
スペイン北部アストゥリアス州で開催されたチーズコンテストのオークションで、洞窟で10か月熟成された青カビチーズ「カブラレス」が、約620万円という仰天価格で落札された。
ちょっとした高級車が買える値段だ。
この値段が、これまでに落札されたチーズの値段の最高額となり、2025年7月、ギネス世界記録により「オークションで落札された世界で最も高額なチーズ」として正式に認定された。
洞窟熟成のスペイン伝統のチーズが約620万円で落札
2025年7月、スペイン産のチーズ「カブラレス(Cabrales)」が、「世界で最も高額なチーズ」としてギネス世界記録に認定[https://www.guinnessworldrecords.com/news/2025/7/most-expensive-cheese-sold-at-auction-is-36000-piece-aged-in-a-cave-for-10-months]された。
その落札価格は3万6000ユーロ。現在のレートで換算すると、日本円で約620万円に相当する。
このチーズは、アストゥリアス州のカブラレス地方で毎年開催されているチーズコンテストにおいて「最優秀チーズ(Mejor Queso del Certamen)」に選ばれたのち、オークションに出品された。
実際のオークションは2024年8月25日に行われたもので、約1年後にギネス世界記録として認定された。
カブラレスチーズコンテストは、2024年で第52回を迎えており、15のチーズ工房が出品し、「単品部門」と「バッチ部門」の2カテゴリーで評価が行われた。
洞窟内で10か月熟成、老舗工房が手がけた高級チーズ
この高額チーズを製造したのは、カブラレス地方のティエルベ村にある老舗チーズ工房「アンヘル・ディアス・エレロ(Ángel Díaz Herrero)」である。
標高1500m地点にあるロス・マソス洞窟で、自然の湿度と温度に保たれた環境下で10か月間熟成された。
原料には牛乳が使用され、重さはおよそ2.3kg。青カビが内部にびっしりと広がるこのチーズは、塩味が強く、香りも非常に濃厚で、専門の審査員から高評価を受けた。
工房は30年以上の歴史を持ち、現在は創業者アンヘル・ディアス・エレロ氏の妻であるエンカルニ・バダ氏が運営を引き継いでいる。年間の生産量はおよそ1万kgにのぼる。
落札したのはレストランオーナー
この歴史的なチーズのオークションには、スペイン国内の飲食店9店が参加した。
開始価格は3000ユーロ(51万6000円)で、合計40回の入札が行われ、最終的に「エル・リャガル・デ・コジョート(El Llagar de Colloto)」というレストランのオーナー、イバン・スアレス氏が最高額で落札した。
スアレス氏による落札はこれで5年連続。
彼は過去にも高額チーズの落札で注目を集めており、「この土地の文化と味を広めたい」との想いから、毎年競りに参加しているという。
カブラレスチーズとは?
カブラレスチーズは、スペイン北部アストゥリアス州のカブラレス村周辺で生産される青カビタイプのナチュラルチーズである。
原産地名称保護制度(DOP)の対象で、決められた地域・製法でのみ生産が許可されている。
主に牛乳が使われるが、工房によっては羊乳や山羊乳をブレンドする場合もある。熟成は標高1500メートルの洞窟内で数か月行われ、青カビ(ペニシリウム属)が内部に自然繁殖する。
味の特徴は、強い塩味とシャープな刺激、そして深いコクと香りである。
内部には緑色がかった青カビが全体に広がっており、外皮はアルミホイルで包まれて出荷されるのが伝統的なスタイルだ。
スライスして赤ワインのつまみにするのが定番であるが、バゲットやクラッカーにのせたり、はちみつやクルミと組み合わせたり、ソースに溶かして肉料理やパスタに使う。また、茹でたジャガイモと合わせてペースト状にし、肉料理の付け合わせにも使用されている。
日本ではまだ馴染みが薄いが、ゴルゴンゾーラチーズが好きな人には特におすすめできる味わいである。
青カビチーズ初心者には少々クセが強く感じられるかもしれないが、一度ハマると忘れられない奥深さがある。