
何かの間違いで自分が死んだことになっていた。なんて、ラノベか何かの世界線かと思いきや、インドで実際に起こったことだ。
事実は小説よりも奇なり。ここまでなら「インド人もビックリ」で済むかと思われたが、その後の展開はさらにナナメ上をゆくものだった。
政府から自身の死亡証明書を受け取ったその男性はあろうことか、生きていることを証明するために、犯罪者になることを決意したのだ。
インドの村の小学校で立てこもり事件が発生 7月19日の午後、ラジャスタン州のバロトラ警察署長クンダン・カンワリア氏は、地区にある小学校に男が侵入したとの通報を受けた。
男は教師と生徒を人質にとり、ナイフとガソリンの入った瓶で脅して立てこもっているとのこと。
警察が現場に急行して容疑者をその場で逮捕したが、校長代理のハルダヤル氏と教師のスレシュ・クマール氏、そして生徒の保護者1名がナイフで切りつけられて重傷を負った。
調べによると、事件を起こしたのはバロトラ地区のミトラ村に住むバブラム・ビル容疑者(40)。
そして捜査を進めるうちに、彼が事件を起こした「動機」に周囲は驚愕することになる。
[画像を見る]
image credit:NEWS18
自分が「生きている」ことを証明するため犯罪を繰り返す ある日のこと、ビル容疑者のもとに、政府から彼の名前の死亡証明書が届けられた。
ビックリした容疑者は、自分が生きていることを村や州の当局に訴えたが、相手にしてもらえなかったらしい。
何をしても、自分の死亡登録を訂正してもらえない。疲れ切って疑心暗鬼に陥ったビル容疑者は、政府に財産を差し押さえられるのでは?と危惧するように。
そして思い詰めたあまり、自分が生きていることを示すためには、犯罪を犯して周囲に自分の存在を知らせるしかないと考えたそうだ。
彼はこの事件で逮捕される以前にも、複数の犯罪を繰り返していたらしい。だが自分が「死んでいる」事実は変わらなかった。
そこで最後の手段として、世間の注目を集めるために地元の学校を襲撃して人質を取り、何人かを刺そうと決めたのだという。
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image created by MidJourney
最終的に3名の重傷者を出すという大事件を犯したことで、彼の存在は地元のみならず、インド中に知れ渡った。
当初の目的は達したことになるのかもしれないが、これで死亡登録を訂正してもらえるのかどうかは、今のところまだわからないようだ。
下はビル容疑者の暮らすミトラ村にある小学校。事件の起きた小学校はここではないらしいが、現地の雰囲気は伝わると思う。
[動画を見る]
住民サービスのオンライン化が進むIT大国インド IT大国インドでは、Aadhaar(アーダール、アドハー)という、日本のマイナンバーに似たような国民識別番号制度が稼働中である。
日本のように忘れてしまいがちなパスワードではなく、指紋や顔、虹彩認証を使ったより安全かつ精度の高いシステムだ。
紙やモバイル、プラスチックカードなどが用意されており、どの形態で所持していてもOK。[画像を見る] 意外に思うかもしれないが、あの膨大な人口を抱えるインドで、既に5歳以上のほぼ100%が登録を済ませているんだそうだ。
以前は農村などを中心に、出生届を出さない人たちも多かったため、人口動態の調査や福祉政策などがいきわたらないことも多かった。
だがこのAadhaarが一気に普及したおかげで、コロナ禍での給付金の支給もかなりスムーズに行われたそうだ。
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image credit:The Hindu Businessline @DEEPAK KR
また、ラジャスタン州にはPehchanという独自の住民登録システムがあり、Aadhaarとも連携して、出生・死亡届けはもちろん結婚届や養子縁組届まで、オンラインで完結するようになっている。
つまり、誰かが操作しなければ死亡届は登録されないし、死亡証明書も発行されないはずなのだ。謎の死亡証明書についてはまだ捜査中 とはいうものの、登録自体は人間のやることでもあり、どこかに手違いだったり操作ミスだったり、あるいは悪意による虚偽の登録が発生しないとも限らない。
そして一度登録されてしまったものを修正するというのは、手間や面子を考えると、お役所にとってはあまり歓迎したくない作業なのかもしれない。
今回の事件の発端となった「死亡証明書がどうして送られたか」についてはまだ捜査中だが、インドではこういった誤登録も頻発しているらしい。
インド人って本当にいろいろで、めちゃくちゃ有能なスーパービジネスマンやサービス業のプロがいるかと思えば、効率の対極にいるようなお偉いさんも珍しくない。
お役所仕事が服着て歩いているような担当者に当たってしまったのなら、ビル容疑者も不運ではある。
とはいえ、生存証明のために複数の犯罪を犯してしまったビル容疑者、問題はそれ以外のところにもありそうな気がするな。
References:Rajasthan Man, Declared Dead By Govt, Commits Crimes To Prove He’s Alive / written by ruichan/ edited by parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
