
ウミウシ好きな仲間に朗報だ。ウミウシはみんな個性的でユニークだが、インドネシア・北スラウェシ沖の海でこれまたユニークな新種が2種発見され、正式に記載された。
これらの発見は、専門の研究者だけでなく、市民による観察や記録が大きく役立った成果であり、海洋生物多様性への理解を深める重要な一歩となった。
ではその2種を見ていこう。
市民と研究者の協力で明らかになった2種の新ウミウシ
インドネシア・北スラウェシ沖で発見された2種のウミウシが、ドイツ、インドネシア、イギリスの女性研究者5名によって、2025年7月14日付で動物分類学専門誌『ZooKeys[https://zookeys.pensoft.net/article/153046/]』に新種として正式に記載された。
どちらもイボウミウシ科(Phyllidiidae)[https://en.wikipedia.org/wiki/Phyllidiidae]に属するフィリディア属(Phyllidia)[https://en.wikipedia.org/wiki/Phyllidia]の一種である。
イボウミウシ科のウミウシは、インド・太平洋地域に広く分布し、スポンジ(海綿類)を食べてその毒素を体内に取り込み、捕食者から身を守る特性を持つ。
色鮮やかで独特の姿は、海洋研究者やダイバーたちに人気が高い。
今回の記載にあたっては、ウミウシ好きな一般市民によって投稿された写真や観察記録も重要な手がかりとなっており、研究者と市民が協力して種の同定が行われた。
北スラウェシ近海ではこれまでに約350種のウミウシが記録されており、そのうち100種ほどは未記載の新種と考えられている。
今回の2種の記載は、こうした隠れた生物多様性の一端を明らかにする重要な成果となった。
卵のような色合いが特徴の「フィリディア・オヴァータ」
そのうちの1種、「フィリディア・オヴァータ(Phyllidia ovata)」は、名前のとおり丸みを帯びた体の形状と模様が卵を思わせる独特の姿をしている。
最大で約5cmに達する中型の種で、インドネシア、日本、台湾、フィリピン、オーストラリアなどで、過去23年にわたりダイバーによって撮影されていた。
しかし、これまでは未記載の種として扱われており、今回ようやく北スラウェシで採集された標本を基に新種として正式に記録された。
小さなトゲトゲの「フィリディア・フォンチェイ」
もう一種の「フィリディア・フォンチェイ(Phyllidia fontjei)」は、インドネシアの生物学者、故フォンチェ・カリギス博士(Dr. Fontje Kaligis)にちなんで名付けられた。
博士は、北スラウェシ地域の生物多様性研究を国際的に推進した人物であり、その功績を称える命名である。
このウミウシは非常に小さく、最大でも約16mm程度。
過去15年間にインドネシアやマレーシアで撮影記録があり、特にインド洋のアンダマン海では比較的多く見られる。
記載は、採集された1体の基準標本(ホロタイプ)を用い、詳細な組織学的分析をもとに行われた。
今回の発見には、科学者だけでなく、市民科学者の貢献が大きく関わっている。
iNaturalist[https://www.inaturalist.org/]のような市民科学プラットフォームSNS、NudiPixel[https://nudipixel.net/]や現在は閉鎖されたSea Slug Forum[http://www.seaslugforum.net/]といったウミウシ専門コミュニティに投稿された写真や観察情報が、研究者たちにとって重要な手がかりとなった。
イギリス・ウェールズのスウォンジー大学のナタリー・ヨノウ博士は、「こうしたオンラインの記録は、特徴的な種の同定に非常に役立っており、分類学の現場で20年以上活用されてきた」と述べている。
References: Zookeys.pensoft.net[https://zookeys.pensoft.net/article/153046/] / Scientists Discover Unusual New Species of Sea Slug That Looks Like an Egg[https://scitechdaily.com/scientists-discover-unusual-new-species-of-sea-slug-that-looks-like-an-egg/]
本記事は、海外の記事を参考にし、日本の読者向けに独自の考察を加えて再構成しています。