
「危険な異星人に見つからないよう、地球は静かにしているべき」そう考えていたとしても、残念ながらもう手遅れだ。
イギリスの研究チームが発表した最新のシミュレーションによれば、空港や軍事施設のレーダーから発せられる強力な電波は、長年にわたり宇宙に向けて放たれ続けており、地球の存在を広く知らせているという。
この信号は明らかに人工的なもので、200光年以内にある知的文明なら、地球の場所を把握できる可能性が高い。
さらに、アレシボ天文台のような超高感度の望遠鏡を使えば、理論上は6万光年先からでも地球の電波を検出できるとされている。
つまり私たちは、すでに宇宙空間で“丸見え”の状態にあり、その状況は75年前から続いているのだ。
この研究は2025年7月7日から11日かけて開催された『Royal Astronomical Society’s National Astronomy Meeting 2025[https://conference.astro.dur.ac.uk/event/7/contributions/245/]』で発表された。
宇宙へ向けてメッセージを送信するべきか?
地球外知的生命探査(SETI)[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%90%83%E5%A4%96%E7%9F%A5%E7%9A%84%E7%94%9F%E5%91%BD%E4%BD%93%E6%8E%A2%E6%9F%BB]の世界では、とある繰り返し交わされてきた議論がある。それは「地球外の知的文明へ向けてメッセージを送るべきか否か?」というものだ。
この宇宙のどこかに電波を受信できるくらい高度な文明が存在するのなら、地球からのメッセージを受信して、いつの日か、私たちに会いにきてくれるかもしれない。
だが問題は、彼らが友好的な文明であるという保証がまったくないことだ。
可能性としては、(我々人間のように)きわめて敵対的かつ侵略的な種族であるケースも十分にあり得る。
仮にそんな種族が地球にやってきたとしたら、今の我々の科学技術レベルでは到底太刀打ちできないだろう。
ならば素性のわからぬ相手に向けてメッセージを送るなどという、きわめてリスキーな行為は慎むのが正解というものだ。
だがじつのところ、そんな心配をしたところで、もう手遅れかもしれない。なぜなら、状況は75年前にとっくに地球は丸見え状態になっていたからだ。
6万光年先からでも地球は丸見え
今回、英国マンチェスター大学のラミロ・サイデ氏が率いた研究チームは、電波が飛び交う地球が宇宙からどのように見えるのか分析している。
具体的には、ロンドン・ヒースロー空港やニューヨーク・JFK国際空港など、主要な空港に設置された民間レーダー、ならびに軍事用の高出力レーダーをモデル化し、バーナード星[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%89%E6%98%9F]やけんびきょう座AU星[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%91%E3%82%93%E3%81%B3%E3%81%8D%E3%82%87%E3%81%86%E5%BA%A7AU%E6%98%9F]など、地球から比較的近い6つの恒星から我々がどのように見えるのかシミュレーションした。
その結果、高出力の軍用レーダーについては、大声で叫んでいるのも同然の状態で、しかもそれが1950年代の冷戦初期から続いていることが明らかになったのだ。
民間レーダーの合計出力は2×10の16乗ワット、軍用のより集中した指向性レーダーは1×10の14乗ワットである。
これらは、はっきり人工的なものであると分かるくらい強力なものだ。
たとえば、可動式の単一開口電波望遠鏡としては世界最大であるグリーンバンク望遠鏡級の観測機器でなら、200光年先からでもよく目立つし、さらに高性能なアレシボ望遠鏡級なら6万光年先からも見えてしまう。
ちなみに太陽系に一番近い恒星はプロキシマ・ケンタウリで、ほんの4.2光年しか離れていない。
我々は冷戦期から宇宙に向かって叫び続けている
地球がこのように自らを喧伝しはじめたのは、最近のことではない。
少なくとも20世紀初頭まで地球は静かだった。初期の無線機器は出力が弱く、よほどのことがなければ、その電波が地球の外に漏れるようなことはなかった。
だが1930年代後半、VHF(超短波)テレビ放送やマイクロ波レーダーが登場。さらに冷戦時代には、北極を通過するソ連の爆撃機を警戒するべく「DEWライン」が設置された。
こうして地球はまるで宇宙の灯台のようにきらびやかな存在となった。
「観測位置によっては、軍事レーダー信号は最大で100倍も強く観測されることがあります」と、サイデ氏は語る。
「レーダー信号は、航空システムを持つ高度技術社会であればどの惑星でも意図せず発してしまうものです。今回の研究は、これが知的生命体の普遍的なサインとして機能し得ることを示唆しています」
つまり、「メッセージを送るべきか」という議論は手遅れなのだ。我々はとっくに宇宙へ向けてメッセージを発信していたのだから。
見つかってしまったら、どうなるのか
最大の問題は、これらの信号が受信されたとき、それをどう解釈されるかだ。
友好的な宇宙文明が「地球に連絡を取ろう」と考えるかもしれない。一方で、支配的または敵対的な種族が「発見と同時に排除するべき対象」とみなす可能性もゼロではない。
現時点で、地球外生命の可能性を示唆するシグナルは検出されても、その存在を裏付ける決定的証拠は見つかっていない。
どのような未来が待っているのかはまだわからない。だが、少なくとも「見つかっていない」という前提での楽観論は、もう成り立たないのかもしれない。
References: Ras.ac.uk[https://www.ras.ac.uk/news-and-press/research-highlights/how-airports-heathrow-and-gatwick-could-help-aliens-spot-earth]
本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。