女性の姿を彫刻した岩がタイの森で偶然見つかる。歴史の謎を解明か
 2024年5月始め、タイの村人3人がドンヤイ野生生物保護区でキノコ狩りをしていたところ、偶然にも謎めいた彫刻を発見した。緑豊かなジャングルに人知れず隠されていた岩に女性の姿が刻まれていたのだ。


 村人からの報告を受け、国立公園・野生生物植物保護局の職員が調査のために現地に派遣された。

 この彫刻がある場所は、カンボジアとの国境近くブリーラム県の最南端。この彫刻はいつ作られたのか?誰が描かれているのか?いまだ不明のままだ。

偶然森の中で発見された古代の女性の石の彫刻 キノコ狩りをしていた村人たちが、ブリーラム県南部にある自然保護区「ドンヤイ野生生物保護区」で偶然発見したのは、地面から斜めに突き出たような大岩に彫刻されてる女性の姿だ。その姿は全身ではなく脚から上までだという。

 長い髪、膨らんだスカートと厚手のネックウェアという伝統的ないでたちで、左腕で菩提樹の枝を頭の上にかざしているように見える。

[画像を見る]

森の中で村人たちが発見した岩の彫刻 / image credit:กรมอุทยานแห่งชาติ สัตว์ป่า และพันธุ์พืช彫刻に描かれている女性は誰?いつ作られた? いまだこの彫刻がいつ作られたかは謎のままだが、様々な推測がなされている。

 6世紀から11世紀にかけて存在したとされるモン族の王国、ドヴァーラヴァティー王国時代のにさかのぼるもので、ゴータマ・シッタールダ(釈迦牟尼)の母、マーヤー夫人(摩耶夫人)を描いていると考える人もいる。

 ドヴァーラヴァティー王国は、タイとミャンマー国境付近、チャオプラヤー川流域などに都市を築いていた。ドヴァーラヴァーティー様式という一定の様式を持った仏教美術を有していたという。

 マーヤー夫人は釈迦の生母だ。6本の牙を持つ白い象が胎内に入る夢を見て釈迦を懐妊したと言われ、出産後、7日目に亡くなったとされる。


[画像を見る]

いつ、誰が彫刻したのかは不明/ image credit:กรมอุทยานแห่งชาติ สัตว์ป่า และพันธุ์พืช

 だが、タイのシラパコーン大学の美術史家チェダ・ティンサンチャリ氏は、この彫刻はそれほど古いものではないと反論する。

 「これを彫った人物は、古代インド美術のような古代芸術を見て、それを模倣したのではないでしょうか?」女性の眉や唇などの特徴がドヴァーラヴァーティ時代のものとは違うのだという。

 さらに、16世紀以前のドヴァーラヴァーティ時代にこの地域に住んでいた人たちは、菩提樹の枝を持ったマーヤー夫人をまったく知らないはずだという。

 菩提樹は、神聖なイチジクとも呼ばれ、東南アジア原産で、仏教徒やヒンドュー教徒に崇められている。

 なお、この彫刻がある場所から1マイル (約1.6km)もしない所に、歴史ある仏教寺院ワット・パ・カー・クラ・ジャオがあり、芸術的な才能で知られる僧侶の集団が数十年前まで住んでいたという。

 専門家による研究が完了するまでは、この女性の起源や正体は謎のままだろう。

[動画を見る]

References:Mushroom Hunters Stumble Upon Mysterious Stone Sculpture in Thai Forest | Smithsonian / written by konohazuku / edited by / parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
編集部おすすめ