
どんな生き物にも個体差はある。同じ種でも記録上もっとも大きいものは「史上最大」の称号が与えられる。
既に絶滅してしまっているので測定が難しいが、新たな研究によると、これまで考えられている以上に巨大だった可能性が高いという。
統計学的に考えると、これまで発見されたティラノサウルスの化石の中に、史上最大の個体が含まれている可能性は低いという。それどころか、これまでで最大の化石より70%も大きい個体がいた可能性も十分あるそうだ。
現在発見されたティラノサウルス最大の化石である「スコッティ」は死亡時に8,800kgと推定されているのが、史上最大のティラノサウルスなら15,000kgにも達していたかもしれないというのだ。かなり巨大だぞこれ。
発見されたティラノサウルスの化石の割合は約0.00000336% 街を歩いている人の中から適当に1人選んでも、その人が史上最も背の高い人間である可能性は低いだろう。同じことが恐竜にも言える。
カナダ自然博物館の古生物学者ジョーダン・マロン氏と、ロンドン大学クイーン・メアリー校のデイビッド・ホーン氏は、限られたデータサンプルから種の大きさの範囲を推定するという課題に取り組んでいる。
これは多くの生物学者が直面する問題で、彼らの論文によれば、「個体群サンプリングが集中的かつ空間的・時間的に包括的でない限り、現存する種でさえ最大サイズをはっきり推定することは難しい」のだという。
この地球上には、ほんの240万年という短い期間のうちに、約25億頭のティラノサウルスが誕生したと考えられている。
それらのうち、ほぼすべてが残された”完全な化石”として発掘されたのは、わずか84頭のみだ。発見された割合を計算すると、たったの約0.00000336%となる。
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photo by iStock それでもホーン氏は、完全なものではなく「単体の骨や部分的な化石なら、現在見つかっている骨格より大きな個体があるはずだ」と述べている。
こうした化石の空白を埋めるために、研究チームはコンピューターモデルで1億4000万頭の仮想ティラノサウルスを生成し、生息数・成長速度・寿命・化石記録のギャップなど、さまざまな変数を踏まえつつ、仮想の個体それぞれに体重を割り当てていった。
これにより、これまでに発見されたティラノサウルスの化石の大きさが、全体の中でどのくらいの位置にあるのか推測することができた。
その結果わかったのは、これまでに存在したティラノサウルスの99%より大きな個体ならば、すでに発掘されている可能性がかなり高いということだ。
つまり体長13m、体重8,800kgのスコッティは、ティラノサウルスの中でも上位1%に入る大きさだった可能性が高いのだ。
ただしその1%にランクインする巨大ティラノサウルスたちの間に、どの程度の差があるのかまでははっきりしない。
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これまで発見された化石の中で一番大きいカナダで発見されたティラノサウルス「スコッティ」 / image credit:Amanda Kelley史上最大のティラノサウルスは15,000kgと推測 それを知る手がかりを求めて、研究チームは、今日の地球にいる生物の中で恐竜に一番近い親戚であるアメリカアリゲーターを参考にして、性別による大きさの違いを調べてみた。
ワニは所詮ワニなので、理想的なモデルでないのは確かだ。
この点を踏まえたうえで言うと、”統計学的”には、恐竜の時代にはスコッティよりも70%大きな個体が存在したと考えられるのだという。その体重はじつに15,000kgもある。
驚くような結果だが、スコッティより2倍近く大きな個体もいた可能性があるという過去の研究とも概ね一致しているので、突拍子もない話ではないようだ。
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現時点で最大のティラノサウルスの化石(中央のシルエット)と推定された最大の個体(奥のシルエット)との比較。
ただし、これはあくまで統計的な推定だ。
現実に存在した最大のティラノサウルについては、その性的二形の研究や、体の大きさに関する生体力学的・生態制約的な研究が、より確かな裏付けをもたらしてくれるかもしれない。
この研究で重要なのは、その内容をティラノサウルス以外の恐竜にも応用できるという点だ。
とりわけ、発掘される化石が全体の中ではごく一部でしかないことを考えると、恐竜の体の大きさを知るうえで、統計学的な比較はとても大切なのだという。
「わずかな骨格に基づいて、どれが最大かを議論しても、あまり意味がありません」と、ホーン氏は話す。
この研究は『Ecology and Evolution』(2024年7月24日付)に掲載された。
References:Size of T. rex - Canadian Museum of Nature / The Largest T. Rex Was Probably Much Bigger Than We Ever Realized : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
ではティラノサウルスはどうなのだろう?
