掃除機の技術が役に立つ!ダイソンが未来型イチゴ栽培を始動
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 掃除機で有名なダイソンが未来に向けて意外な分野に参入、イチゴの栽培に乗り出した。

 そのスケールとハイテクレベルは圧巻で、東京ドームの2倍を超える広大な温室でロボットと協働し122万株ものイチゴの苗を育てている。

 英国リンカンシャーにて、グループ会社ダイソンファーミングが持続可能な大規模農業、“未来型スマートファーム”を展開中。

 そこでは巨大な回転ホイールや、UV照射ロボットやロボットアームが、おいしいイチゴの無農薬栽培をお手伝い。なんと自動収穫までこなすという。

 掃除機メーカーの経験が農業にもたらす変化とは?時代を見越して先を行くダイソン農場の挑戦にせまってみよう。

巨大な温室とホイールでイチゴ栽培

 ダイソンファーミングの巨大な温室は、農業が多くを占める英国リンカンシャーにある。全長760m、26 エーカーもあり、その面積は東京ドームの2.25倍に相当する。

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 この施設内で122万5,000株ものイチゴが栽培されているのだが、その栽培方法は超ハイテクだ。

 室内には従来のような畑はない。代わりに据えられた巨大なホイールが、内部に設置された大量のイチゴの苗をゆっくりと回転させている。

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 その目的は、最適な日光照射。日当たりのムラを無くすための仕組みだ。

国内自給率を上げ、オフシーズンのイチゴも供給

 この温室やホイールの工夫で、ダイソンファーミングは英国のイチゴの栽培シーズンを早春から初秋までと大幅に延長。毎年1,250トンものイチゴを国内向けに安定供給する。

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 これで国内のイチゴ自給率の向上はもちろん、不足しがちなオフシーズンのイチゴもまかなうことで、遠方からの輸送に伴うCO₂排出やエネルギー削減への寄与が見込める。

 なお巨大ホイールはそれぞれ全長24m、全高5m、重量約500 kgもある。ダイソンのエンジニア、ロブ・カイル氏によると「ダイソン史上最大の装置」だそう。

ロボットと自然のハイブリッドで無農薬を実現

 一方、イチゴの無農薬栽培を可能にするのが、UV照射ロボットと虫を”散布”するロボットだ。その虫とは、イチゴの害虫アブラムシの天敵、いわば益虫だ。

 UV照射ロボットが、紫外線で葉の表面のカビを物理的に死滅させ、散布ロボットがアブラムシなどを自然に近い形で制御する。

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 おいしそうに熟した果実は、16本も手があるロボットアームが人間の手摘み同様に、そっとやさしく収穫する。このロボットは月間20万個もの果実を安定して摘み取る。

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1万戸分の電力を生む循環エネルギー

 ダイソンの温室では、農業をさらに効率的に行う工夫がいくつも施されている。

 最高品質のイチゴに最適な生育環境を保てるよう環境監視センサーを導入し、室温もコンピューターシステムが調節・管理する。

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 またこの施設は、温室横に設置された嫌気性消化槽によって稼働している。

 嫌気性消化槽とは、酸素がない環境で生育する嫌気性菌が有機物などを発酵分解させるための密閉曹のこと。

 ここでは穀物残渣の発酵分解過程で発生するガスでタービンを回し、1万戸分相当の電力をまかなっている。

 余った熱は暖房に転用し、冬場でも最適な生育温度を維持。発酵後に残った”消化液”は有機肥料として周辺農地に戻すことで、土壌改良と次期栽培に役立てる。

 さらに屋根上で集めた雨水は貯水槽にためておき、灌水システムへ再利用する徹底ぶり。

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 おまけに敷地内に梱包施設と冷蔵施設まであり、収穫されたイチゴは新鮮なうちに冷却から梱包までされ、可能な限りすみやかに消費者に届けられる。

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未来の農業も製造業と同じ視点で向上へ

 こうした取り組みについて、チームリーダーのアンジェロフ氏はこう語る。

シーズン以外でも高品質なイチゴを大規模かつ持続可能に作るには、技術革新だけじゃなく、イチゴ作りに情熱を注ぐ人たちの専門知識と経験が必要です。私はこのチームにいることを心から誇りに思っています

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 創業者のジェームズ・ダイソン氏は、今後の展望も含めこう述べている。

ものを育てることはものを作ることと同じ。私は製造業者なので、ある意味で農業にも同じ視点で取り組んでいるつもりだ

どうすればより効率的にできるか? どんな技術を導入すれば品質や味が向上し、土地をより有効活用できるか? その視点を持ち続ければさらに投資を進め、農業に貢献できるはずだ

持続可能な食料生産、食料安全保障、そして環境は、国の健康と経済にとってとても重要だ。農業が技術革新を生むチャンスもあれば、その逆もしかり。効率的なハイテク農業は、未来への多くの鍵を握っていて、ダイソンファーミングはその最前線に立つことを目指している

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大規模スマート農業の時代の到来か

 掃除機のダイソンがなぜ?と思ったけれど、このスケールとハイテクぶりには驚かされた。日本でイチゴはお高めだけど、猛暑や不作で足りなくなるとさらに高騰しちゃうから、こうした取り組みで年中買って食べられるようになったらいいな。

 畑を使わない室内農業も進んできてるし、これからはスマート農業がいよいよ世界で広がってゆくのかな。

 たとえばAIやIoT(モノのインターネット)を駆使して気象予測や環境制御、ロボットで作業も自動化。特産物の果物などを多品種・小ロットで生産するやり方もメジャーになってゆきそうだ。

References: Newatlas[https://newatlas.com/environment/farming-dyson-strawberries/] / Dysonfarming[https://dysonfarming.com/strawberries/] / Prtimes[https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000098.000042335.html]

本記事は、海外メディアの記事を参考に、日本の読者に適した形で補足を加えて再編集しています。

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