
日本、アメリカ、イタリアの強力な重力波検出器によって、これまででもっとも質量の大きいブラックホール同士の合体の痕跡が観測された。
日本の重力波望遠鏡「KAGRA」、アメリカのレーザー干渉計重力波天文台「LIGO」、イタリアの重力波検出機「Virgo」が観測した重力波が示していたのは、それによって太陽の225倍の質量を持つ1つの巨大ブラックホールが誕生したことだ。
巨大というよりもはやモンスターブラックホールだ。
歴史を塗り替える重力波の観測に成功
アメリカのレーザー干渉計重力波天文台「LIGO(ライゴ)[https://ja.wikipedia.org/wiki/LIGO]」は、アインシュタインが予言した時空の波紋「重力波」を検出するためにワシントン州ハンフォードとルイジアナ州リビングストンに建設された大規模な施設だ。
史上初めて重力波の検出に成功したのは2015年のこと。それ以来、イタリアの重力波検出機「Virgo[https://ja.wikipedia.org/wiki/Virgo]」、日本の重力波望遠鏡「KAGRA[https://gwcenter.icrr.u-tokyo.ac.jp/]」と連携し、300を超える重力波を観測してきた。
この時空の波紋は、ブラックホール同士の合体など、宇宙で起きた大規模な現象によって発生すると考えられている。
中でも2021年に検出された、2つのブラックホールの合体によって発生した重力波信号「GW190521」により、太陽の140倍の質量を持つブラックホールが誕生したと推定されるている。
今回の観測はLIGOにとって四度目となるもので、じつに200ものブラックホール合体の痕跡が検出されている。
だがひときわ飛び抜けていたのが、「GW231123」と呼ばれる重力波だ。
2023年11月23日に検出された重力波は、太陽質量のそれぞれ103倍と137倍のブラックホールが合体して発生したもので、その結果誕生したブラックホールの質量は太陽の225倍、それまでの記録を大きく凌駕する。
常識をくつがえす高速スピンと質量
この合体を引き起こしたブラックホールは、ただ重たいというだけでなく、きわめて高速で回転していることから、重力波検出技術と理論モデルの双方の限界を試すものでもある。
これらのブラックホールは、アインシュタインの一般相対性理論で許される自転速度の限界近くまで回転しているようです
信号の解析と解釈はきわめて難しく、理論モデルを発展させるうえで格好の研究対象となります(英国ポーツマス大学 チャーリー・ホイ氏)
それゆえに予想外の事実が浮かび上がってくる可能性もある。
GW231123を発生させたのはブラックホールの合体という説がもっとも有力だが、もっと複雑な現象であったとしてもおかしくはない。
このような大質量ブラックホールは、標準的な恒星の進化モデルでは説明がつきません
そのため、この2つのブラックホールは、それより以前に小さなブラックホール同士が合体したことで形成された可能性もあります(英国カーディフ大学のマーク・ハンナム氏)
GW231123からはどんな宇宙の真実が明らかになるのか? その本当の意味が理解されるまでには数年がかかると見込まれている。
今回の観測結果は、英国グラスゴーで2025年7月14日~18日に開催される『24th International Conference on General Relativity and Gravitation』および『16th Edoardo Amaldi Conference on Gravitational Waves』の合同イベントで発表される。
References: Caltech[https://www.caltech.edu/about/news/ligo-detects-most-massive-black-hole-merger-to-date]
本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。