宇宙から電波信号「Wow! シグナル」の謎がついに解明か?水素雲によるものとする新説が登場

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 地球外知的生命探査(SETI)の分野では伝説となっている天文学における未解決案件の一つ、宇宙からの謎の電波信号「Wow! シグナル」の正体はが解明されつつあるようだ。

 プエルトリコ大学アレシボ校の天文学者チームによると、シグナルの正体は、磁気を帯びた中性子星(マグネター)が、水素の雲を通過する際に放った強力な放射源によるエネルギーによる可能性が高いという。

 異星人からメッセージ説もささやかれていて、地球外文明の発見を待つ人にとっては残念な説だが、この仮説に対し、天文学者の間でも意見がわかれているため、まだ少しは希望がもてるのかな?

 それでは詳しく見ていこう。

謎の電波信号、Wow! シグナルとは?

 1977年、オハイオ州立大学の「ビッグイヤー電波望遠鏡」によって、射手座の方向からやってきた謎めいた信号が検出された。

 72秒間にわたり続いたそれは、非常に狭い周波数に集中した「21cm線」と呼ばれるシグナルだった。

 これはほとんど干渉されずに宇宙を伝わることなどから、宇宙の観測によく使われるシグナルだ。

 その便利さは地球外生命にとっても同じなはずで、彼らが通信を試みるなら、この周波数を使うだろうと推測されていた。

 そのため、ついに地球外文明からのシグナルが検出されたのではと、科学者たちは騒然とした。

 印刷されたデータを見て驚いた天文学者ジェリー・R・エーマンが思わず「Wow!」と書き込んだことから、このシグナルは「Wow! シグナル」と呼ばれている。

 Wow! シグナルはシグナルの強さを示す「6EQUJ5」 という別名がある。これは、電波信号に隠されたメッセージと言われていたが、実際には、信号の強度が時間の経過とともにどのように変化したかを表している。

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 以来SETI分野では伝説となったシグナルだが、新たな研究によるなら、どうやら地球外文明からのメッセージではなさそうだ。

Wow! シグナルと非常によく似た電波信号を発見

 2017~2020年にかけて、現在は解体されたアレシボ天文台の電波望遠鏡が集めたデータを利用して、Wow! シグナルの謎の解明を目的とする「Arecibo Wow!」プロジェクトが実施された。

 プエルトリコ大学アレシボ校のアベル・メンデス氏らは、そこにWow! シグナルと非常によく似たシグナルがあることを発見したのだ。

 それはWow! シグナルほど強力ではないが、これとまったく同じ21cm線に近いナローバンド信号だった。

 アレシボ Wow! シグナルは、本家Wow! シグナルといくつもの点で類似しており、このことから両者は同じ原因で発生したのだと推測される。

 強さのほかにも、Arecibo Wow! シグナルが複数の場所から発信されていたという違いもあった。だが、それはすでに知られている天体物理学的現象によって簡単に説明できるという。

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 あらゆる状況を踏まえ、メンデル氏らは、Wow! シグナルの正体は「中性水素原子ガス」の雲が突然明るくなったものだろうと考えている。

 雲の背後にマグネターや軟ガンマ線リピーターといった強力だが一過性の放射源があり、そのエネルギーで水素が照らされた。その結果、21cm線が放出されたのだ。

 滅多に観測されないのは、エネルギーの発生源・水素の雲・望遠鏡とが絶妙なタイミングで正確に並ばねばならないからだ。

 だが一度発生すれば、水素雲が数秒から数分間にわたって明るく輝くと考えられる。

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だが謎は完全に解明されたわけではない

 なお今回、Wow! シグナルを作り出した雲までは特定されたが、その背後のエネルギー源までは特定できなかった。このことは、エネルギー源が雲よりもずっと遠くにあるだろうことを示唆している。

 だが少なくとも雲を検出できることはわかったので、いずれエネルギーの発生源を正確に特定し、次のWow! シグナルを捉えることも可能かもしれないそうだ。

 だがこの仮説に対し、天文学者の間では意見が分かれている。

 マンチェスター大学のマイケル・ギャレット氏は、「仮説を持ち出さなくても、単にマグネターの通常の電波放射で説明できるのではないか」と指摘しており、慎重な姿勢を崩していない。

 確かに、宇宙で増幅されたマイクロ波を放出する現象は理論的には存在するものの、その観測は極めて稀であり、特に水素原子によるものは確認されていない。

 なので宇宙のどこかに知的生命がいるはずと信じる人たちはがっかりしなくてもいい。これが正解かどうかはまだわからないからだ。

 実際に2022年には、地球から800光年離れた太陽に似た星から受信したという説が唱えられた。

 この研究の未査読版は現在『arXiv』(2024年8月16日投稿)で閲覧できる。

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