猫は家にいるけど?「お宅の猫を見つけた」との電話が頻繁にかかってくる理由
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 カナダのブリティッシュコロンビア州に住むナターシャ・ラボワさんとパートナーのジョナサン・マッカーラックさんのもとに、ある日突然、見知らぬ人々からひっきりなしに電話がかかってくるようになった。

 用件は「あなたの猫を見つけた」というもの。

2人は確かに猫を飼っているものの、愛猫はちゃんと家にいるし、迷子になったこともない。

 いったい何が起きているのか?実はこの奇妙な出来事は、あるファッションブランドが関わっていたことが後に明らかとなる。

「猫を見つけた」という電話が頻繁にかかってくるように

 2人に謎の電話がかかってくるようになったのは、2024年夏の頃からだった。多い日には1日に20件以上。

 電話の内容は「あなたの猫を見つけた」というものがほとんどだった。だが、彼らの愛猫「マウザー」はずっと2人と一緒にいて、迷子になどなっていない。

 さらに「猫を返してほしければ金を払え」と要求する電話もあり、「猫はエアコンの効いた家の中にちゃんといるんだけど?」と、困惑するしかなかったという。

こちらの話を聞かずに「お前の猫はこっちにいる。金を払え」って言ってくるんです。

私は「猫なんていないし、お金も払いません」って答えるんですけど、たいていそのまま電話を切られます

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 さらに留守番電話には、「うちには猫を食べるヘビがいる」といった不気味なメッセージも残されていたという。

 電話は主にアメリカからかかってきたが、カナダからのものも数件あったそうだ。2人は電話をかけてきた人に、どうやって電話番号を知ったか尋ねてみた。

 するとようやくそのからくりが明らかとなる。

 迷子の猫を探すポスターを模したTシャツに、彼らの自宅の番号が記載されていたのだ。

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迷子猫Tシャツに自宅の電話番号がプリントされていた

 そのTシャツは、「ウィズダム・ニューヨーク[https://wisdumbny.com/]」というブランドが、2024年6月に販売を開始したものだった。

 Tシャツの前面には「猫を探しています(MISSING CAT)」という文字と共に、「ターボ(Torbo)」という猫の名前と写真、電話番号が記載されていた。

 その番号こそ、ナターシャさんたちの自宅の番号だったのだ。

 2人はTシャツに自分たちの番号が使われた経緯について、ブランド側に問い合わせたが、誠意ある返答は得られていないという。

 該当するTシャツは現在、同社のオンラインストアから削除されているというが、ナターシャさんは不満が残る。いまだに電話がかかってくるからだ。

この番号は20年間使ってきたんです。番号は変えたくないので、これからも電話に出ないようにするつもりです。

こうなったらもう、私たち2人とも、Tシャツを1枚くらいもらう資格があると思いますよ

 ジョナサンさんも、こう付け加える。

せめて謝罪の言葉くらいあってもよかったんじゃないでしょうかね

 下はウィズダム・ニューヨークのInstagramに掲載されている「迷子の猫探しのポスター」をデザインしたTシャツと、大量のポスター。迷子猫は1匹だけではなく、ポスターも複数の種類があるようだ。

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「ただの数字」では済まされない現実

 アメリカやカナダでは、映画やテレビドラマなどで使用される電話番号には、実在しない「555」で始まる特定の番号が用いられることになっている。

 これは間違って、あるいは意図的にその番号にかける人が現れて、実在の個人や企業に迷惑がかからないよう配慮しているためである。

 だが今回、ウィズダム・ニューヨークはそういった配慮を一切しなかったようなのだ。その結果、ナターシャさんたちが迷惑をこうむる事態になってしまった。

 電話をかけて来た人の中には、まったくの善意で「ターボ」に似た猫を見かけたから、という人もいたかもしれないが、トラブルは発生してしまう。

 例えば2009年にアメリカのラッパーが発表した曲で使われた12桁の数字が、実はイギリスで実在している電話番号で、迷惑電話が殺到したケースがあった。

 さらに2021年には、ネトフリのドラマ「イカゲーム」で実際に存在する電話番号が使われてしまい、いたずら電話が殺到[https://www.afpbb.com/articles/-/3369952]するという事件が起こっている。

 今回はTシャツを実際に制作する前に、ブランド側がちょっとだけ確認すれば済んだ問題だと思うのだが、なぜその手間を怠ったのか。そしてなぜ謝罪をせず、再発を防ぐ姿勢を見せないのだろうか。

 インターネットの普及で、国境を越えてSNSや配信サービスが視聴されるようになり、「架空」のはずの情報が、現実の誰かの生活を脅かす可能性が大きくなった。

 デザインや表現の自由がある一方で、それが現実に影響を与える可能性もあるという視点は、これから時代のものづくりにおいて、忘れてはならない要素だと言えるだろう。

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References: Woman flooded with calls about nonexistent cat due to a T-shirt[https://www.upi.com/Odd_News/2025/07/18/canada-T-shirt-missing-cat-phone-number/6941752860361/] / B.C. couple dodging dozens of calls about their missing cat — but their cat isn't missing[https://www.cbc.ca/news/canada/british-columbia/b-c-couple-missing-cat-shirt-1.7585002]

本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。

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