
アリゾナ州・化石林国立公園の奥地にある地層から、これまでに北米で発見された中で最古となる新種の翼竜の化石が見つかった。
翼竜が生きていた時代は、約2億900万年前の三畳紀末で、大量絶滅直前だ。
化石そのものは2011年に発掘されていたが、近年の高精度スキャン技術によって詳細な特徴が判明し、「エオテフラダクティルス・マッキンタイレー(Eotephradactylus mcintireae)」と命名された。
この発見は、絶滅と進化が進む三畳紀の生態系を解き明かすうえで、重要な手がかりとなっている。
この研究論文は『Proceedings of the National Academy of Sciences[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2505513122]』誌(2025年5月15日付)に掲載された。
空飛ぶ爬虫類、翼竜の新種、2億年前のアリゾナに生息
アメリカ南西部のアリゾナ州で、翼竜の新種が科学者によって確認された。
発見されたのは顎の骨の一部で、もともと2011年に「化石の森国立公園(Petrified Forest National Park)」の地層から発掘されていたものだ。
当初は種類の特定ができていなかったが、最新のスキャン技術により骨の細部まで解析が可能となり、従来知られていなかった種であることが判明した。
新種は「エオテフラダクティルス・マッキンタイレー(Eotephradactylus mcintireae)」と命名された。
属名のエオテフラダクティルスの「エオ(Eo)」は「夜明け」、「テフラ(tephra)」は「火山灰」、「ダクティルス(dactylus)」は「指」を意味し、名前全体で「灰の翼を持つ夜明けの女神」を表している。
この属名は、火山灰に覆われた川底の堆積層で見つかったことに由来する。
種小名の「マッキンタイレー」は、長年ボランティアとして活動し、この翼竜の顎の骨を最初に見つけたスザンヌ・マッキンタイアさんの名にちなんだものだ。
翼竜とは、恐竜と同じ時代に生きていたが、恐竜とは系統が異なる爬虫類である。
彼らは史上初めて飛行能力を獲得した脊椎動物であり、現代の鳥類とは全く異なる進化の道をたどった。
骨が中空で軽く、翼の主な構造は前肢の長く伸びた第4指(薬指)に膜を張った形になっていた。
三畳紀の生態系に残された「進化の断面図」
この翼竜の化石が埋もれていたのは、約2億900万年前、三畳紀後期に形成されたとされる、アリゾナ州化石林国立公園(Petrified Forest National Park)の遠隔地に広がる「オウルロック層」という地層だ。
当時この地域は、現在のような乾燥地帯ではなく、パンゲア大陸[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%82%A2%E5%A4%A7%E9%99%B8]の中央部を流れる川の流域だった。
この堆積層には、骨や歯、魚のうろこ、さらに化石化したフン(コプロライト)など、多種多様な生物の痕跡が残されていた。
巨大な両生類、装甲を持つワニのような古代爬虫類、さらにはカエルやカメといった現代にも続く生物の祖先も共存していたとみられている。
研究チームを率いたスミソニアン国立自然史博物館のクリグマン博士は、「この地層は、絶滅種と後に繁栄する種が同時に生息していた進化の“転換点”を記録している」と語る。
単なる骨の化石ではなく、当時の生態系を丸ごと写し取った「スナップショット」のような存在なのだ。
カモメほどの大きさで、硬いうろこの魚を好んで食べていた
発見された顎の骨には、特徴的な歯が並んでいた。
特に先端部分の摩耗が激しいことから、研究者たちはこの翼竜が硬い外殻を持つ獲物を主に食べていたと推測している。候補として挙げられているのは、骨のようなうろこで覆われた原始的な魚類だ。
当時の川の上空を滑空しながら、獲物を狙っていたのだろう。
エオテフラダクティルスの大きさは、翼を広げるとカモメほどの小さな体だったとされる。
世界中の三畳紀の地層にも新たな可能性
今回の発見は、三畳紀の地層からも翼竜の骨を識別できることを示す大きな成果でもある。これまで三畳紀の翼竜の骨は非常に壊れやすく、化石として残ることが稀だった。
クリグマン博士は、「このような発見によって、他の地域にある三畳紀の地層からも新たな翼竜の発見が期待できる」と述べている。
References: Si.edu[https://www.si.edu/newsdesk/releases/smithsonian-led-team-discovers-north-americas-oldest-known-pterosaur] / Bbc.com[https://www.bbc.com/news/articles/cqx2zzn53pqo]
本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに独自の視点で情報を再整理・編集しています。