事実は小説よりも奇なり。ここまでなら「インド人もビックリ」で済むかと思われたが、その後の展開はさらにナナメ上をゆくものだった。
政府から自身の死亡証明書を受け取ったその男性はあろうことか、生きていることを証明するために、犯罪者になることを決意したのだ。
インドの村の小学校で立てこもり事件が発生 7月19日の午後、ラジャスタン州のバロトラ警察署長クンダン・カンワリア氏は、地区にある小学校に男が侵入したとの通報を受けた。
男は教師と生徒を人質にとり、ナイフとガソリンの入った瓶で脅して立てこもっているとのこと。
警察が現場に急行して容疑者をその場で逮捕したが、校長代理のハルダヤル氏と教師のスレシュ・クマール氏、そして生徒の保護者1名がナイフで切りつけられて重傷を負った。
調べによると、事件を起こしたのはバロトラ地区のミトラ村に住むバブラム・ビル容疑者(40)。
そして捜査を進めるうちに、彼が事件を起こした「動機」に周囲は驚愕することになる。
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自分が「生きている」ことを証明するため犯罪を繰り返す ある日のこと、ビル容疑者のもとに、政府から彼の名前の死亡証明書が届けられた。
ビックリした容疑者は、自分が生きていることを村や州の当局に訴えたが、相手にしてもらえなかったらしい。
何をしても、自分の死亡登録を訂正してもらえない。疲れ切って疑心暗鬼に陥ったビル容疑者は、政府に財産を差し押さえられるのでは?と危惧するように。
そして思い詰めたあまり、自分が生きていることを示すためには、犯罪を犯して周囲に自分の存在を知らせるしかないと考えたそうだ。
彼はこの事件で逮捕される以前にも、複数の犯罪を繰り返していたらしい。だが自分が「死んでいる」事実は変わらなかった。
そこで最後の手段として、世間の注目を集めるために地元の学校を襲撃して人質を取り、何人かを刺そうと決めたのだという。
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最終的に3名の重傷者を出すという大事件を犯したことで、彼の存在は地元のみならず、インド中に知れ渡った。
当初の目的は達したことになるのかもしれないが、これで死亡登録を訂正してもらえるのかどうかは、今のところまだわからないようだ。
下はビル容疑者の暮らすミトラ村にある小学校。事件の起きた小学校はここではないらしいが、現地の雰囲気は伝わると思う。
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住民サービスのオンライン化が進むIT大国インド IT大国インドでは、Aadhaar(アーダール、アドハー)という、日本のマイナンバーに似たような国民識別番号制度が稼働中である。
日本のように忘れてしまいがちなパスワードではなく、指紋や顔、虹彩認証を使ったより安全かつ精度の高いシステムだ。
紙やモバイル、プラスチックカードなどが用意されており、どの形態で所持していてもOK。[画像を見る] 意外に思うかもしれないが、あの膨大な人口を抱えるインドで、既に5歳以上のほぼ100%が登録を済ませているんだそうだ。
以前は農村などを中心に、出生届を出さない人たちも多かったため、人口動態の調査や福祉政策などがいきわたらないことも多かった。
だがこのAadhaarが一気に普及したおかげで、コロナ禍での給付金の支給もかなりスムーズに行われたそうだ。
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また、ラジャスタン州にはPehchanという独自の住民登録システムがあり、Aadhaarとも連携して、出生・死亡届けはもちろん結婚届や養子縁組届まで、オンラインで完結するようになっている。
つまり、誰かが操作しなければ死亡届は登録されないし、死亡証明書も発行されないはずなのだ。謎の死亡証明書についてはまだ捜査中 とはいうものの、登録自体は人間のやることでもあり、どこかに手違いだったり操作ミスだったり、あるいは悪意による虚偽の登録が発生しないとも限らない。
そして一度登録されてしまったものを修正するというのは、手間や面子を考えると、お役所にとってはあまり歓迎したくない作業なのかもしれない。
今回の事件の発端となった「死亡証明書がどうして送られたか」についてはまだ捜査中だが、インドではこういった誤登録も頻発しているらしい。
インド人って本当にいろいろで、めちゃくちゃ有能なスーパービジネスマンやサービス業のプロがいるかと思えば、効率の対極にいるようなお偉いさんも珍しくない。
お役所仕事が服着て歩いているような担当者に当たってしまったのなら、ビル容疑者も不運ではある。
とはいえ、生存証明のために複数の犯罪を犯してしまったビル容疑者、問題はそれ以外のところにもありそうな気がするな。
References:Rajasthan Man, Declared Dead By Govt, Commits Crimes To Prove He’s Alive / written by ruichan/ edited by parumo
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