気候変動による地球温暖化が地球の自転を不安定にし、1日が長くなりつつあるという研究結果
 気候変動により地球温暖化が進んでいるが、新たな研究によると、温暖化は地球の自転にまで大きな影響を与えているという。

 極地の氷が解けたことで水の分布が変化し、地球のバランスが崩れつつあり、自転が遅くなっているという。
つまり、1日の長さが少しずつ長くなってきているということだ。

 実際のところ、100年で数ミリ秒ほどなので、私たちが1日の長さの変化を体感することはないかもしれないが、それでも"マイナスのうるう秒"を導入したり、宇宙探査に影響したりするなど、人類は対応を迫られることになると研究チームは警告している。

長期的に見ると地球の自転は遅くなっている 地球は完全な球体ではないため、自転は、内部構造、月の引力、気候といった要因によってブレが生じる。

 例えば、2022年6月29日は、24時間より1.59ミリ秒短かくなり、観測史上自転の最速記録を更新したが、長期的に見ると、地球の自転は主に月の影響で遅くなっているという。

 そこに追い打ちをかけているのが気候変動による地球温暖化だ。21世紀末には地球温暖化が自転を遅くする最大の要因になると予測されるという。

[画像を見る]

NOAAの地球・宇宙天気観測衛星「DSCVOER」が2016年に撮影した地球の自転/Image credit: NASA Goddard/NOAA/DSCOVER地球温暖化で自転が遅くなる理由 地球温暖化によって自転が遅くなる理由は、グリーンランドや南極をはじめとする極地の氷が溶けて、水の分布が変化するからだ。

 溶けた水の大半は赤道の近くにたまり、地球のウエストがわずかに膨らむことになる。

 すると膨らんだウエストは、フィギュアスケートの選手がスピンしながら腕を体に引き寄せるのと逆に作用し、自転のスピードが落ちる。

 スイス連邦工科大学チューリッヒ校が行った研究では、現実のデータと物理法則を組み合わせたAIプログラムで、地球の自転がどのように変化するか予測した。

 その結果、今後地球の1日の長さは徐々に長くなっていくだろうことが示されたのだ。

 じつは今年3月にも別の研究者によって同様の報告があったが、最新の研究はその結果を裏付けるだけでなく、より詳細な予測を提示している。


 これに関連して、同じ研究チームが『Nature Geoscience』(2024年7月12日付)で発表した研究によると、赤道付近の海水の増加のために、磁極の揺れが自転軸に対してだんだんと大きくなっているという。

[画像を見る]

磁極運動観測データ / image credit: Nature Geoscience (2024)。DOI: 10.1038/s41561-024-01478-2

 こうした動向は、ここ30年ずっと続いている可能性が高い。だが今回の研究では、これまでの予測されていた以上に磁極が遠ざかるだろうことが明らかになったのだ。

 2本の研究に参加したスイス連邦工科大学チューリッヒ校のベネディクト・ソヤ氏は、「このことは当然、地球の未来に対する大きな責任を私たちに負わせることになります」と、プレスリリースで語っている。

[画像を見る]

photo by iStock21世紀末には月の影響よりも地球の自転を遅らせる可能性 地球の歴史を振り返れば、1日は常に長くなり続けてきた。長い目で見れば、地球の自転は一貫して遅くなり続けている。

 その主な原因は、月の引力が極点から海水を引っ張ること(潮汐摩擦)で、これが100年ごとに約2.3ミリ秒ずつ1日を長くしている。

 だが今回の研究によれば、温暖化が自転に与える効果は、100年ごとに1日を1.3ミリ秒長くするくらいの強さだという。

 だがこのまま温暖化が続くなら、その効果は21世紀末には100年ごとに2.6ミリ秒まで強まり、地球の自転を減速させる要因としては最大のものになると予測されている。

[画像を見る]

気候変動の影響で、地球の自転軸(黄色)が動き始めると、地球の磁極(青)は自転軸の周りで揺れ始める/Image credit: ETH Zurichマイナスのうるう秒の設定 そうなると、過去数世紀で1日が長くなった分、どこかの時点で1秒縮めてやる必要があるかもしれない。

 現在4年に1度、通常の365日に1日追加されるうるう年があるが、この調整はその逆で”マイナスのうるう秒”とでも言えるものだ。
しかも、早ければ2029年にも導入する必要があるかもしれないという。

 こうした時間の調整については、コンピュータやスマートフォンの時計を狂わせる恐れがあると指摘する専門家もいる。だがソヤ氏が指摘するのは、こうしたことが宇宙探査に与える影響だ。
地球の自転がゆっくりとしか変化しないとしても、探査機をほかの惑星に着陸させるような宇宙の移動では、この影響を考慮しなければなりません(ソヤ氏)
 また、地球の自転軸の変化が内核の回転を変化させる可能性も指摘されている。

 この場合、1日が長くなるペースがさらに加速する可能性があるが、こうした要因が実際にどう作用するのかはほとんど解明されていないそうだ。

 この研究は『PNAS』(2024年7月15日付)に掲載された。

References:How climate change is altering the Earth’s rotation | ETH Zurich / How climate change is altering the Earth's rotation / Earth is wobbling and days are getting longer — and humans are to blame | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
編集部おすすめ