イギリスとドイツの物理学者が行った新たな研究によると、ワープドライブ(ワープ航法)を行うと、時空の波である「重力波」という痕跡を残すことがわかったという。
ワープドライブでは、宇宙船を「ワープバブル」という特殊な空間につつむ必要があると考えられている。
このバブルの生成と破壊のタイミング、つまり宇宙船がワープに入る時と出る時に重力波が生じるというのだ。
時空を曲げて光より速く移動する「ワープドライブ」の理論 光速を超えた移動を可能にするワープドライブ(ワープ航法、超光速航法)は、今のところSF世界だけの話だ。だがそれを実現する有力な理論としては「アルクビエレ・ドライブ」というものがある。
1994年に理論物理学者のミゲル・アルクビエレが考案したワープ理論では、宇宙船の前方に小さなビッグクランチを、後方に小さなビッグバンを生じさせることで、超光速移動を実現できるとしている。
つまり宇宙船の前の空間を縮ませつつ、後方を膨張させることで、機体を超光速で押し流す時空の流れを作り出すのだ。
ワープ航法を実現するうえで最大の難関の1つとなるのが、この宇宙の物質は光速を超えられないという物理的な制約だ。
そこでアルクビエレ・ドライブでは、時空の膨張や収縮を利用し、宇宙船を「ワープバブル」なる特殊な空間領域に包み込む。
ワープバブル内部の宇宙船は静止しているのと同然の状態で、これによって光速の限界を突破できるのだという。
もちろん現在の地球の科学技術レベルでこれを実現することは不可能だし、アルクビエレ・ドライブ理論にもいくつか問題がある。例えばその実現には大量の”負のエネルギー”が必要となる。
だが、この宇宙のどこかにある超高度文明ならばそれが可能なのかもしれない。
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ワープドライブをすると重力波が発生する 新しい論文によると、その痕跡とはワープバブルから広がる「重力波」という時空の波紋だ。
重力波は質量をもつ物体が加速運動することで発生する。時空の波紋というと、きわめて稀な現象に思えるが、ロンドン大学クイーン・メアリー校の理論物理学者ケイティ・クラフ氏によると、そもそも「不規則に動き回る物質」ならどれも重力波を発生させているのだという。
たとえば、あなたが友達と一緒に輪になって走り回れば、それだけで重力波が発生しているはずなのだ。だが、それはあまりにも小さすぎて検出することはできない。
そしてワープ航法で移動する宇宙船であっても、それだけでは検出できるような重力波を発生させないかもしれない。
だがワープバブルの生成と破壊のタイミングで、とりわけ後者では重力波が発生すると考えられるのだ。
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アルクビエレ・ドライブの泡が崩壊した時に発生する重力波のシミュレーション
ワープバブルの崩壊はとても乱雑な現象で、バブルの壁に含まれていたエキゾチックな物質がビシャっとはねて、バブルの壁にあった時空の湾曲も散らばります(クラフ氏)これによって、特定の波長における「強力な重力波現象」が発生する可能性が高いのだという。ワープバブルの重力波を検知できれば宇宙船が発見できるかも 水面の波紋のように時空を伝って広がる重力波は、レーザー干渉計重力波天文台(LIGO)のような最先端の天文台によってすでに検出されている。
そうした重力波は、中性子星同士の合体やブラックホール、超新星爆発の衝突のような大規模な現象によって発生していると考えられている。
だがワープバブルの重力波はこれらとはまったく違っているので、LIGOのような天文台ではうまく検出できないかもしれない。
しかも、ワープ航法によって生じた重力波が本当にあるのかどうかも定かではない。
つまりワープバブルの重力波を本気で探すつもりなら、見つかる保証がまったくないまま、膨大な時間とコストを費やす覚悟が必要ということになる。
それでもクラフ氏はやってみる価値はあるという。
シグナルをキャッチできるかどうか、やってみなければわかりません。私自身、何かを見つけられる可能性については懐疑的ですが、やってみる価値は十分にあるでしょう(クラフ氏)この研究の査読前の論文は『arXiv』に投稿(2024年6月4日付)された。
References:Warp Drive ERP: How Warp Drives Could Generate Gravitational Waves / Alien 'warp drives' may leave telltale signals in the fabric of space-time, new paper claims | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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