
インド北部ヒマーチャル・プラデーシュ州の山間部にある小さな村で、2025年6月30日深夜、モンスーンの影響による土砂崩れが発生した。
その直前、異変を真っ先に察知したのは、1匹の小さな犬だった。
犬は村中を駆け回り、激しく吠え続けた。その警告によって、20世帯、67人の村人全員が無事に避難することができた。
多くの家屋は土砂にのまれて崩壊したが、犬の咄嗟の行動が、村人たちの命を守ったのである。
モンスーンが引き起こした自然災害
インド北部、ヒマーチャル・プラデーシュ州では、2025年6月20日から続くモンスーンによる激しい雨が、各地で自然災害を引き起こしている。
モンスーンとは、季節によって風向きが変わる気象現象のことで、特にインドでは6月から9月にかけて大量の雨をもたらす。
中でも山間部にあるマンディ地区は、地すべりや鉄砲水、ゲリラ豪雨といった災害が連続し、甚大な被害を受けた。
ヒマーチャル・プラデーシュ州災害管理局は、モンスーン入りからわずか10日余りで、州全体ではすでに78人が死亡、そのうち50人が雨に関連する災害によって命を落としており、残る28人は道路事故などによるものと報告した。
土砂崩れ発生直前、村人全員の命を救った犬の行動
マンディ県ダランプル地域・シヤティ村でも6月30日深夜、土砂崩れの危険が迫っていた。
その危険を真っ先に察知したのは、村の住民である、ラリット・クマールさんが飼っていた生後5か月の子犬、「ロッキー」だ。
ロッキーが深夜0時半過ぎに突然激しく吠え始めたため、ラリットさんが起きたところ、家の壁にはひびが入り、水が流れ込んでいた。
ラリットさんはすぐにロッキーを抱きかかえ、2階から階下へ降り、家族を起こした。
そしてそのまま、ロッキーを連れて村を駆け回りながら、近所の住民たちの家を一軒ずつ叩き起こして回った。
吠え続けるロッキーの声とともに、ラリットさんの呼びかけによって22世帯、67人が集まり、全員が近くの高台へと避難した。
その直後、土砂崩れが村を襲い、17軒のうち12軒の家屋が泥と瓦礫の中に埋もれた。
ラリットさんは後に「ロッキーがいなかったら、私たちは眠ったまま逃げ遅れていたかもしれない」と語っている。
寺院での避難生活と支援の手
避難した住民たちは、隣村トリヤンバラにあるナイナ・デヴィ寺院に身を寄せており、災害発生から1週間以上が経過した現在も、仮設の避難生活が続いている。
なかには、突然の災害によるストレスから高血圧やうつ状態に悩む人もおり、生活再建には時間がかかる見込みだ。
一方で、周辺の村々からは支援の手が差し伸べられており、インド政府も被災世帯に対して1万ルピー(約1万9,000円)の緊急支援金を提供している。
州全体での被害と今後の警戒
ヒマーチャル・プラデーシュ州では、これまでに23件の鉄砲水、19件のクラウドバースト、16件の地すべりが発生。特にマンディ地区では、156本の道路が通行不能となっており、州全体では280本以上の道路が影響を受けている。
7月15日にはインド気象庁(IMD)が、同州10地区に対して新たな鉄砲水警報を発令しており、引き続き警戒が必要な状況だ。
災害時における動物の本能的直感は本当に鋭い。動物と人間が強い絆で結ばれタックを組むことで、多くの命を救うことができたという事実は、多くの人の心に残るだろう。
References: Dog's Bark Saves 67 Lives As Monsoon Wipes Out Village In Himachal's Mandi[https://www.ndtv.com/india-news/dogs-bark-saves-67-lives-as-monsoon-wipes-out-village-in-himachals-mandi-8840831]
本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者向けにわかりやすく再構成し、独自の視点で編集したものです。