ごく小さな「ワームホール」が宇宙の膨張の加速を引き起こしているというのだ。なんか、私の好きなマーベル映画「アントマン」を彷彿とさせる
少なくとも今の時点では検証不能な理論ではあるものの、現在の標準宇宙モデルよりも加速しながら膨張する宇宙の姿をうまく説明してくれるという。
宇宙の膨張が加速する謎 これまでの観測によれば、この宇宙の膨張スピードは加速している。
だがもしも宇宙にあるものがすでに知られている粒子と放射だけなら、膨張が加速するはずがないのだ。少なくとも一般相対性理論的にはそう予想される。
だから物理理論と実際の観測結果との帳尻を合わせるために、天文学者たちはこの宇宙には目に見えず、検出することもできない謎の何かがあるというアイデアを捻り出した。
その謎の何かは「ダークエネルギー」と呼ばれている。
この宇宙の物質や場とごく弱く作用し、それによって宇宙の膨張を加速させる、とされているが、実際に直接確認されたことはない仮説上のエネルギーだ。
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photo by iStockダークエネルギーの正体はワームホールであるとする新説 テッサリア大学をはじめとする天文学者チームらは、このダークエネルギーの正体は原子ほどに小さなワームホール、すなわち空間と空間を結ぶ小さなトンネルではないかという大胆な説を提唱している。
それによると、このワームホールは量子効果によって宇宙の真空の中に絶えず生成・破壊されている。
これはブラックホールの事象の地平面近くで粒子が生成されて起きる「ホーキング放射」や、真空中の強力な電場によって電子と陽電子のペアが生成される「シュウィンガー効果」と似ている。
だが、これらの現象と違って、今回のワームホールを数学的に記すには、重力における量子効果を考慮する必要がある。
量子重力理論はまだ未完成の物理理論で、そのために今回の研究でもワームホールがどのくらいの割合で生成されているのか具体的に示すことまではできていない。
だが仮に1秒間に1cm3あたり約100億個のワームホールが生成されるならば、そのエネルギーによって現在観測されている宇宙の膨張をうまく説明することができるのだという。
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photo by iStock現時点では検証不能だが、将来的には検証できる可能性 さらにこの仮説から導かれる結果は、標準宇宙モデルのものよりも観測された宇宙に一致しているという。
現在の標準宇宙モデルでは、ダークエネルギーの密度は時間に左右されないとしている。
一方、今回の仮説は時間が経過するにつれてダークエネルギーは変化するとしており、そのために宇宙の膨張率が変化していることをうまく説明できる。
なお最近の研究では、ダークエネルギーなしで宇宙の膨張加速を説明するものもある。
とは言え、どれほど優れているように思える仮説も、実際に試すことができなければ物理理論としてはあまり意味がない。そして今回の仮説は今のところ検証不能だ。
将来的に宇宙の膨張率やダークエネルギーの性質がもっと正確に把握されれば、それを検証することもできるかもしれない。
それまで研究チームは理論的な分析をさらに研ぎ澄ませていく予定であるとのこと。差し当たりは、ワームホールの生成率を計算するモデルの開発に取り組んでいるそうだ。
この研究は『Physical Review D』(2024年4月5日付)に発表された。
References:Huge cosmological mystery could be solved by wormholes, new study argues | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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