
北欧の国、エストニアのショッピングセンター内にあるスーパーの中央には、ひときわ目を引く巨大な岩が鎮座している。
まるでアート作品のように存在感を放っているが、これは飾りではなく自然の岩である。
実はこの岩、ショッピングセンターを建設中に発見されたもので、取り除かれることなく、岩を囲むようにスーパーが建てられた。
いったいなぜ撤去できなかったのか。この岩の歴史を知れば、その理由も納得だろう。
エストニアのスーパーに鎮座する巨大な岩
エストニアは、西にはバルト海を挟んでスウェーデン、北にはフィンランドがあり、東にはロシア、南にはラトビアと接している北欧の国だ。
その北部にあるバルト海に面したハーブネーメ(Haabneeme)という町に、ヴィームシ・ショッピングセンター(Viimsi Shopping Centre)[https://www.viimsikaubanduskeskus.ee/en/]がある。
ショッピングセンター内のスーパーの中にドカーンと鎮座しているのがこの巨大な天然の岩だ。
2014年9月にセンターを建設中、地面を掘っていたところにこの巨大な岩が現れたのだ。
氷河が残した自然の遺産「迷子石」だった
その大きさは大きさは周囲約22m、高さ約6~7m(地面に埋まっている部分を含む)、直径にして約7mほど。
施工関係者の間では、当初、爆破して撤去する案も検討されたという。
しかし、この岩は氷河期の自然遺産「迷子岩[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%B7%E5%AD%90%E7%9F%B3]」であることが判明したのだ。
迷子石は、氷河によって削り取られた岩塊が、長い年月を経て、氷河の流れに乗って別の場所に運ばれ、氷河が溶け去った後に取り残された岩のことだ。
もともとその場所には存在しなかった岩石が、まるで「迷子」になったかのように他の地層の中に紛れ込んでいることから、こう呼ばれている。
地元の岩とは違う組成をしていることもしばしばで、地質学的にも貴重な手がかりとなる。
この迷子石がここにたどり着いたのは、少なくとも約1万年前、最後の氷期が終わったころと考えられている。
つまり、1万年以上前に氷河がこの岩をここまで運び、氷が溶けたあとにその場に残されたというわけだ。
エストニアにはこうした迷子石が無数にあり、その多くは国家によって自然保護の対象に指定されている[https://kaitsealad.ee/en/protected-areas/lahemaa-national-park/about-protected-area]。
自然遺産であることがわかれば、岩を壊すことはできない。
地元住民からも「そんな貴重な岩を壊すなんてとんでもない!」という強い反対の声が上がったこともあり、最終的に残すことが決まった。
その結果、岩の位置を避けて設計を変更し、建物が岩を包み込むようなかたちで完成し、2015年にオープンした。
現在岩の上にはアート作品が乗せられている
その後、この岩の上には、アート作品を展示できるスペースが設けられたようだ。
現在は、金属フレームでできたショッピングカートと、人間の像が飾られている。
建物と自然を調和させ、共存させる形で建物が建てられる例はいくつか存在する。
メキシコ、ヌエボ・レオン州にあのセブンイレブンも、自然への配慮から、店内には大きな樹木が店の天井を突き抜けて立っている。
References: Nordecon[https://nordecon.com/en/projekt/viimsi-shopping-centre/] / Kaitsealad[https://kaitsealad.ee/en/protected-areas/lahemaa-national-park/about-protected-area]
本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに独自の視点で情報を再整理・編集しています。