の名前は、世界一まずい飴と呼ばれる北欧のリコリス菓子の一種「サルミアッキ(salmiak)」にちなんで、「サルミアッキ」と名付けられた。(現地ではとてもポピュラーで人気がある)
フィンランドで出現が確認された新柄のサルミアッキは自然に起きた遺伝子の突然変異により誕生したものだという。
フィンランドで珍しい毛色を持つ猫を確認 この変わった毛色の猫がフィンランドで最初に発見されたのは2007年のことだ。
これらの猫は古典的なハチワレ(タキシード)模様だが、白い部分以外の毛色は、皮膚に近い根元だけが色づいている。毛は先端に向かって徐々に白くなり、尻尾の先も白い。また、白い模様の一部が他の色の斑点で覆われていることもある。
また白い部分以外が黒だけでなく、トラ柄(タビー)や三毛猫柄など様々な柄の個体が存在する。
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フィンランドで発見された珍しい毛色を持つ猫「サルミアッキ」と名付けられた / image credit: Wiley Online Library
最初にフィンランドで発見されたことから、「フィニッシュ変異」と呼ばれてきたが、この度正式に「サルミアッキ」と名付けられた。
サルミアッキとは、独特な味で有名な北欧の伝統的なお菓子で、リコリス(甘草)から抽出した成分を、塩味がある塩化アンモニウム(北欧語でサルミアック、サルミアク)で味付けしたもの。
そのサルミアッキにもいくつか種類があり、白い塩化アンモニウムをまぶしたものもあるが、その見ためがこの猫の柄に似ていることから、この名が名付けられた。
日本で最初に発見されたらさしずめ「ゴマ塩」と名付けられていたかもしれない。コメント欄をみたら「きんつば」とあったが、そっちの方が秀逸なネーミングだね。
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スウェーデン産の塩味の強いサルミアッキのキャンディ / image credit:WIKI commonsなぜこのような毛色になったのか? 2019年、ネコ遺伝学者ハイディ・アンダーソン氏らはこの目新しい毛色に注目。以来、その背後にある遺伝的な原因を探してきた。
猫の毛色や模様を決めている遺伝子を特定するには、まずわかるところから始めるのがセオリーだ。だから研究チームは手始めに、猫の毛を白くする”希釈遺伝子”を調べてみた。
厳密に言えば、猫の色は黒とオレンジの2色しかないそうだ。それ以外の色は、この2色の組み合わせか、希釈遺伝子によってそれらが薄くなったものだという。
サルミアッキは毛先が白いパターンだから、希釈遺伝子が関係していると予想するのはごく自然なことだった。
とこらが希釈遺伝子やこれに関連する変異をすべて調べても、当初はその原因が分からなかったのだという。
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新柄「サルミアッキ」の毛色を持つ猫 、ベースの色はグレータビー/ image credit: Wiley Online Library遺伝子の突然変異により塩基配列が欠けていたことが原因だった そこで研究は次のステップに進むことになる。サルミアッキ色の猫2匹の全ゲノム配列を解析し、その膨大な遺伝子データを調べ上げたのである。
そして明らかになった答えは意外なものだった。希釈遺伝子のすぐそばにあるはずの大きな配列のまとまりが欠けていたのだ。遺伝子の変異である。
アンダーソン氏らは、この裏付けを得るためにさらに181匹の猫を調査。こうしてサルミアッキ色が、塩基配列がないことによって作られていることが確認された。
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新柄「サルミアッキ」の毛色を持つ猫、 黒白の長毛種/ image credit: Wiley Online Library
面白いことに、この突然変異は「潜性遺伝(劣性遺伝)」であるという。つまり、母猫と父猫の両方からこの突然変異を受け継いだ場合のみ、サルミアッキ色になる。
こうした研究は、猫好きな研究者の好奇心を満たすためのものではない。猫の毛色の遺伝学的理解を深め、こうしたユニークな特徴を守るうえで大切なことなのだそうだ。
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新柄「サルミアッキ」の毛色を持つ猫、ベースは三毛猫 / image credit: Wiley Online Library
フィンランドで誕生したサルミアッキ柄の猫は、どんどん世界に広まり、日本にも到来するのだろうか?
もしかしたら既に存在しているのかもしれない。ハチワレなのに白以外の毛の先っちょだけが白っぽくなっている猫がいたら要チェックだ。
この研究は『Animal Genetics』(2024年5月9日付)に掲載された。
References:A New Cat Color Is Defying Genetic Expectations / Mutation Has Led to a New Type of Cat, Scientists Say / written by hiroching / edited by / parumo
追記(2024/05/27)本文を一部修正して再送します。
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
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