海底で発見された大理石でできた見事なモザイク床、古代ローマ時代の水没都市
 ナポリ湾の海底で、大理石でできた美しいモザイク床が見つかった。それは水没した古代都市バイアエの町の痕跡だった。
バイアエはユリウス・カエサルや皇帝ネロの邸宅があったことで有名だ。

 床のデザインには、円の中に多彩な四角形の大理石が内接するよう組まれたパターンが多用されている。

 この町はかつて富裕層の贅沢な温泉リゾート地で、今はローマのラスベガスとして知られる。

水没した古代都市「バイアエ」 バイアエはポンペイ近くのナポリ湾に面した都市で、地下からの圧力によって地面が隆起、沈下する緩慢地動という現象によって16世紀に水没したと考えられている。

 これまでの発掘調査でこの沈んだ古代都市からさまざまな遺物が回収されている。

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ナポリ湾に沈んだ古代都市バイアエの大理石の美しい床が見つかった / image credit:Edoardo Ruspantini海底から発見された美しいモザイクの床 今回発見されたモザイクの床は、異なる形状の大理石をいくつも組み合わせて、驚くような幾何学模様を描き出しているものもある。

 不規則な形のこれら大理石は再利用されたもので、3~5世紀にはこうした手法は一般的だったという。

 このモザイク床は、大理石や貝、真珠層、ガラスなど色のついたさまざまな材料をランダムにカットして絵や模様にはめこむ美術技法、オプス・セクティレの一種だ。

 このタイプのモザイクは、石やガラスの小さな立方体をたくさん並べて模様を作る通常のテッセラモザイクとは違う。

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このゴージャスなモザイク模様は、ほかの壁や床に使われていた石を再利用して作られたと考えられる。 / image credit:Edoardo Ruspantini当時の名士が所有していた別荘の応接室の床 バイアエで見つかったオプス・セクティレは、西暦3世紀にこの町の名士が所有していた別荘の応接室の床だったという。

 デザインに使われている材料は、ほかの床や壁に使われていたものを再利用したもので、持ち主にとって非常に高価なものだったことがわかる。


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このようなモザイクは高価だった。だから材料が再利用された理由のひとつかもしれない / image credit:Edoardo Ruspantini古代都市バイアエは当時のセレブ層のリゾート地だった 古代都市バイアエは、ユリウス・カエサル、ネロ、キケロ、ハドリアヌスなどローマのエリートの中でもとくに裕福で輝かしい人たちを惹きつけたファッショナブルなリゾート地だった。

 美しい海岸線に豪奢な別荘が連なり、火山の恵みである近くの温泉には若返りや治療のために訪れる人も多かった。だが次第にバイアエは快楽的な町へと変わっていく。

 有名なストア派哲学者セネカは、バイアエを悪徳と罪がはびこる避けるべき町だと表現した。ビーチには酔っ払いがはびこり、騒々しいバカ騒ぎが平和を乱していた。

 最終的にバイアエは消滅することとなった。ローマ帝国が崩壊すると、この町はさまざまな侵略者に攻撃され、8世紀にはイスラム軍の襲撃を受け、16世紀にはバイアエがあるフレグレイ平原内の火山活動によって海面下に沈むこととなった。

 現在、水中考古学者たちがこの水没都市のさまざまな面を復元しようと取り組んでいる。かつてその一部であった複雑な世界の様子を見せてくれることが期待される。

References: APPROFONDIMENTO Parco Archeologico Campi Flegrei | Facebook / Divers Discover Mesmerizing Roman Mosaic Beneath the Sea | Smithsonian / Extraordinary Roman Marble Floor Discovered In Ancient Sunken City | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo

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