
猫ならあり得る。アメリカならアライグマもあり得る。
なんとワラビーの子だ!
実はこの車、運転中にワラビーと接触したようで、それによりグリルの中に入り込んでしまったのだが、運転手は全く気が付かず運転していたという。
車を止めた駐車場で通行人が見つけ、野生動物保護センターにすぐに連絡したことで、ワラビーは無事に車から取り出された。
あれ?車のグリルで何かが動いてるぞ?
オーストラリアのショッピングセンターの駐車場を歩いていた男性が、駐車中の車のフロントグリルに何かが挟まっているのを発見した。
なんだろうと近づいてみると、それが動物であることに気が付いた。
男性はすぐに野生動物保護団体「WIRES[https://www.wires.org.au/]」に連絡し、タープ(アウトドアで日差しや雨を防ぐために使用する大きな布)と傘を使って直射日光から小さな命を守ろうと試みた。
挟まっていたのはなんとワラビー!
ほどなくしてWIRESのレスキューチームが現場に到着した。ちょうどその頃、車の持ち主である女性が戻ってきた。
フロントグリルの中にいたのはなんとワラビーだ。
彼女はそのことを知らされるとびっくりした。実は彼女自身、ワラビーにぶつかったことすらまったく気づいていなかったという。
ワラビー、無傷で救出される
WIRESの広報担当、ジョン・グラント氏は、「おそらくワラビーは道路を横断中に車の下に入り込み、そのまま跳ね上げられてグリルの裏に入り込んだのでしょう」と語った。
女性は近隣から車を運転してきただけで、事故発生から発見までは45分以内だったとみられている。
WIRESのボランティア、マーク・バジャー氏はワラビーをすぐに救い出すのは危険だと判断した。
というのも、ワラビーは強いストレスに弱く、不用意な対応が命の危険につながる可能性があるためだ。
そこで、同氏は野生動物専門の病院「バイロン・ベイ野生動物病院」に連絡を取り、獣医のブリー・タルボット氏が現場に駆けつけ、鎮静処置を行った。
ワラビーが無事に眠りについたのを確認してから、救助チームは慎重にグリルの裏から動物を取り出すことに成功。タルボット獣医師が体を確認すると、幸いなことに体に外傷や骨折は一切なく、健康な状態だった。
アーニーと名付けられたワラビー、元気に野生へ帰る
このワラビーには「アーニー(Arnie)」という名前がつけられた。あのアクション俳優アーノルド・シュワルツェネッガーにちなんで名付けられたのだという。
怪我を負っていてもおかしくないような状況を、無傷で見事に乗り越えた強さを称えての命名だった。
アーニーはその後、別のWIRESボランティアに預けられ、わずか1日で食欲も戻り、元気な様子を見せた。
数週間の経過観察の後、特に異常が見られなかったため、無事に野生に返されることとなった。
「ほとんどの救助と同じように、アーニーも一度も振り返ることなく森に向かって跳ねていきました。それが私たち野生動物ボランティアにとっての最高の報酬です」とグラント氏は語っている。
ワラビーとは?カンガルーとどう違うの?
ワラビー(Wallaby)は、カンガルー科に属する有袋類で、主にオーストラリアやタスマニアなどに生息している。
草原や森林、湿地帯などさまざまな環境に適応しており、種類によっては都市部近郊にも現れる。
大きさは種類によって異なるが、一般的に体長は40~90cm程度。
見た目がよく似たカンガルーとは親戚関係にあり、どちらもカンガルー科に属する。
ワラビーの方が小柄で森林や岩場に適応しており、短い足や尾で小回りが利く。
一方、体が大きいカンガルーは開けた草原に暮らし、長い脚で広く跳ねるなど、体の構造や暮らす環境も異なる。
行動パターンにも差があり、ワラビーは単独か少数で生活するのが一般的で、縄張り意識が強い。
一方のカンガルーは「モブ」と呼ばれる群れをつくり、20頭以上の集団で移動や採食を行うことがあるなど、より社会的な生活を送っている。
また、毛の色や模様にも違いがある。
ワラビーは森林などに溶け込むため、茶色やグレーを基調とした保護色を持ち、種類によっては背中に縞模様が見られることもある。カンガルーは比較的単一色で、赤茶色や灰色の体色をしていることが多い。
今回救出されたワラビーは、体の大きさなどから見て若い個体だったと考えられる。
ワラビーの子どもは生まれてからしばらく母親の袋(育児嚢)で育ち、その後もある程度の大きさになるまで親のそばで生活する。
まだ幼い個体が独りで道路に出てしまうことは珍しくなく、交通事故のリスクも高いそうだ。
にしてもやはり、ワラビーが生息するオーストラリアならではのアクシデントと言えるだろう。