既に絶滅してしまっているので測定が難しいが、新たな研究によると、これまで考えられている以上に巨大だった可能性が高いという。
統計学的に考えると、これまで発見されたティラノサウルスの化石の中に、史上最大の個体が含まれている可能性は低いという。それどころか、これまでで最大の化石より70%も大きい個体がいた可能性も十分あるそうだ。
現在発見されたティラノサウルス最大の化石である「スコッティ」は死亡時に8,800kgと推定されているのが、史上最大のティラノサウルスなら15,000kgにも達していたかもしれないというのだ。かなり巨大だぞこれ。
発見されたティラノサウルスの化石の割合は約0.00000336% 街を歩いている人の中から適当に1人選んでも、その人が史上最も背の高い人間である可能性は低いだろう。同じことが恐竜にも言える。
カナダ自然博物館の古生物学者ジョーダン・マロン氏と、ロンドン大学クイーン・メアリー校のデイビッド・ホーン氏は、限られたデータサンプルから種の大きさの範囲を推定するという課題に取り組んでいる。
これは多くの生物学者が直面する問題で、彼らの論文によれば、「個体群サンプリングが集中的かつ空間的・時間的に包括的でない限り、現存する種でさえ最大サイズをはっきり推定することは難しい」のだという。
この地球上には、ほんの240万年という短い期間のうちに、約25億頭のティラノサウルスが誕生したと考えられている。
それらのうち、ほぼすべてが残された”完全な化石”として発掘されたのは、わずか84頭のみだ。発見された割合を計算すると、たったの約0.00000336%となる。
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photo by iStock それでもホーン氏は、完全なものではなく「単体の骨や部分的な化石なら、現在見つかっている骨格より大きな個体があるはずだ」と述べている。
こうした化石の空白を埋めるために、研究チームはコンピューターモデルで1億4000万頭の仮想ティラノサウルスを生成し、生息数・成長速度・寿命・化石記録のギャップなど、さまざまな変数を踏まえつつ、仮想の個体それぞれに体重を割り当てていった。
これにより、これまでに発見されたティラノサウルスの化石の大きさが、全体の中でどのくらいの位置にあるのか推測することができた。
その結果わかったのは、これまでに存在したティラノサウルスの99%より大きな個体ならば、すでに発掘されている可能性がかなり高いということだ。
つまり体長13m、体重8,800kgのスコッティは、ティラノサウルスの中でも上位1%に入る大きさだった可能性が高いのだ。
ただしその1%にランクインする巨大ティラノサウルスたちの間に、どの程度の差があるのかまでははっきりしない。
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これまで発見された化石の中で一番大きいカナダで発見されたティラノサウルス「スコッティ」 / image credit:Amanda Kelley史上最大のティラノサウルスは15,000kgと推測 それを知る手がかりを求めて、研究チームは、今日の地球にいる生物の中で恐竜に一番近い親戚であるアメリカアリゲーターを参考にして、性別による大きさの違いを調べてみた。
ワニは所詮ワニなので、理想的なモデルでないのは確かだ。
この点を踏まえたうえで言うと、”統計学的”には、恐竜の時代にはスコッティよりも70%大きな個体が存在したと考えられるのだという。その体重はじつに15,000kgもある。
驚くような結果だが、スコッティより2倍近く大きな個体もいた可能性があるという過去の研究とも概ね一致しているので、突拍子もない話ではないようだ。
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現時点で最大のティラノサウルスの化石(中央のシルエット)と推定された最大の個体(奥のシルエット)との比較。
人間と犬のシルエットから、その大きさが想像できるだろう/Mallon and Hone, Ecology and Evolution, 2024
ただし、これはあくまで統計的な推定だ。
現実に存在した最大のティラノサウルについては、その性的二形の研究や、体の大きさに関する生体力学的・生態制約的な研究が、より確かな裏付けをもたらしてくれるかもしれない。
この研究で重要なのは、その内容をティラノサウルス以外の恐竜にも応用できるという点だ。
とりわけ、発掘される化石が全体の中ではごく一部でしかないことを考えると、恐竜の体の大きさを知るうえで、統計学的な比較はとても大切なのだという。
「わずかな骨格に基づいて、どれが最大かを議論しても、あまり意味がありません」と、ホーン氏は話す。
この研究は『Ecology and Evolution』(2024年7月24日付)に掲載された。
References:Size of T. rex - Canadian Museum of Nature / The Largest T. Rex Was Probably Much Bigger Than We Ever Realized : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
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